おじさんは若い女の子と本気で結婚したいのかを本気で考えても、分からない。

知り合いに最近婚活を始め、婚活パーティに毎週の様に行っているKさんという女性がいる。

Kさんが婚活を始めたのは、30歳になったのがきっかけだった(と私は聞いた)。Kさんは田舎に近い地域の公務員だ。仕事は安定している。結婚しなくても仕事を続けていれば、生活に困りそうにはない。両親は健在で、両親から結婚を突かれているわけでもないらしい。

そうした状況で、本人は「結婚したい」と言いつつも、私の感覚だと「(とても良い相手がいて、付き合ってみて気が合えば、ゆくゆくは)結婚したい」という印象をKさんの婚活エピソードからは感じる。恋愛に関する話は、プライベートなトークの鉄板ネタで、赤裸々に語り相手との距離をグッと近づけるのにも使えれば、失敗談として面白く話すこともできる。Kさんはこれまで、話しにくい恋愛しかしてこなかった。本人は気軽に話すのだが、聞く人によってドン引きする、まぁそんな感じの恋愛歴だ。

Kさんが、一般的にモテるかは分からない。彼女の恋愛ネタには、極端にモテたというエピソードはない。だからこそなのか、婚活パーティでは、はっちゃけている。標準語でいえば、エンジョイしているプラスアルファ、だ。彼女が主に行っている婚活パーティはクローズドで、会場に十何名ずつの男女がいて、男性が女性の座っている席の前を、5分なりの短時間で渡り歩いていく。その後に追加のトークの時間があったりとバリエーションはあるが、最後には希望の相手を何人か運営に提出して、男女で希望が噛み合えば、パーティ後にプチデートしたりもする。

婚活パーティに行き始めた最初の数回は、20代〜30代のパーティに行っていた。マッチングしたが、連絡先を交換して、初めての食事で自然消滅したらしい。そういう感じを繰り返して、婚活パーティにハマるなり疲れるなりしていくのかと思ううちに、Kさんに春が来た。沈黙の春かもしれない。

婚活パーティに一度参加登録すると、自分が参加するパーティの後も、いろんなパーティのお誘いメールが来るらしい。Kさんが案内メールを見ていると、30代〜50代が参加可能なパーティの案内があった。より若い年齢層のパーティに比べると、女性の参加費は同額ぐらいだったが、男性の方は2倍近い料金に設定されていた。会場自体は同じだが、軽食が出て、いつもより多めのトーク時間が設定されていた。

男性が多い大学のオタク系サークルの中に、数少ない女性部員がいてモテまくる事を「オタサーの姫」と呼ぶようだ。なぞらえて言えば、Kさんは「フィフサーの姫」になった。Kさんの見立てによると、参加していた男性はほとんどが50歳前後で、女性参加者は30代後半以上だった。Kさん曰く、参加男性のすべてがKさんとマッチングを希望していた(おそらく)。会場から出た所でも改めて、男性の参加者数人から声を掛けられた。Kさんに話し掛けるのに、行列ができた(らしい)。

パーティの後に話し掛けるのはありなのかと聞いたが、男性参加者より女性参加者は退場が早いので、気になる人はさっさと帰っているし、明らかに迷惑がっていなければ黙認らしい。意中の男性がいたから待っていたのかと尋ねると、Kさんは誰ともマッチング希望をしておらず、誰か声を掛けてくるかなと思いつつスマホを見ていたら、声を掛けられたそうだ。

と、ここまではKさんの婚活パーティエピソードを私が聞き、モテモテだね、ぐらいの感想だったのだが、面倒な展開になる。
Kさんは疑問に思ったそうだ。「このおじさんたちは、娘ぐらい歳の離れている私を口説いて、本気で結婚したいの?」と。その質問が、おじさん亜種の私に回ってきた。婚活パーティで知り合ったおじさんらに聞けばと答えたら、「婚活パーティのおじさんたちが『結婚を考えていない』って答えるわけないですよね」と返された。私は「子どもを作ろうと考えたら、若い女性を選びたくなるんじゃない?」と結論付けたが、Kさんは納得していない様子だった。

