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高度プロフェッショナル人材とは何だったのか?

高度プロフェッショナル制度に関して素人同然の厚生労働省行政について実態を明らかにする。年収要件について国会や労政審で散々指摘されているにも関わらず、指摘事項に全く対応していない。


高度プロフェッショナル制度とは

高度プロフェッショナル制度とは、年収1075万円以上の労働者に対して、一定の条件を満たした場合に適用される制度のことである。高度プロフェッショナル制度を導入する会社は、管轄の労働基準監督署に相談しながら導入を進めているが、相談先となる労働基準監督署の理解自体が不足している。厚生労働省から労働基準監督署への通達も不足している。

選択制確定拠出年金における賃金の取り扱い

企業型確定拠出型年金の事業主掛金は賃金には含まれない。

確定拠出年金法による企業型年金においては、事業主掛金は資産管理機関(個人別の資産を管理する機関)に対して納付され、年金加入者である労働者は投資商品を選択して自ら運用指図を運営管理機関(企業型年金の管理を行う機関)に対して行ないます。このように、事業主掛金は資産管理機関において個人別に資産管理されるものの、労働者が自由に処分できるものではありません。またこの掛金は、規約において掛金額を定め、事業主が毎月の掛金を翌月末日までに納付されていることとされており、一定の受給要件を充たした場合にのみ労働者に対し給付が開始される点は、既存の厚生年金基金制度や中小企業退職金共済制度と異なることはありません。したがって、確定拠出年金の事業主掛金が賃金に該当するかどうかを明確に解釈を示した通達は未だありませんが、他の制度における考え方と同様、労働基準法第11条の賃金に該当しないと考えられます。

宮崎労働局

選択制確定拠出年金は、企業型確定拠出年金のひとつで、社員が給与の一部を確定拠出年金に拠出し、老後の資産形成を自らの意思に基づき、積み立てていくことが可能な制度である。確定拠出年金に拠出せず、現行の給与をそのまま受け取ることもできる。確定拠出年金の拠出については社員自身の判断で決定できる。

選択制確定拠出年金を採用するとき、1075万円以上という年収要件から外れる可能性が出てくる。高プロ同意書にて給与年額1080万円と記載した場合に、選択制確定拠出年金の掛け金を55000円で設定した場合は以下の通りで、賃金が1075万円未満になる。

2022年3月17日、三田労働基準監督署に対して、確定拠出年金の掛金は賃金に含まれないため、違法状態ではないかと相談した。窓口の相談員は、10分程度、事務所の奥の複数職員に確認したうえで、「事業者掛金ではなく、一度賃金として支払ったうえで従業員掛金ではないか」と明白に間違った素人回答をした。素人相手に相談できるわけがない。

納得できず東京労働局労働基準部賃金課にも確認をしたが、労働者が処分(消費や納税)できる給付を賃金と言っており、掛け金は資産管理機関に納付されるため処分できないということから賃金には相当しない。選択制確定拠出年金も当然、賃金に該当しない。

これについて取り扱いを東京労働局労働基準部監督課の高プロ担当者経由で厚生労働省本省に問い合わせたところ「年収要件が満たさなくなった場合、高度プロフェッショナル制度は遡って不適用になる。労働時間(健康管理時間)から時間外労働手当を再計算してほしい」という旨の回答であった。

途中退職における期末賞与の取り扱い

賞与の取り扱いについては、高プロ制度に関わる参議院の審議でも再三議論されてきた。賞与については、支払うことが確実に約束されている具体額のみ年収要件に含まれる。

○石橋通宏君 もう一点、先ほどボーナスのことを聞きました。これ、大臣でも局長でも結構です。はっきり言ってください。賞与、ボーナス、これは含んでいいんですか、含んじゃいけないんですか。含まれないんですか、含まれるんですか、明確にしてください。

○政府参考人(山越敬一君) これにつきましても、ボーナス、賞与につきましても、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束されていて、支払われることが確実に見込まれるものに当たる場合につきましてはこれに当たるものでございますけれども、成果などによって変動するものについては含まれないものでございます。

