ルベーグ可積分関数の空間に単位元が存在しないことの3つの証明

[定義]
ユークリッド空間におけるルベーグ可積分関数の成す線型空間を$${L^1}$$と書く. $${f, g\in L^1}$$に対して$${f, g}$$の畳み込みを
$${f*g=\int f(\cdot -y)g(y)dy}$$
と定義する.

[命題]
ユークリッド空間における可積分関数の空間$${L^1}$$は畳み込みを積として可換環であるが単位元が存在しない.

[証明1]
$${L^1\subset \mathcal{S}'}$$である. 緩増加超関数の空間$${\mathcal{S}'}$$におけるフーリエ変換を$${\mathcal{F}}$$とする.
$${\exists{g}, \forall{f}, f*g=f}$$
とする. $${f(x)=e^{-|x|^2}}$$とおく. 両辺をフーリエ変換して
$${\mathcal{F}[f]\mathcal{F}[g]=\mathcal{F}[f]}$$
である. $${\mathcal{F}}$$は連続線型全単射だから特に単射, ゆえに$${\mathcal{F}[g]=1}$$から$${\delta}$$をデルタ超関数とすると$${g=\delta}$$でなければならないが, $${\delta\notin L^1}$$である.
(END)

[証明2]
$${\int f(\cdot -y)g(y)dy=\int f}$$
を満たす$${f}$$として軟化子の定義における$${\rho}$$を取ると右辺は$${1}$$だが左辺は$${1}$$でないようにできる. これは不合理である.
(END)

[証明3]
$${\exists{g}, \forall{f}, f*g=f}$$
とする. $${f(x)=e^{-|x|^2}}$$とおく. 両辺をフーリエ変換して
$${\mathcal{F}[f]\mathcal{F}[g]=\mathcal{F}[f]}$$
である. ゆえに$${\mathcal{F}[g](\xi)=1}$$だから
$${\liminf_{|\xi|\to\infty}|\mathcal{F}[g](\xi)|\ge 1}$$であるが, リーマン-ルベーグの定理より左辺はゼロでなければならないから不合理である.
(END)

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