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#120 【本気でおすすめ】アンダー5,000円の高音質イヤホン5選

 イヤホンへのこだわりというものは、さながら山登りである。音に全くこだわりのなかった人が、いくらかお金を出して音質重視のものを買ってみる。これは、地上からロープウェイで一気に山の中腹までたどり着いたかのような、圧倒的な景色の違いを味わえる。この楽曲には、こんな音も収録されていたのかと、驚く体験ができる。

 しかし、そこから先は徒歩での山登りである。一歩進むごとに体力(財力)が削られ、確かに高みに近づくが、景色が変わるほどの場所に到達するためには、途方もない高さを登り続けねばならない。

 そして、山の頂点(ハイエンドイヤホン)は必ずしも良い景色だとは限らず、途中にある絶景スポット(定評のあるミドルクラス)の方が余程良かった、ということもしばしばあるものだ。だから私は、一応はマニアの端くれであると自称しているが、イヤホンごときに大金を投じることには否定的な立場である。

(ハイテクの塊であるiPhoneやGalaxyと、イヤホン。客観的に見て商品としての価値が高いのはどちらか。比べるべくもないが、恐ろしいことに数十万円のイヤホンというのも、この世には存在する。もちろん、それを承知で突っ込んでいく道楽があるということ自体は否定しない)

 本稿では、アンダー5,000円のロープウェイ的イヤホンをご紹介する。なお、この記事で紹介するものは、全て有線のイヤホンであるため、ワイヤレスをご所望の方は下記の前回記事を参照されたい。

★期間限定ではありますが…

 2024年4月30日までの間、ZERO AUDIO製品のセール行われていることについて、記事にしました。この期間に限り、以下リンクで紹介しているZIRCO TENOREがアンダー5,000円で購入できます。かなりのオススメです。詳細は以下の記事でご覧いただければと思います。

■TRN Conch

 ボーカルを明瞭に再生するイヤホンです。声の帯域の艶、透明感、瑞々しさ。そうしたことにフォーカスを絞った音がします。おそらく、こうした音作りはアジア圏のトレンドなのでしょう。水月雨(MOONDROP)をはじめ、中国メーカーのイヤホンにはこの様なバランスの製品が度々登場してはJ-POPやアニソンのファンから絶賛を受けています。このConchは、そうした製品の中でも最も廉価で、かつ付属品も豪華というコスパモンスターです。

 付属ケーブルは着脱可能なだけではなく、プラグも交換可能なため、この機種でオーディオに入門した人が将来ドングルDAC等を購入し、バランス接続を試すという場合にもそのまま使えます。付属イヤーピースは標準的なシリコンのほか、低反発とTRN Tipsという別売り980円程度の良質なものが付属します。

 また、本体にはノズル交換ギミックがあり、3種類のノズルを使って音色の調整を行うことができます。アンダー5,000円のイヤホンにこのギミックがあるだけでも驚きですが、交換ノズル自体も付属するというのは驚異的なコストパフォーマンスです。イヤホンケースも、本体をしっかりと保護できる上質なハードケースが付属します。(この価格帯では、付属ケースはだいたい布のポーチです)

 ポップス全般、アニソン・アイドルソング、そうしたジャンルを楽しむイヤホンとしてはかなり優秀な製品かと思います。

 付属品の構成を鑑みると、「これからポータブルオーディオの楽しさを体験してみたい。イヤーピースやノズル交換によって好みの音に追い込んでいく過程を体験したい、将来的にはバランス接続による音質変化も体験してみたい」(要するに、イヤホン沼を見てみたい!)場合、特におすすめの機種になります。

■TINHIFI C2 Mech Warrior

 硬質なクール系、低域にアタック感がありノリのいい音です。いわゆるドンシャリ(低域と高域を強調した、迫力があると感じやすい音)に近いですが、ボーカルをはじめ各帯域が不自然にマスクされることもなく明瞭ですし、低域に比べて高域はややおとなしいですが、違和感なく聴こえます。

