ARION SPH-1
2004年、当時高校生でギターキッズだった自分は、国内外のバンドを色々聴きまくったり機材をとっかえひっかえして遊んでいた。
ある日バイト先で、バンドをやっていた大学生の先輩が興奮した様子で
僕に教えてくれたバンドがあった。「凛として時雨」だった。
「対バンしたんだけど、空気全部持ってかれた。やばかった」
その先輩はDIESELというインディーズ3ピースバンドを組んでいたんだけど、時雨と対バンする機会があったらしい。
今ほど時雨は有名でなく、埼玉、池袋、渋谷、新宿のライブハウスで活動していた頃、手刀に時雨を観に行った。チケ代1500円。
柵の最前を陣取り、凝視しまくった。
ナンバガ好きだった自分にはそれはもう十二分に刺さった。
異常な速さのアルペジオ、足元に裸電球だけの照明、
手数のやたら多いドラム。
そしてフロントマン、TKの足元にこれがあった。
もはや説明は不明でしょう。
ARION、上野開発センターがシリーズ化していたコンパクトエフェクター。
(公式サイトはもうずっとこの状態)
元は国産(その後スリランカ製に移行)
プラスチック筐体の安価なモジュレーション系エフェクターで、自分も当時中古を3000円程度で買った記憶がある。
・チープな見た目
・壊れやすい
・バイパスで音瘦せする、音抜けもいまいち悪い
・フットスイッチも壊れやすい
・安いのにステレオ出力に対応
・しかし実に美味しい、えぐいフェイザーがかかる
・時雨のTKがワンポイント的にフレーズに組み込んだのが
バチクソにカッコよくてそれが人気に火をつけた(と思ってる)
↑
個人的には、2004年9月に池袋手刀で聴いたsadistic summerのフェイザーのかかり具合が最もイカしていたと思う。あれは本当に痺れた。
2007年頃までは品切れなんて無用なエフェクターだったと記憶しているけど、2024年現在、新品はもはや出回っておらず、中古でもジャンクで1万~
動作確認済み中古で2万前後、
箱付き美品で25000円以上するというプレミア市場価格になってしまっている。
というのも、このSPH-1に使われているトランジスタに廃盤となったものがあり、生産が終了したという噂を見かける。
情報の裏取りをしようと思い色々調べてみたのだけど、
「製造終了している」という明確なエビデンスが見当たらなかった。
いくつかの楽器店が製造終了との商品説明を明記しているので、
それが広まったのだろうか。
自分は最初にこのSPH-1を買った時、しばらく遊んでいたらフェイザーの音が急に出なくなった。つまみを回しても何も反応しない、という症状だった。それで売ってしまったか捨ててしまったか…15年以上前だから覚えていない。今にして思えばもったいない事をした。
先日、メルカリを徘徊していたら「音が出ないジャンクのSPH-1」が
1万円で売っていた。ジャンクであるけど1万円もする。
今なら自力で直せるのではと思い、購入した。
結論から書くと、まずアリオンフェイザーの故障で疑うべき点は3つある。
フットスイッチは画像右下にある電子スイッチの劣化である可能性が高い。
・バイアス調整用半固定抵抗の劣化、ズレ
・電解コンデンサーの容量抜け
・ハンダ面の剥離、ひび割れによる導通不要
自分が購入したジャンク品は、電解コンデンサーと半固定抵抗が劣化していた。全て取り換えた結果、見事に復活。
巷では「TK MOD」と呼ばれるMODカスタムで取り払われる事のあるらしい、C15、C21、R28、R44。(222と4.7kΩ)
これを除去すると、
「高音域のドライ音がフェイザーのウェット音より前に出る」感じになる。
結果、ハイが残るので音抜けに繋がるのだろうけど、
自分はこのMODが全然しっくりこなかった。
SPH-1独特の、全部丸め込んでシュゴオオオとなる感じが薄れたなあ…
としか思えなかった。そのため、MLCCのコンデンサに変えて抵抗も
元に戻した。
(回路的には、高音域にフィルタリングしてウェット音とのバランスを取る為の部分だと思うので、ここのコンデンサ容量を変えると聞こえ方は変わってくるはず。認識違ってたらすいません)
今となっては貴重なエフェクターの仲間入りをしてしまったアリオンフェイザー。自力で直すのも手の一つかもしれない。