見出し画像

ルパン三世 イタリアと青いジャケットⅠ

宮崎監督がルパンのイメージを庶民的にしたのは、悪党が悪いことをして贅沢な生活をするのは許せなかったのだろう。でも命がけで仕事しているのに清貧でいるのは割に合わない。カップラーメンを食べ小さな車に乗るルパン。義賊のイメージが付いてしまったのはクラリスを助けただけじゃない。

日本が貧しくなった今だと反感買いそうではあるから、そのイメージで正解だったかもしれないけど、たまにルパンがリッチな部屋に居たりすると(今も燃えているか)ルパンらしくていいなと思う(笑)

高度成長期に始まった1stや2ndはびっくりするほど大きな洋風の家に住んでいる。豊かさの象徴である欧米文化。外国映画の影響を受けているからかもしれない。最近のパート4、5の質素なこと(笑)いつからルパンのアジトはあんなみすぼらしくなったんだろうか。

パート4では豪邸を手に入れていたけども、リッチな家に住みながら実は泥棒とかの方が説得力ある気がする。なにせ貴族の末裔ですから。第一あんなに多くの武器やツールを一体どこに隠しておくの(笑)

高級住宅街のデッカい家にとっつあんにもバレないで他人のフリしながら地下には多くの武器弾薬庫があるとかの方がありえるような気がする(Mr.&Mrs.スミス)。いっそのこと城の一つや二つ所有してるんじゃないかと思う。武器だけじゃなくヘリとか乗り物類もカスタマイズしたのをたくさん持っているんだから。


フィアットに乗って学生みたいな狭い屋根裏に仲間と同居するルパン。「カリオストロの城」の呪縛が解けることはもうないのだろうか。ノマド的なルパンたちのその自由な生き方に憧れもあるけれども、潤沢な装備と攻撃力に矛盾する。

男三人の同居生活や殺風景な狭いアジトはまるで大学のサークルのよう。そのノスタルジーも人気の秘密かもしれないけど。


不二子の家だけはどんなシリーズでもゴージャス(笑)
でもね、不二子の部屋でくつろいでいるパート4のルパンの色鮮やかなブルーのジャケットを見ていると、こんな派手なジャケットこそ、不二子の貴族のように華麗な部屋にふさわしいと思う。赤いソファに座るドレスアップした不二子とロイヤルブルーのジャケットのルパン。とってもお似合い。ルパンはまるで青年実業家やオートクチュールのデザイナーのようなセレブに見える。

派手派手しいジャケットのルパンのコスプレは、街中やルパレスでもやっぱり浮いている。でもこのブルーのジャケットや実写版赤ジャケのエンジ色のジャケットでパリのモードや宮殿のような場所に居たら?どこかのセレブや芸能人のように見えるんじゃないか。英国のロックスターが着ててもおかしくない。


そしてこの原色のド派手なルパンのジャケットこそ、ルパンの気位、三世と名乗るフランス貴族の血筋や気品を象徴しているんじゃないだろうか。アニメとはいえ泥棒のくせに派手なジャケットを着ているのは、まるで芸術家のように盗みを働く、アルセーヌ・ルパンの孫としてのプライドなのかもしれない。その証拠に小池ルパンの黒ジャケは原作初期のチンピラ風味に溢れていて、舞台も日本だったりロスだったり、ヨーロッパではない。


知的なイタリア人(系)といえば、刑事コロンボがある。イタリア系移民のアメリカ人の刑事コロンボは、いつもみすぼらしいコートでかみさんの話をしながら、上流階級の欺瞞と嘘に鮮やかに切り込んでいく。移民の出身、しかも最後にやって来たイタリア系は最下層に位置するという(同じ移民でも先にやって来たイギリスやスコットランド系などが上流を占めていた)。

刑事コロンボは優れた推理物というだけじゃなくて、当時のアメリカ社会を反映しており、下層が上流をやっつける庶民の鬱憤晴らしの意味もあるんだとか。

ルパンのカラフルなジャケットに対して、刑事コロンボの薄汚れたコートは、それぞれの出身階級を表している。視聴者は主人公の服装で視覚から彼らの出自のメッセージを読み取っている。




いいなと思ったら応援しよう!