 長時間の使用では聴き疲れする感じもありますが、元気のいい音でテンションが上がります。ジャンルを問わず、どんな音源もそれなりに再生できる万能さがあります。総じて、迫力と解像度を両立している、価格帯の水準を超えた製品だと思います。

 欠点は、付属品のイヤーピース(ぺらぺら)とケーブル(ひょろひょろ)の質感が微妙なことですが、それは同価格帯の中国メーカー製イヤホンで共通の問題です。(本体以外の交換可能な部品は安物を使って、コストカットしているのでしょう。先に紹介したConchは異常です…)

 ケーブル交換可能であるメリットを活かして、好みのものに差し替えても良いでしょう。私はイヤーピースをSymbio Eartips Type Fにして遮音性を確保し、ケーブルも4.4mmプラグのものに変更して、バランス接続で聴けるようにしています。そのコスト込みで考えても、まだお得なイヤホンだと思えるくらいには良い音がします。

 個人的には、10,000円前後のイヤホンと比べても全く違和感のない製品だと感じています。私自身、同じTINHIFIのT3 Plus(8.980円程度)と同時期に購入したのですが、金額抜きで手元に残しておきたいと感じたのはこちらのC2でした。

 現在手元にあり比較試聴できるイヤホンであれば、SHUREのSE215SPEと、final E4000が10,000円台の製品ですが、正直なところ、それらと比べても音質で引けを取るとは思いません。先ほどの表現を繰り返してしまいますが、やはり、価格帯の水準を超えた製品だと思います。(装着感や遮音性ではSE215SPEが圧倒的に良く、音色に個性があり癖になるイヤホンだと感じるのはE4000の方です)

 唯一嫌いな点は、デザインが思いっきりCAMPFIRE AUDIOのパクリであることくらいですね。他は、前述した付属品のしょぼさ以外に欠点を感じることはありません。

 「ケーブル交換ができて長く使える、音のいいイヤホンを1本持っておきたいが、ノリの良い低域と、迫力があっても解像度を損なわない、クリア音が出るものがいい」という我儘を満たしてくれる製品です。

 また、既にある程度高価なイヤホンをお持ちの方にとっても、C2はおすすめです。お気に入りの機種を使いたくない場面(雨の日とか)に持ち出すサブ機として活用しても、音質的に妥協した感じが少ないのではないかと思います。既にオーディオ沼へ足を踏み入れているマニアの方でも、「シングルDDのシンプルな音もいいな」と感じていただける製品です。

■タンジジム ZERO

 小さな見た目やチープな外観によらず、驚くほどクリアな音が鳴る美音系イヤホンです。中域から高域にかけての繊細で美しい音色は、価格帯の中でも抜群の出来だと思います。

 また、見かけによらず、頭の外側まで展開される広めのサウンドステージを持っていることも優れた特徴です。低域の迫力は不足していますが、一方で長時間聴き続けても疲れにくいというメリットも感じます。

 得意なジャンルは、やはり女性ボーカルのポップスでしょうか。個人的には、あまりハイテンポなものよりは、ゆったりと伸びやかに歌うような音源、あるいはピアノの演奏などは特に合うと思います。

 先に紹介したConchと比較すると、Conchは人によってはボーカルを不自然に目立たせすぎていると感じる可能性があります。帯域バランスの自然さでは、こちらのZEROの方が優れています。

 付属品のイヤーピースはペラペラであまり質が高いとは言えません。私はTRN Tipsに変更していますが、別売りでイヤーピースを購入しても、よほど高価なものでない限りは総額でもアンダー5千円に収まるでしょう。

 また、先ほどTINHIFI C2の説明の中で、サブ機としてもおすすめであると書きましたが、こちらのZEROも同様です。筐体が小さいので、メインのイヤホンを忘れたときのために鞄に入れたままにしておくとか、そうした使い方にも向いていると思います。

 ケーブル交換不可のため、断線した際は買い替えになりますが、その分筐体が小型で装着感が軽いです。いわゆる「寝ホン」としても優秀です。もし、寝ホンとしての使用感にご興味をお持ちの場合は、以下の記事でも紹介しておりますので、参考にしてみてください。