Kさんの反応は、もっともだと思う。子どもを作ろうと考えていないおじさんだって、若い女性を選びたくなる。Kさんを口説いたおじさんたちの中にもおそらくバツ1、バツ2の人がいて、子どもはもう成人しています、という人もいただろう。おじさんが若い女性と付き合う、不倫する、愛人関係になる、なんてお話は巷にあふれている。おじさんが若くない女性と付き合う、不倫する、愛人関係になる、なんてお話も巷にあふれているのかもしれないが。

女性から見た男性を考えてみる。Kさんが男性に「結婚するなら、お金持ちの方がいい」と期待するとして、疑問には感じないだろう。「20歳ぐらいの男の子がいい」と言ったとしたら、お金の場合に比べたら、肯定はしにくい。「いいと思うけど」ぐらいな気がする。お金は、夫婦のトータルでは、あった方がいいだろう。では、夫婦のトータルとして、若さはあった方がいいのか。

どちらかが極端に若い、年齢差のある夫婦はいる。多くの場合、女性の方が若い。おじさん芸能人が20代前半の女性と結婚するケースもたまに聞くし、10歳ぐらいの差はざらだ。
私はそうしたカップルを見ると、本音では「財産目当てなんじゃない」と思う事がある。そういうケースもあるだろうし、別にあっていい。若さにはお金がなく、お金がある時には若くない。若くてお金があっても、お金はあり続けるかもしれないが、若さは失われる。

Kさんの質問に戻る。おじさんたちが本気で結婚を考えているかと言えば、婚活パーティに来ているのだから、野生のおじさんに比べたら、考えているだろう。では「娘ぐらいの若い女性との結婚を本気で考えている」かと言えば、パーティ会場に若い女性がいたら声を掛けるかもしれないが、若い女性じゃないと結婚しない、となると、結婚相手を見つけるのは難しそうだ。

結婚相手に高望みしてなかなか結婚できない、という事は男女ともによくある。彼らは本気で、本気で高望みする。Kさんが出会ったおじさんたちも、本気でKさんと結婚したいと考えているはずだ。その対象は、Kさんではなく、若い女性(Kさん)なんだろうが。

Kさんに「おじさんたちは本気です」と言っても、賛同されない予感はある。ここまで書いても特に、「おじさんはわかいオナゴがええねん」というクソおじさんムーブの説得力を超えられていない気がしている。


トンデモ説を考えてみる。

おじさんが若い女の子を好きなのは、歴史的になるためである。おじさんは即物的に生きている、その場限りの存在である。歴史に名を残すおじさんもいるが、多くのおじさんは無記名で生き、不意に死ぬだけである。おじさんは気付く、俺の人生は無意味だったんじゃないかと。仕事に明け暮れ、家庭を支えているのは自分だと自負したところで、家庭では大事にされない。交換可能な、むしろ交換された方が良い存在である。そうした時に、娘ぐらいの若い女の子が現れる。目の前の女の子は、おじさんが生きる閉じた世代ではなく、次の世代の象徴である。おじさんは女の子に貢ぎ、次世代の歓心を得ようとする。おじさんは、自分の世代が何もなし得なかった事を知っている。次世代も何もなし得ないだろうが、何もなし得終わってはいない。自分が歴史にはなれなかったが、次世代に記録される事で、おじさんという泡が弾けた音だけは残せる。故におじさんは、若い女の子を口説き続ける。

結論はない。私もおじさんである。おじさんが若い女の子が好きな理由が分かるのは、おじいさんになった時かもしれない。その時には、おじいさんが若い女の子が好きな理由が分からなくなっているかもしれない。ぎゃふん。



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