○石橋通宏君 毎年、結局、決まって支払われるような賞与は含んでいいと、含まれるんだというのが見解なんです。そうでしょう。それだけ言ってもらえればいいんだけど。
 今局長が後段のところで言った、いや、でも成果によって云々は、別に支払われなければいけません、入りません、それはそれでいいんですね。じゃ、法律のどこにそれ書いてあるんですか。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、賞与の話は、先ほど局長から答弁させていただいているようにその契約時点においてお決めいただくということでありますから、通常のように、その契約時点がどこによるかもしれませんが、春闘の結果等々によって決まるというものであれば、これはあらかじめ支払が確定したものとは言えないということで、当然対象にならないということであります。
 それから、先ほど私が申し上げたのは、一千七十五万という最低限を超えて、あとどういう形で給与の払い方を決めるかということについてはそれは労使それぞれ考え方があるでしょうということを申し上げたので、そこはそういうことで申し上げたということであります。

○石橋通宏君 そうすると、通常の一般企業でいって、今大臣、何かちょっと、春闘で決まったらその賞与額が高プロの対象労働者にも並びで支払われるような表現で言われて、その場合には込み込みだから含んでいいと。(発言する者あり)いや、毎年、定例でやるものは入っていいし、成果に応じて払われるのは入っちゃ駄目と。じゃ、それ、成果に応じたものは、この一千七十五万円云々とは別に、その成果に応じてちゃんと評価をされ、必ず支払われなければならないんですね。それはどこに法律上担保されているのか教えてくださいとお願いしているので、法律上どこに担保されているのか明確にしてください。

○国務大臣(加藤勝信君) まず、先ほどから申し上げておりますように、毎年支払われるかどうかということよりも、その労働契約をした段階で支払うということを決めた金額、それがボーナスということであれば、ボーナスというか、年に二回ということであれば、それは入りますよということを申し上げているということであります。
 それから、上回ることをどこで決めているかと。それは、ですから、先ほど申し上げた労使等が、それは労働契約でお決めになる。そして、労働契約で決めれば、それにのっとって支払う義務が発生するのは当然のことではないか。ただ、そこをこの高プロ制度で要求しているわけではなくて、先ほど申し上げた、高プロ制度としては一千七十五万ということをクリアして、まあ例えばですから、これから決める水準ですけれども、一千七十五万という給与水準を決めれば、それは支払われると見込まれる金額、それが超えていなければ対象にはならないということを申し上げて、そしてそれがクリアされた上において、あとどういう形でそれにプラスアルファするかは、それは労使でお決めいただく、そういうことで申し上げたわけであります。

第196回国会 参議院 厚生労働委員会 第22号 平成30年6月19日

賞与の支払いの最低額を含めて1075万円を超過していることが年収要件になるということである。

○吉良よし子君 私がお話聞いた方々というのは外資に長く勤めていたそうなんです。その経験上、確かに成果を出したら高額のペイがもらえる、けれども、出せなければ例えば解雇といったようなリスクを背負いながらチャレンジをしていくということはあり得るし、万一解雇されたとしても転職するということはできるということもおっしゃっていたんです。
 しかし、この続きが重要なんですけど、そういうリスクを背負ってもいいと、リスクを背負ってでもチャレンジできると思える年収条件については、一千万では安過ぎるとおっしゃっていたんですよ。これは、国際的にそうやって渡り歩くものとしては、一千万というのはアナリストとかコンサル業では低いんだ、この一千万だというのは保護されて働く労働者の年収だということもおっしゃっていた。これ私、重要な指摘だと思うんです。
 政府は一千万の年収がある人は交渉力があるとおっしゃっていましたけど、それだって、こういう現場の声を聞いたら怪しいと言わざるを得ないということを強く今日は指摘しておきたいと思います。
 ところで、この年収も、まあ一千万が高いか低いかというのもあるんですけれども、年収についても私聞きたいんですけれども、大臣は衆議院の審議の中で度々、この年収要件、基準年間平均給与額の三倍額を相当以上ということで、一千七十五万は確実にお支払いいただける金額だと、少なくとも支払っていただかなくてはならないなどと答弁されているわけですけど、しかし、法案を読むと、四十一条の二の二号ロでは、労働契約に使用者から支払われると見込まれる賃金の額と書いてあるわけですね。これ、見込みとしてしか法案に書いていないのに、本当に確実に支払われるのかどうか疑問が出てくるわけですけど、本当に、高プロ労働者となった場合には一千七十五万円、確実に支払われるのか、これは下回ることないということでよろしいのか、大臣、お答えください。