■final E3000

以前の記事でも紹介しましたが、私にとってはアンダー5,000円イヤホンで最も好きな製品のため、改めて取り上げさせていだきます。

 聴きごこちの良さを重視した暖かみのある音でありかつ、決してボヤけている訳ではない、よく聴けばむしろ情報量が多いことがわかるという、稀有なイヤホンです。

 家電店の店頭にイヤホンの売り場があることを想像してみてください。そこには視聴用のサンプルがぶら下がっていて、お客さんは自分のスマホに繋いで視聴します。この時に有利なのは、インパクトのある派手な音です。押し出しの強い低域と、煌びやかな高域。これは迫力がある、いい音だと錯覚しやすい音です。

 E3000はその真逆を行くイヤホンです。パッと聴いた印象の良さではなく、長時間使用した結果、心地よいと感じてもらえる音作りを追求しています。マニアックなオーディオファンに向けたモノづくりをしていたfinalが、末長く愛用される定番商品に挑んだ結果生まれた傑作イヤホンです。

 一度この音が気に入ってしまえば、どんなジャンルでも楽しく聴けると思いますが、特に合うのはクラシックやジャズ等のアコースティックな音源です。特に素晴らしいのはオーケストラで、この価格帯でオーケストラのスケール感と、コンサートホールの空気感を満足に再現できるイヤホンはほとんどありません。

 ケーブル交換はできませんが、付属品のイヤーピースは単体売りされているものと同じ、final TYPE Eが付属します。また、耳掛け用のフックが付属しており、コードを下に垂らす装着方法と、耳の後ろに通す装着方法(いわゆるSHUREがけ)のどちらでも対応できるようになっています。

※final 3000番台、全機種紹介の記事を書きました。上述した、わたしのE3000に対する音質評価に興味を持たれた方は、こちらの記事も参考になると思います。

※また、finalの公式noteでも紹介されていますので、ご興味のある方はこちらもお読みになると、より特徴が掴めると思います。

 これは余談ですが、finalは神奈川県の川崎市にある企業です。中国メーカーの台頭著しいポータブルオーディオの世界で、独自の地位を築いています。神奈川県民として、どうしても推したくなるメーカーでもありますね。

■final E2000

 とはいえ、E3000が多少癖のある音作りであることは否めません。E3000の苦手なジャンルを補完する存在が、E2000です。この2機種は必ずしも上下の関係ではなく、音色の傾向の違い、得意ジャンルの違いによるバリエーションだと理解しています。

 例えばメタルやパンクロック、エレクトロニカやそれらを取り入れたポップスなどは、E2000の方が気持ちよく聴けます。Eシリーズの本分である聴きごこちの良さと、楽しく聴けるノリの良さを両立しているのがE2000です。

 E3000は好きな人にはこの上なく良い音ですが、人を選ぶ音かもしれない製品といえます。一方、E2000は誰にでもおすすめしやすい、万能な製品です。両方買っても8千円を切るくらいだと思いますので、興味があれば両方ポチってしまうのもおすすめです。

 ちなみに、私は所有しているEシリーズ全機種のイヤーピースをTRN Tipsにしています。最初にご紹介したConchの付属品と同じものですが、単品でも購入して使っています。

■余談 イヤーピースについて

 イヤーピースは人により好みが全く違うので、万人におすすめできる製品はないと思いますが、個人的にはTRN Tipsかfinal TYPE Eのどちらかでほとんど事足りています。

 最近はイヤーピースにも高価なものがあり、イヤホンの先っぽにつけるゴムのくせして2,3千円するようなものまでありますが、そうした沼に嵌る前に、上記の2製品を試してみてください。

 また、遮音性を重視する場合は、Symbio Eartips Type Fが価格と装着感のバランスが良く、おすすめです。個人的には、外に持ち出すイヤホンにはこれをつけることが多いですね。合わなかった場合は、少し高価ですがコンプライの中から適合するサイズを調べて購入しています。


それでは皆様、よいポタオデを。

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