ルパンツイッター12

ルパン三世 フランスとルパン帝国Ⅱ

ノマドのようなルパンたちの方が見ていて気楽だけども、あのルパンの自由な生き方の裏にシビアな現実がある方が人間臭い気もする。

ルパンの奥深さ、ミステリアスな魅力は作者によって生み出されたもので、その作者のポリシーがあのラストであり、その裏にあるルパン帝国であり。悪人は成敗されるという銭形的な人物でもあったパンチ先生の思想は、たとえ娯楽要素が強いアニメといえどもどこかで反映されていて欲しいと思う。

それは残酷なようであるけれども、インフレ気味に高騰しているルパンのスペック、ヒーローとしてのスペックのストッパーとなり得るからだ。そしてその方がそこに生まれる人間的な感情や葛藤、新たな物語世界の可能性を感じられる。

犯罪三昧でオレオレでイケイケなヒーロー。果たしてそれがどこまでカッコイイのか?一歩間違えればすごく幼稚でダサい男になってしまう。ルパンに大人の娯楽を求めるなら、大人としての制裁や現実をいずれ受けることになる。少なくともパンチ先生はその考えだったし、自らが生み出したルパンという主人公に対してさえ、シビアな目線があったように思う。


原作を読めばルパンの後ろに過酷な現実があるのがわかる。最後片目になり命を落とす。先生の漫画は「教育上よくない」描写が多いけれども、そのポリシーは「とても教育的」だと思う。


「ヒトラーはガキの頃の英雄だよ」(映画「大冒険」植木等)

ルパン帝国の設定はただの漫画的な発想なのだろうか。それはナチスが一国を乗っ取っりヨーロッパを席巻した時代に生まれた先生の世代にとっては、悪の行きつく先として自然な発想だったのではないか。日本も天皇制という形で、軍国主義は独裁と変わらない時代だった。ルパン帝国を中二的な、いかにも漫画っぽい発想として一笑に付すのは、私たちがただ平和な時代に生きているからだけじゃないだろうか。

国が混迷を極めたら天才的な一個人に盗まれる歴史がヨーロッパにはある。ナポレオンが、ヒトラーが、ムッソリーニが。スターリンが。そして裏ではロックフェラーやロスチャイルドのような巨大財閥の存在も。それら上流階級にケンカを売るルパンがただのギャンブルのように盗みを行う?義賊面して?いやいや、その盗んだ巨大な資金は一体どこへ?その情報源と資金源は一体どこから?ルパン一味がソロでノマドのように生きているとはとても思えない。


ケンカは同じレベルの者同士に生まれる。同じ土俵に上がっていなければケンカにならない。ライバルにならない。だからライバルは時として自己のペルソナであることがある。

「感謝しろよ、マモー。やっと死なせてやったんだ」

複製人間で最後にルパンがマモーに対して放ったセリフは、ルパンにはマモーの気持ちがわかるからこそ言えたのだ。この映画はよく見るとマモーがルパンと変わりなく描かれている。

ルパンはマモーのように複製されてしまうし、マモーはルパンのように不二子を愛してしまう。二人が最高のライバル、強敵となり得たのは、お互いの頭脳だけでなくそれ故抱える孤独の深さも匹敵したからかもしれない。夢を見ない、虚無を抱えているのはマモーも同じなのではないか。

またパート4でレオナルドダヴィンチがライバルとして現れたのも、ルパンのライバルとして歴史上の大天才がふさわしかったからだ。このダヴィンチが考えたことも結局世界を作り変えること。まずイタリアを我が物にすることから始めた。パート4のダヴィンチから始まって5から恐らく6へのアルベール。みんな目的は国を盗むこと(笑)


次から次へと現れるライバルがみんな国を盗むこと、世界を支配することを考えている。ならばルパンがそれらとまったく無縁だとは到底思えない。ルパン帝国の存在が自然と浮かび上がって来る。


THE WORLD IS MINE.

「ファーストコンタクト」のラストに現れるルパンたちの気球に表示されたスローガン

そして同じ言葉がテレビスペシャルよりも理想的なルパンのストーリーを作ると言われるパチンコのCRルパンにもある。不二子ちゃんとのロマンチックなキスシーンもある。

WORLD IS MINE.


誰もが憧れるヒーローの活躍から隠し切れないルパンの野望。

このMINEというのがミネ(峰)にかかっていて、ニヤリとしてしまう。




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