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コーヒーとカフェのソルフェージュ教室を計画する

旋律ひとつ表現するにしても、ドレミの音階と句読点になる音価を習得しておくことが必須になります。
コーヒーの技術を学ぶ上でも、同様の基礎があります。
下の音階のハンドサインや、音価の組み合わせで学ぶリズムカードは、目に見えない音を視覚化しているといえます。
音楽ではこれを遊びに取り入れて、声に出したり体を動かしたりしながら、身体に刷り込んでいきます。

得手でも好みでもなかった、いや苦手で嫌いだった「コールユーブンