ゼルダの伝説から学ぶ地学 〜地形編その1〜
先日、Nintendo Direct E3 2019にて、世界中を熱中させた名作ゲーム「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド 」の続編が開発中であることが発表されました。ブレワイといえば、ストーリーはもちろん、音楽やグラフィック、やり込み要素まで、全てが完璧な今まで最も素晴らしいゲームの一つです。今日までに日本で170万本、世界では1500万本以上の売り上げを記録し、任天堂の歴史上の大作となっています。
そんなブレワイですが、このゲームには色々な生き物たちや、あらゆる地形、天気などの様々な環境要素があります。そこで今回はこれらのうちの地形に着目して、ゲーム上の地形の成り立ちを考察していきたいと思います。ただ、やはりゲームなので、成り立ち不明な地形も多々ありますから、細かいところはお気にせず…
なお、このテーマは長いので記事全体を3〜5つに分けて投稿していく予定です。
注意:この記事には「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド 」のネタバレがあります。全マップ追加及び四神獣解放、ウツシエの記憶をクリアされてない方はご注意下さい。
【基礎知識】 平野の発達
ゲームの地形を考えるといっても、基本的なことがわかっていないと地形を考察するのは難しいので、平野のでき方について大雑把に学んでいただきます。
[重要語句]侵食基準面
大切になってくるのがこの侵食基準面です。これは、侵食という、川や風などが土地を削り取っていく現象の限界の場所のことを言い、この面より下には侵食は及びません。
河川においては、この侵食基準面は海面の高さとなります。よって、水の流れている地形が隆起するか、海の高さ(海水準)の低下によって、侵食基準面は低下します。
[重要語句]地形輪廻
平野が発達したり消滅したりする過程では、「侵食輪廻」という、周期的な地形の変化があります。この「侵食輪廻」はアメリカの地質学者デービス(1850-1934)が提案したもので、地形の成り立ちを考えるのにかなり重要になるポイントです。
①原地形
まず、地形というのは平坦面が広がる、侵食が始まる以前の地形があります。これを原地形と言い、侵食輪廻の最初期の段階となります。
②幼年期
降水により、降った水はより標高の低い場所に移動しようとします。ここで河川が形成され、原地形を削り取っていく侵食作用が働きます。これにより平坦面に谷が形成された状態を幼年期と言います。グランドキャニオンがこれに当たります。
③壮年期
幼年期の状態からさらに侵食が進み地形の起伏が大きくなったものを壮年期と言います。隆起が同時に起こることで侵食基準面の低下を招き、さらに険しい山々を形成していきます。アルプス山脈がこれに当たります。
④老年期
さらに侵食が進み、谷が広くなると老年期という状態になります。侵食が進んだために山々は丸みを帯びて、山頂は谷の切り合いによって低くなります。北上山地などがこれに当たります。
⑤準平原
侵食基準面の近くまで地形が侵食されると、谷は広がり、やがて緩やかな平坦面を形成します。これを準平原といい、残丘と呼ばれる小高い台地や丘陵を形成することもあります。日本にはそのままの地形がありませんが、シベリア西部や北アメリカ大陸南部などに存在します。
①〜⑤の経過を経て、準平原を形成すると、また隆起や海面(海水準)の低下などを原因とする侵食基準面の低下が起きます。そうするとまた侵食が激しくなり、①〜⑤の過程を繰り返すのです。この繰り返しが侵食輪廻となるのです。
1、始まりの台地
それでは早速、ストーリーに沿って始まりの台地から地形を考察していきましょう。
始まりの台地では、上の写真のように四方を崖に囲まれていて、ほかの大地に降り立つのは不可能です。このために、謎の老人であり、100年前のハイラル王からパラセールを入手し、願いを聞き入れてハイラルの大地に降り立つのです。
始まりの台地は、南側がハイリア山といった山地形となっていて、西側には黄泉の川と、大地に流れ落ちる滝があります。北から東にかけては平坦な地形が続き、老人の小屋のあたりで途切れます。
台地の周辺の地形を見ると、北東側にはハイラル平原が広がり、南西にはゲルドキャニオン、南には小山地、東にフィローネの森と湖があります。
これらから考えると、始まりの台地では、何らか力が原因で全体が垂直に持ち上げられて、隆起が起こったと考えるのが自然です。最高標高のハイリア山もそこまで高さが高くないことを考えると、隆起する前はハイラル平原と同じ準平原であった、そしてハイリア山は残丘部分であったと考えられます。よって、始まりの台地は隆起準平原と考えるのが妥当でしょう。
【コラム】 始まりの台地にリンクをどうやって運んだ?
リンクは、始まりの台地にある回生の祠にシーカー族によって運ばれました。しかしながら、始まりの台地は四方を絶壁に囲まれた台地。どうやってリンクを運んできたのでしょうか。
始まりの台地には、時の神殿や東の神殿など、様々な王国の施設の跡地があります。つまり、始まりの台地に通ずる道が100年前には存在したことになります。
しかし、リンクが復活した時代には、パラセールを入手しないと大地に降りれないというように、下へ通ずる道が存在しません。東の神殿跡にガーディアンが複数確認できることから、ガーディアンによってその道が壊されたと考えるのが妥当です。でも、ハテノ砦にはガーディアンが大量にいて、それらにリンクはやられたのですから、ハイラル城により近い始まりの台地だって、リンクが運ばれた際には当然ガーディアンが沢山いたはずで、始まりの台地に通ずる道も通れたかどうか疑問です。
始まりの台地に通ずる道があったとすれば、東側か西側の、崖を人工的な壁によって囲まれている場所でしょう。神殿のような壁になっているので、そこに階段などがあったことが想像できます。
いずれにせよ、始まりの台地への道は本当に通ることができたのかは謎です。シーカー族の技術で始まりの台地にリンクを運んだのでしょうか。それとも、何か別の手段があったのでしょうか。考えれば考えるほど謎が深まるばかりです。
2、西ハテール
さて、パラセールを入手して、大地に降り立ちました。国王様のご指示のもと、カカリコ村のインパの屋敷に向かいます。
西ハテール地方は、双子山を中心として広がる、ハイラル平原南東部の場所です。
双子山より西側では、展望の丘やパウメル高地などのなだらかな丘陵や台地が南に広がり、モルセ湖やナビ湖といった湿原と、平坦な草原があり、南北を分断するように東西にノッケ川が流れています。
これらの部分では単純に、侵食がある程度落ち着いた準平原と考えて良いでしょう。
そして、問題になるのが双子山です。2つの高い山があり、その間をノッケ川が流れています。双子山はどちらも同じような高さなので、元々は同じ山(地形)であったと考えられますが、地球上には同じような例がないので、どのような成り立ちがあるのかは分かりません。
東部には、リンクが倒れたクロチェリー平原とタモ沼があります。これらは、四方を山で囲まれた盆地状の地形になっており、ガノンに囚われたガーディアンがここにたまるというのも納得のいくはずです。また、この地形のおかげで、ハテノ村にハイリア人が生き残り、ガーディアンに襲われることなく助かったのです。
また、リンクがゼルダを連れてここに逃げてきたのも、ハテノ砦を越えてガーディアンから逃れようとしたのかもしれませんし、山に四方を囲まれたカカリコ村ならなんとかなるだろうと思ったのかもしれません。
北部、カカリコ村周辺は、カルスト地形の山々が見られます。石灰岩層が溶食されることによって形成された円錐状の山々があるナリシャ高地の間に、シーカー族の住むカカリコ村があります。見た目が中国南方カルストの山々に酷似しているので、それらがモデルかもしれません。
上:ナリシャ高地 下:桂林 見た目はそっくりだ
3、東ハテール
シーカーストーンを強化してもらうため、ハテノ古代研究所のプルアのところへ向かいます。
東ハテール地方には、北部にはラネール山がそびえ立ち、南部にはハテノ村やハテール海があります。
ノッケ川上流部となるモミ川は、ジャラ湖を源流として流れていますが、ハテノ砦まで深めの渓谷を形成しています。その東にはハテノ村や研究所がある高台があり、北へ進むにつれ標高が高くなっていきます。
ラネール連邦は標高の高い山々が連なっています。北側にラネール湾があることを考えると、成層火山的な成り立ちも考えられそうですし、アルプス山脈のような壮年期としても考えられそうです。プレートの衝突点と考えれば、ヒマラヤ山脈や丹沢山地のような、土地の隆起による成り立ちでも考えられます。
ラネール台地の北側、アラブー平野やサマサ平原は、ルテラー川が形成している渓谷の南側に広がる高台です。平坦面に深い谷が形成されているので、侵食輪廻では幼年期に当たりそうです。
次回予告
次回の記事では、ラネール地方とゲルド地方の地形の成り立ちを考察していきます。もちろん、あくまでゲーム上の話ですから、正解・不正解はありませんが、やはりここまで深入りできるこのゲームは素晴らしいと思います。いつかは必ず載せますので、気長にお待ち下さい。
この記事は、「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」に従って書かれています。詳しくはこちらをご覧下さい。
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