私たちの出した本『クロコディーロ』(日本語・エスペラント 対訳版) Krokodilo (japana-esperanta dulingva versio) 【中嶋 美紀】
Esperanta Ponto著、自費出版、2024年、115p、1100円(税込)
世界戦争後、AI技術を使って人類が統一し、5年が経った。 世界共通語はエスペラントになり、ウェアラブルコンピュータによって全ての人がエスペラントでコミュニケーションを行うようになった。そんな時代に感染が拡大する正体不明の流行り病、「クロコディーロ」*。両親がクロコディーロに感染し、姿を消してしまった事をきっかけに、主人公の旅が始まる……。
本書は、そんな設定の、読者の選択次第で結末の変わる『ゲームブック』だ。ゲームマスターが読みあげる物語の中でプレイヤーが役を演じる、surtabla rolludo(テーブルトーク・ロールプレイングゲーム)をChatGPTに作らせようという川良日郎さんの発案から始まった。しかしChatGPTに当初の設定を入れても機能しなかったので、私が物語を書き、佐藤隆介さんが中心となってエスペラントに翻訳した。さらに臼井裕之さん・加藤智彦さん・川端Fanjoさん・黒薔薇アリザさん・鈴木隆三さん・町田有理さん・間宮緑さん・水沢藍子さん(以上、50音順)らと一緒に、実際にゲームで遊んだようすをYouTubeで配信した。
少しネタバレになるが、最後の問いは、「世界中の人がエスペラントを話せば、言葉の違いで意思疎通に齟齬が起こる事はなくなり、戦争が無くなる」というザメンホフを念頭に置いた言葉に対して、“挑戦”するものだ。
AI役の黒薔薇アリザさんがこう言った。
私も全く同感だ。歴史を紐解けば、戦争の無かった時代なんてないし、同じ言葉を話す者同士でも、殺人事件は起こる。つまり、争いは言葉以前の問題だとすれば、この問いに答える必要はない。しかし、戦争で大切な人を失う苦しみを、そのままにしてはおけない。問いに答えなくても、対話することはできる。本書を手に取った方が、それぞれに考えを深めて頂けたらと思う。
本書は、日本エスペラント協会図書販売、SOJO、Esperanta PontoのネットショップBOOTHから入手できる。
以下のYouTube動画も参考に、是非エスペラント会の仲間たちと本書を輪読して、あなたなりの結末を見つけ出してほしい。
(月刊誌『エスペラント La Revuo Orienta』2024年4月号 p.9より)