恒温終端による受信電力校正
システム雑音温度を計測したりするときにノイズソースなどを用いる。ノイズソースにはENR(Excess Noise Ratio)として標準温度に対してどれくらい高いかをdBで示している。
ノイズが欲しいだけなら熱雑音を使えばいい。物理温度T (K)で帯域B (Hz) の熱雑音の電力P (W) はP = kTBだ。終端を温めるだけということでとても簡易に温度の校正が可能になるはずだ。
ここでわれわれも90℃に温めた校正信号源を作ることにした。
課題は
・同軸ケーブルでつなぐとその反射などがどう影響する?
・どう温めて&安定化させるか?
などがある。
ここでは前者を記述してみる。
信号モデル
このような校正信号源の論文は存在する。一つが
CALIBRATION OF THE EDGES HIGH-BAND RECEIVER TO OBSERVE THE GLOBAL 21 cm SIGNATURE FROM THE EPOCH OF REIONIZATION - IOPscience
だ。この論文ではだいたい100℃に温めた終端を同軸ケーブルで接続している。
ただ気になるポイントが、$${T_H}$$雑音信号温度、$${T_{Ht}}$$を終端の物理温度、$${T_{cab}}$$をケーブルの物理温度としたとき
$${T_H = GT_{Ht} + (1 - G)T_{cab} }$$
としていて、$$G$$はavailable power Gain(Pozar 2004)としている。Pozar 2004は探せば見つかる。
Microwave Engineering : David M Pozar : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archive
2ポートのデバイスを挟むゲインにはいくつか種類があり、Pozar2004にもあるが分かりやすいのが以下のサイトだ。
Understanding Two Port Amplifier Power Gains
Sパラメータと、反射係数が分かれてるのがちょっと違和感があるが、50Ωを挟むことで、VNAなどの計測との親和性が取れるのだろう。
懸念
このGainは、ソースの信号がどのくらい負荷で消費されるかを、ソースが最大で出せる電力で割っている。ソースと負荷が複素共役になった時にソースは最大電力を消費させられる。
温度Tの抵抗R(Ω)の物体が負荷R(Ω)で消費させられる電力は、ソースの起電力がソースの抵抗R(Ω)の出力インピーダンスと整合させられて
$${kTB}$$
と消費電力が発生する。
でも途中の抵抗やリアクタンスはどうなんだろう?
というのを考察してみる。事前に告白しておくと謎が残るだけの考察が続く。