#5_仮想空間で生きる世界 異なるアプローチでユーザー獲得を目指すプラットホーム
仮想空間が現実を代替する新たな生活の場として機能するようになるメタバース構想。つまりそこは、仕事の情報収集をしたり、音楽や映像メディアを楽しんだり、友人とのコミュニケーションを行う場となります。現在のGAFA(ビッグテック企業と呼ばれるGoogle/Apple/Facebook/Amazonの総称)がインターネット利用者の生活に欠かせない存在として成長したように、より多くの人々に利用されるメタバースのプラットホームを生み出すことは莫大な利益に繋がるといわれています。メタバース時代の覇権を握るのはどのサービスになるのでしょうか。それぞれに違った特徴を打ち出してユーザー獲得を目指す各種プラットホームをご紹介します。
あらゆる体験型エンターテインメントの表現の場へと進化するオンラインゲーム
メタバースと一概に言っても、オンラインゲームを元にしたものからSNSの延長と呼ばれるものまで、実に様々なサービスが登場しています。オンラインゲーム業界はメタバース文脈とは別に発展してきましたが、そのユーザー数の多さとコンテンツクリエイションの自由度の高さから、今や最もメタバースの概念に近いプラットフォームとして注目を集めています。特にコロナ禍では、ゲームをしない時でもオンラインで友だち同士が集まる場として大きく成長しました。
例えば、アメリカの子供たちに人気のRobloxというゲームプラットホームでは、Lil Nas XやTwenty One Pilotsといった人気アーティストが、コロナ禍にアバターによるオンラインライブを開催*。従来のオンラインコンサートでは、視聴者は画面越しに映像を見るだけなのに対して、ゲーム内であれば自分もアバターを操作してダンスをしたり飛び跳ねたりしてライブに参加することも可能に。また日本でも多くのユーザーを持つFortniteは、アリアナ・グランデや米津玄師といった人気アーティストとのコラボレーション**をすることで、普段ゲームをプレイしないような層にもアピールし、新規ユーザーを獲得することに成功しています。
アバターのファッション重視!SNS進化系メタバース
もう一つのメタバースの可能性として注目したいのが、現状のSNSの進化版とも言えるような、アバター同士のコミュニケーションを主な目的としたサービスです。世界中に約340万人のユーザーがいると言われるVRChatでは、宇宙人からアニメキャラクターまで、実に多種多様なアバターを作り出すことができます。一方で、欧米の若者の利用者が多いIMVUでは、よりリアルな人間に近いアバターが使用されており、ファッションが非常に重要視されています。それゆえにIMVUの世界内ではアバターによるファッションショーが開催され***、アバター用のファッションアイテムを販売するクリエイターとして生計を立てる人もいるそうです。
デジタル上での衣装デザインのみを発表するファッションブランドもあります。The Fabricantでは、仮想空間でアバターが着用するアイテムや、人間の写真に合成することで画面上だけで着用できるデジタルな洋服を発表。このようにアバター=もう一人の自分としての価値が高まるにつれて、そのアバターのファッションに対してお金をかけることは当たり前になっていくのかもしれません。
まとめ
ゲームやエンターテインメントからファッションまで、メタバースには多くの可能性が秘められていることがおわかりいただけたかと思います。今は各社がそれぞれ異なる目的で開発を進めていますが、メタバースが進んでくるとそれぞれのプラットホーム間を同じアバターで行き来できるような互換性のある未来もくるかもしれません。どこが覇権を握るのかの行く末も気になりますが、ユーザー目線でのプラットホーム開発がどうなっていくのかそのサービスに期待したいと思います。
(文・高橋 功樹/未来予報株式会社)