ルパン三世 イタリアと青いジャケットⅡ
細身の青ジャケルパンは、ハイセンス過ぎて相手が不二子じゃなかったらゲイっぽくも見える。まあ次元も隣にいることだしそう見られても仕方ないか(笑)
アルベールも出て来たし、全方位のジェンダー刺激して本当ズルいコンテンツだと思う(笑)性差さえも飲み込んでしまうならほとんど神じゃないか
髪型といい、センスといい「トレインスポッティング」のユアン・マクレガーっぽいなと思う。かつてはジャン=ポール・ベルモンドだったルパンだけど、時代の移り変わりに合わせて最近は若かりし頃のユアン・マクレガーのようなコミカルだけどスタイリッシュなビジュアルになっている。猿顔扱いされるルパンだけど、オリジナルイメージは割とその時代の不良っぽいイケメンを意識している。
ラテン系だけども衣装はいつも細身のスーツ姿だから、英国パンクやブリティッシュロックのイメージと相性がいい。テレビスペシャルなど気を付けないと細眉で刈り上げの和風チンピラヤクザになってしまって品も何もないから、俳優やミュージシャンなどアーティストをモデルにするのは正解だと思う。そういえば「次元大介の墓標」では敵のモデルがカール・ラガーフェルドだった。
小池さんがルパンにもたらしたビジュアルセンスの恩恵は計り知れない。キャラクターデザインの巧みさは北原さんや平山ルパンに敵わないとしても、ルパンの持つ都会的で現代的なセンスと、レトロでクラッシカルな欧米のイメージが共存した世界観は、北原さん以降小池さんによって再びもたらされたと思う。それは確実にテレビシリーズのパート4と5のデザインに影響を与え、ルパンの世界を活性化させリニューアルさせることに成功した。
宮崎監督によって南部のイタリア系貧民のような出身に貶められてしまったルパン・・・。それによって泥棒としてのリアリティとコロンボのような勧善懲悪の義賊のようなイメージも生まれた。それはもう十分にやって来たと思うから、そろそろアルセーヌ・ルパンの孫として、退廃感のある貴族の末裔として、こちらを唸らせるようなよりスケールの大きい知性と、あっと驚くような物語を見せてもらいたいと思うもの。
これほどまでに魅力的なキャラクターでありながら、魅力的な仲間に囲まれながら、ずっと謎めいていて私たちは彼のことを何も知らない。彼がどこから来てどこへ行くのか。
原作には豊富にネタがあるのに、彼の物語に関してはまるで禁忌のごとくスルーされている。50年間も彼が大人も子供も含め人々を魅了して来たのは、ただの正義の味方のヒーローだからじゃない。そこには善から悪へ、悪から善へ、多彩なグラデーションを見せる主人公の人間性や仲間たちとのドラマ、スペックの幅の広さがある。そこにはきっと数限りない物語が生まれる素地がある。
アニメの世界に現れているのは氷山の一角で、その下には巨大な塊がまだ眠ったままでいる。そしてその見えないけれども確かに存在する塊が、50年ものリピートに耐えられる器となっている。はっきり言ってこれほど繰り返しリメイクされても摩耗しない強靭なコンテンツは他に思いつかない。ドラえもんかドラゴンボールくらいだろうか?でもファン層の多様性は圧倒的にルパンだと思う。
まだまだルパンには引き出しが多くて、「探偵 ジム・バーネット三世の挨拶」のような推理物も行けるし、60年代のパリのようなロマンスとシャレた相棒モノも行けるし、原作にもある戦後の退廃と没落貴族の退廃をからめて現代に置き換えたサイバーパンクのような物語も可能だと思う。不二子と「Mr.&Mrs.スミス」のような男女間のバトルものもアリ。いつまでも子供相手に義賊ぶってんじゃねーよ、というのが大人になってルパンを再履修した感想でもある。
パンチ先生は推理物はやらなかったけど、盗みの仕掛け、トリックを使ったギャクなど、物語性の強い話より、知的な遊びが好きな作家だったと思う。面白いかどうかはともかく、紙面で限られたコマ数で何が出来るか、どんな表現が出来るか、実験的な試みをしていたように思う。
初期の頃もまだ画力が成長途中とはいえ、大胆な構図は今見ても度肝を抜かれる。当時若手ながら連載が始まったルパンがすぐ人気に火が付いたというのもわかる。見づらさや読みにくさはあるけども、構図の大胆さ、意表さ、臨場感や躍動感を生み出すキャラクターの動きやアングル。今でも刺激的で当時の読者が興奮したのもわかる。
映画のフレームワークの影響だと思うけれど、60年代まではまだ映画の方もカメラワークは様々な試みが行われていて、ゴダールなどヌーヴェルヴァーグが台頭したのもこの頃。パンチ先生はいち早く海外の新しい表現や動向を取り入れ、漫画の世界で試していたのではないだろうか。当時の漫画の前衛だったのかもしれない。
よく言われることは、原作だけだったらルパンはここまで人気にならなかった、残らなかった、ルパンを作ったのはアニメの制作陣。その通りだと思う。だけど、パンチ先生の斬新なアイディアや実験精神があの時代のクリエイターのインスピレーション刺激し、想像力を膨らませ、アニメの裾野を広げたとも言えないか。
1stの小道具やシチュエーションのリアリティ、洋画のような物語や演出。2ndの軽快な音楽と声優たちの洒落た会話。惚れ惚れするようなキャラクターデザイン。どれも原作の中に散らばめられた種子が、アニメーションの世界で大きく花開いたようにも思える。
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