○政府参考人(山越敬一君) この高度プロフェッショナル制度でございますけれども、労働契約に支払われると見込まれる賃金が一定の額ということになっておりまして、そういうことでございますので、労働契約におきまして、その賃金額が使用者と労働者の間で定められるということでございます。その契約上の義務として、使用者は労働者に賃金を払っていただく義務があるということでございます。

○吉良よし子君 義務義務とおっしゃっていましたけど、一千七十五万円を下回ることはないということでよろしいんですか、これ聞いているんです。大臣、お答えください。

○政府参考人(山越敬一君) この額でございますけれども、労働契約により支払われると見込まれる賃金の額でございますので、労働契約で定められている額の最低がその一定の額だということでございます。

○吉良よし子君 最低の額ということだったと思います。
 取りあえず、それを踏まえて聞いていきたいと思うんですけれども、この、じゃ仮に一千七十五万としますが、その支払方法ですけど、例えば、一年間高プロとして働く合意をしましたとしたときに、毎月支払うのは二十万程度にして、残りの八百万というのはプールしておいて最後の月に成果を含めてまとめて支払うと、そういうやり方は許されるんでしょうか。

○政府参考人(山越敬一君) 高度プロフェッショナル制度におきましては、今申しましたように、労働契約で一定の年収要件を満たすことは前提にしておりますけれども、その配分については法律上は特段の規定をしていないものでございます。
 賃金の額については個々の労使の取決めによって設定されるものでございますので、支払方法も基本的には労使の取決めによって定められていくものでございますけれども、ただ他方で、例えば法律では最低賃金の規定がございますので、そういった所要の規定は当然遵守をしていただく必要があるところでございます。

○吉良よし子君  私が言っているのは年収の問題ですよね。一千七十五万、最低払うと。それが、毎月は二十万ずつでよくて、最後、八百万プールしておくことができるということになるわけです。これ、とんでもない話だと思うんですよ。
 衆議院の修正では、一応この契約解除ができると、同意の撤回ができるようになったというけれども、そういう支払方法を認めたら、労働者は満額支払が終わるまで契約解除できないということになるじゃないですか。これでは権利がないに等しいわけですよ。そんな不合理な契約が認められるなんということは絶対にあってはならないと思うんです。
 この給与の支払方法についてもちゃんと明記すべきじゃないんですか、法律で。少なくとも、この一千七十五万円を均等に毎月割った給料を支払わせるようにすると、そうすべきではないですか。大臣、いかがでしょう。

○国務大臣(加藤勝信君) いや、ですから、それは個々の労使の取決めによって設定されるということでなるわけでありますし、その上で申し上げれば、元々働き手側の、合意に基づいてこれ成り立っているわけでありますから、先ほど一千万の話もありました、これは最低限として申し上げているので、いや、とてもそれじゃ私はやらぬと言えば、それは高度プロフェッショナルとしての働き方はそこでは成立をしないということに当然なるわけであります。

○吉良よし子君 とてもそれではできないとおっしゃいましたけど、いや、年収で一千七十五万もらえるというはずで始めたのに月二十万しかもらえないというのはやっぱりおかしいですし、最終的にもらえるかどうかというのが分からないというのはおかしいと思うんですけど。
 先ほど一千七十五万下回らないとおっしゃいましたけど、それだって法律にはやっぱり書かれていないと思うんですよね。これ、ちゃんと法文に書かなきゃいけないと思うんですけど、その点いかがですか。

○政府参考人(山越敬一君) これは、法律上は労働者の平均的な賃金の三倍程度を相当程度上回る額という算式が書いてあるわけでございまして、それを踏まえまして具体的には省令で定めるということでございますので、法律を定める以上は一定の額が担保されるという仕組みになっているところでございます。

○吉良よし子君 いや、でも、見込みとしか書いていないんですよ、法律上は。だから、確実に支払われるかどうかが分からないわけですよ。
 ちゃんと書くべきじゃないんですか、確実に支払えって、下回ってはならないって。

○政府参考人(山越敬一君) これは労働契約により支払われると見込まれる額が一定額ということでございますので、これ労働契約上の権利義務関係としてその使用者は労働者にその額を払わなければいけないということになるわけでございます。

○吉良よし子君 じゃ、聞きますけど、先ほどの支払の方だった場合、二十万ずつ払って、最後八百万プールしていると、その場合に、一年間高プロで働きました、一年後、成果を査定したら思っていた成果が出なかったのでその八百万は払えませんと、そういうことができるんじゃないですか。いかがですか。

○政府参考人(山越敬一君) これは、この省令で定めることとなっている最低額をその業績とかにかかわらず確実に払っていただく必要がございますので、そういった業績が下がったからということでそれを割り込むという契約は結べないということでございます。

○吉良よし子君 じゃ、それを明記するべきじゃないですか。
 つまり、使用者側が成果を評価したときに、一千七十五万円を下回るような労働者は高プロの対象とはならないと、確実に一千七十五万円分の成果を出せる労働者でなければ高プロの対象としないと書くべきではありませんか。

○政府参考人(山越敬一君) 労働契約で支払われると見込まれる額が一定額以上、省令で定める額以上でございますので、それはその額を確実に払うという契約を結ばないとこの高プロの対象にはできないところでございます。

○吉良よし子君 高プロの対象にできないということだったら、それ法案に書かなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。
 大体、幾ら大臣が確実に上回ると言ったって、悪意を持った経営者はいるんですよ、残念ながら、この国には。ブラック企業、ブラック経営者、そういう人たちがこの法を悪用して使う、違法、脱法をする、それを許さないルールの作り方が必要なんじゃないかと言っているんです。それを防ぐ手だてがない下でこのまま進んでしまうわけにはいかないと言っているんですよ。  じゃ、ここでもう一つ聞きたいんですけど、今度は解除の問題です。  午前中もちらりとあったように聞いていますけれども、今度は労働者側が解除できる規定はあるわけですけど、じゃ使用者の側が、今度は、先ほど言ったような、一年後、あなたは約束した成果を出さなかったから高プロに値しませんでしたと一方的に高プロを解除するということはできるんですか。いかがでしょう。

○政府参考人(山越敬一君) 高度プロフェッショナル制度につきましては、対象労働者のこれは同意の下に制度の適用がなされることとされておりますので、使用者が特段の事情なく一方的にその適用を解除することは認められないというふうに考えます。

○吉良よし子君 一方的に解除することは認められないということでしたけど、それって法文に書いてあるんでしょうか。労働者側の解除の手続については書いてあると思うんですけど、使用者側の解除、一方的な解除してはならないと書いていないんじゃないですか。いかがでしょう。

○政府参考人(山越敬一君) これは、労使間で契約、同意をもってしてこういう制度を適用するということでございますので、そういったことから、その同意というのは、一方的に適用を使用者の方から解除するということは通常はできないというふうに考えます。

○吉良よし子君 通常はっていっても、そこが書かれていないと分からないじゃないですか。
 例えば、だから先ほどのような、毎月二十万十二か月払って、残りの八百万支払う段階で、いや、成果が出せなかったということで一方的に解除をして、そして、その解除を理由にしてプールしていた八百万支払わないとか、そういうことが可能になるんじゃないですか。いかがですか。それを防ぐ手だて、あるんですか。

○政府参考人(山越敬一君) そういった形での、何と申しますか、契約というものは通常一方的に解除したりすることはできないでしょうから、元の契約に従って賃金支払義務が存続しているものだというふうに考えます。

○吉良よし子君 通常できないと言うけれども、絶対あり得ないとは言わないわけですよね。合意を、先ほど労働者の同意を必要とすべきって、一般的にはそうだ、通常はそうだと言うけれども、通常はって言うだけで、じゃ、そのことは書いていないじゃないですか、高プロの要件の中には。使用者側が一方的に解除して給与を払わないなんてことをしちゃいけないってどこに書いてあるんですか。

○政府参考人(山越敬一君) それは、労使間で契約を結んでいることでございますので、そういった、使用者が一方的にその適用を解除することは認められないということでございます。契約が解除されない以上、元の契約に従いまして賃金支払義務が残っている、そういうふうに考えます。

○吉良よし子君 具体的に、高プロに関わって、高プロ制度の解除に関わって、使用者側が一方的に解除してはならない、解除する場合は労働者の合意が必要であると、そういった規定があるんですか。

○政府参考人(山越敬一君) この高度プロフェッショナル制度でございますけれども、対象労働者の同意ということが要件になっていると、そういうことで規定がされているというふうに考えます。

○吉良よし子君 それは導入時ですよね。契約するときに、あなたは高プロですねって契約するときに同意をしましたということでしょう。でも、私が言っているのは解除の段階の話なんですよ。だって、それ認めちゃったら、書かなかったら、使用者の側は、それこそ一千七十五万払いますよというニンジンをぶら下げて、あなた高プロですと言って過大なノルマを押し付けて、それこそ馬車馬のように酷使して働かせた挙げ句、成果が出なかった、だからやっぱりあなたは高プロではなかったですって、ぶら下げたニンジン取り上げられる、そういうことが許されるということになるわけでしょう。  あなた高プロだって言いながら使用者側の判断一つでそれを撤回して、低賃金、長時間過密労働を強いることができるようになるなんということになったら、もうこれ高プロでも何でもないじゃないですか。そんな抜け穴、絶対に作っちゃいけないでしょう。そういうことをちゃんと法律に書かなきゃいけないんじゃないですか。

○政府参考人(山越敬一君) これは労働契約で、一定の成果を上げるということを労働契約、職務記述書などで定めていくわけでございまして、そういった成果が上がらないからといって一方的に使用者がこの契約を解除するということはできないものだというふうに思います。

○吉良よし子君 できないと思いますだと困るんですね。幾らここで答弁されても、最終的には法文の中で確認される作業なんですよ。そこにちゃんと書かれていない限り、悪用する使用者が出てきたら困るでしょう。そのときに労働者は泣き寝入りするしかなくなったら困るじゃないですか。
 そういう一方的な解除はないとおっしゃるんだったら、そうやって法文に書くべきじゃないですか。大臣、どうですか。

○国務大臣(加藤勝信君) ですから、ベースは労働契約があります。労働契約については、これ契約、両方間の合意に基づいて成り立っているわけで、それぞれが債権債務を持つわけでありますから、一方的に廃棄することは基本的にないということで作られているわけです、契約そのものが。  ただし、本件については、労働者側が合意の解除ができる、元々合意をするという前提になって合意ができると、こういう仕組みになっているわけですから、その前提になっている労働契約については、これは別に本件だけではなくて通常の労働者についても同じでありますので、そこにおいては、労働契約を結べば、その労働契約にのっとって、お互いがですが、それぞれ債務と、債務を履行するというそれぞれの義務を負うということでありまして、それは何らほかと変わりがない。そして、それが前提になった上で、先ほど申し上げているように、本件については労働側が合意を解除することができるという規定をまた改めて設けたと、こういうことであります。

○吉良よし子君 それって読んだだけじゃ分からないじゃないですか。いや、契約だっておっしゃいますけどそれ全体の話で、雇用契約の話でしょう。それは雇用契約を解除するかどうかという話にもつながると思うんですけど、私言っているのはそうじゃなくて、高プロ制度なんですね。高プロ制度解除したからといってすぐ解雇になるって、そういうことではないと思うんですよね。
 やっぱり、高プロ制度にのっとって、それに特化して一方的な解除はしてはならないとちゃんと明記しなきゃいけないんじゃないですか。法律じゃなければ、省令にでもちゃんと書かなきゃいけないんじゃないですかと言っているんです。

○国務大臣(加藤勝信君) もちろん、基本契約があって、そして、その上においてこの高プロに基づく契約というのが概念的に申し上げれば乗っているというわけで、そして、トータルとして労働契約として存在をし、それを、基本的にはそれぞれが履行の義務があるわけであります。こちら働いて、そして働いたらちゃんと賃金を支払う、こういうことになっているわけであります。それは、でも、ベースになっているんですね。
 ですから、これ、ここについて改めて書かなくても、元々この制度そのものが、あるいは労働契約そのものがそういうベースになっているので、それをむしろ逆に、働く側から解除できますよ、合意を撤回できますよという規定を改めて出しているということ、これがこの法律の作りになっているということでありまして、その委員おっしゃっている、改めてここに書くんじゃなくて、もうそれが前提になっているということであります。

○吉良よし子君 じゃ、一方的な解除はできないとして、解除を理由にして給与を差し引くとか、そういった不利益な取扱いをしてはならないと、そういったことは書いていますか。

○国務大臣(加藤勝信君) 今申し上げたように、解除ができないわけですから、できないことを前提にそれ以上条件を書くことは通常ないんじゃないんでしょうか。

○吉良よし子君 何かやっぱり、これだと使用者側のやりたい放題になってしまうわけですよ。だって、何の歯止めもないんですもの。歯止めがないんですよ。書いていないんですよ。書いていなければ、それを脱法的に使って、悪用して、労働者を酷使して、そういう経営者がいるんですよ。そういう中で過労死、過労自殺が生まれているんです。そういう下で働けないような労働者が出てきている、そういうひどい働かせ方をやめましょうよと私は何度も国会で申し上げてきたと思うんですけれども、そういう、労働者を法で保護するんじゃなくて、むしろ法の抜け穴をどんどん大きくしていくのが今回のこの高プロを始めとした働き方改悪じゃないですか。
 こんな法案、絶対に私は認めるわけにはいきません。絶対に撤回せよということを申し上げて、質問を終わります。

第196回国会 参議院 厚生労働委員会 第18号 平成30年6月5日

ここで期末賞与の話が出ており、それを必ず支払うのかという議論がされている。例えば年間では年収要件1075万円以上で報酬設計され、成果要求が高いために半年で自主退職するケースが考えられる。期末賞与の支給日在籍要件により一銭も支払われなくなり、年収要件を満たさなくなる。

この場合、半年間は高度プロフェッショナル制度に基づいて勤務していたにも関わらず、受取報酬の年間換算は1075万円を下回るのである。例えば、ボストン・コンサルティング・グループ合同会社のシニアアソシエイトは、ベース800万円を12分割した額が月俸となり、賞与は1075万円との差分(=275万円)が12月に支払われるが、途中退職はどのように扱っているのだろうか。

これについて取り扱いを東京労働局労働基準部監督課経由で厚生労働省に問い合わせたところ「契約時点では確実に支払われていると見込まれていたため問題ない」という旨の回答であった。国会討議をなぞるとそのような回答になるわけもないが、直接、厚生労働省労働基準局に追加で問い合わせる手段がなかった。参議院行政監視委員会に苦情を出したが、適切に処理されているのだろうか。

高度プロフェッショナル制度に関わる参議院厚生労働委員会附帯決議

厚生労働省の回答としては、高度プロフェッショナル制度に関わるコミュニケーションがとれてなかったため、今後通達等を通じて明らかにしていくという旨の回答が含まれていたが、問い合わせを実施した2022年以降何ら新しい通達は発出されていない。

また、労働政策研究・研修機構「高度プロフェッショナル制度の適用労働者アンケート調査」によって、年収1075万円以下の高プロ適用者の実在が明らかになり、労働政策審議会労働条件分科会の労働者代表委員からの指摘があったにも関わらず、勝手な憶測により全く責任放棄の回答で誤魔化していた。

○労働条件確保改善対策室長  「1,075万円未満」という回答が5件見られたところでございます。この設問は、高プロ制度適用後の直近の年収を尋ねたものでございますが、この回答者の中には年度途中での適用者の方もいらっしゃったことから、調査時点での高プロ制度適用前の年収であったり、あるいは適用時点を起点にした1年に満たない収入実績を回答されたという可能性も考えられるところでございますが、高プロ制度は、1,075万以上でないと制度適用にはならないということは変わりございません。

○八野委員 資料の9ページに記載のある適用後の直近の年収について、適用要件として1,075万円以上でなくてはならないわけですが、適用労働者の給与額の決定単位が異なっても年収要件を満たしているか確認する事が必要なのではないかと思います。今後どのような監督指導をしていくのかをお伺いしたいと思っております。

○労働条件確保改善対策室長 1,075万円未満のところについてでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、匿名で任意のアンケート調査でございますので、労働者の方が何をもって回答されたのかということまでは分からないというところでございます。

ただ、監督指導に関しましては、先ほどもありましたとおり、全ての事業場に関して監督指導を実施することとしていますので、こういった事業場に対しても監督指導を行うということになります。この調査自体は任意のアンケートで行っていますので、これ自体を端緒として監督指導するということではありませんが、監督指導を行っていく中で、1,075万未満というものが出てくるのであれば、それは当然に是正を指導していくということになると考えてございます。

2022年7月27日 第176回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

高度プロフェッショナル制度に関わる参議院厚生労働委員会附帯決議は以下の内容である。

二十二、高度プロフェッショナル制度の対象労働者の年収要件については、それが真に使用者に対して強い交渉力のある高度な専門職労働者にふさわしい処遇が保障される水準となるよう、労働政策審議会において真摯かつ丁寧な議論を行うこと。

二十三、高度プロフェッショナル制度を導入する全ての事業場に対して、労働基準監督署は立入調査を行い、法の趣旨に基づき、適用可否をきめ細かく確認し、必要な監督指導を行うこと。

三十、高度プロフェッショナル制度の具体的な実施の在り方については、多くの事項が省令に委任されていることから、委員会審査を通じて確認された立法趣旨や、本附帯決議の要請内容を十分に踏まえ、労働政策審議会における議論を速やかに開始し、省令等に委任されている一つ一つの事項について十分かつ丁寧な審議を行い、明確な規定を設定するとともに、対象事業主や労働者に対して十分な周知・啓発を行い、併せて監督指導する労働基準監督官等に対しても十分な教育・訓練を行うこと。

三十一、高度プロフェッショナル制度に関して、政府は、三年を目途に、適用対象者の健康管理時間の実態、労働者の意見、導入後の課題等について取りまとめを行い、本委員会に報告すること。

平成30年6月28日付参議院厚生労働委員会の附帯決議

労政審にて省令等に委任されている一つ一つの事項について十分かつ丁寧な審議を行い、明確な規定を設定するとともに、対象事業主や労働者に対して十分な周知・啓発を行い、併せて監督指導する労働基準監督官等に対しても十分な教育・訓練を行うことを全く実施していない。

※労働基準局長
2015-2018 山越敬一(戒告)
2018-2020 坂口卓
2020-2022 吉永和生
2022- 鈴木英二郎

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