基礎資料・再読「珈琲大全」~「コーヒー豆それぞれの『比熱差』によって起こる」について
「珈琲大全」は、コーヒー焙煎技術の基本図書です。その技術向上に必須の「再現性」を高めるために、必要な視点や材料を提供してくれます。
開業前は難しく感じるはずですが、焙煎機を使って開業した後に再読すると読みやすくなります。
したがって、以下、機械によるコーヒー焙煎の経験がない方は読みづらいかもしれません。
スペシャルティコーヒーの時代になり、生産国の基本のグレード分けが影が薄くなり、味覚評価による取引が優位になりました。そのために、焙煎の方法が複雑になりました。スペシャルティコーヒーは、買い付け仕入の段階で評価された味風味の特徴個性をカップの液体コーヒーに表現することが重要課題になりました。しかし、個人の経営する自家焙煎コーヒー店では、前述の課題に加えて、焙煎の技術によって各店店主が抱く「目的の味」に味づくりし、その店ならではの特徴や個性を付加することが必須です。店主は原料コーヒー生豆の評価を吟味し、何を優先し何を差し引くか試行が要求されます。
はっきりいえば、「浅煎りの特徴的個性的エチオピア・イルガチェフ・ナチュラルのコーヒー」は、スペシャルティコーヒーの自家焙煎を標榜する店や企業なら、どこでも飲めるはずです。その品揃えがあることは他店との差別化にはならないのです。
自家焙煎コーヒー店を目指す店主は、まずスペシャルティコーヒーのムーブメントに左右されない、幅広い意味での味覚と、コーヒーの味覚評価の物差し、焙煎の技術を習得する必要があります。
「珈琲大全」はスペシャルティコーヒーのムーブメントが広がる前夜の本です。生産地のスペシャルティの前に、それぞれの店のスペシャルティがあると著わした本です。そのため、著者はその後「スペシャルティコーヒー大全」を続刊しています。
本稿のテーマは下記です。
「チャフ(薄皮)を飛ばす」ダンパー全開は、チャフ飛ばしのほかに、「比熱差」によって生じすやい「煎りムラ」を防ぐ目的もある----つまり「チャフ捨て」は同時に「比熱の調節」を行うことである
「珈琲大全」
4-4 さまざまな焙煎法
2 混合焙煎
98ページ下段6行目以降
「なぜ煎りブレが起こるのか」について、もう少し解釈してみます。
その前にもう1か所引用します。
「珈琲大全」
4-3 焙煎機の使い方
■焙煎の準備
90ページ下段20行目以降
もしすべての生豆が1粒残らず同じ状態の豆なら、時間を短時間にするだけで水分抜きはうまくいくはずです。
この「チャフのはがれるタイミング」とは、生豆の表面の水分だけが乾燥したタイミングを想定できるということです。それと「釜の中にたまった水分を、それだけ追い出す」ことになります。すると生豆からはさらに水分が抜け、水分抜きが短くなります。そのタイミングとしては、チャフがはがれた時点というのが、生豆の中心への影響が少ない段階で、水分抜きを効率よくするタイミングとして適切なのです。
「チャフ捨て」ダンパー開度をこのタイミングで行うことで、生豆1粒1粒の焙煎過程の「足並みがそろう」ことになり、比熱差の調節になることで、煎りムラを防ぐことになる。単品でも「含水量の多い豆少ない豆、粒の大きい豆小さい豆では、同じ熱量を加えても、比熱差があるため煎りあがりに差が出て、ムラができてしまう」のだから、単品の焙煎についても、「チャフ捨て」ダンパー開度を行うことは「比熱差を調節し、煎りムラを防ぐこと」に効果がある、といえます。
「煎りムラ」が極力解消されるように焙煎が進められれば、「煎りムラ」による「煎り止め」の判断の過誤による「煎りブレ」の防止に役立ちます。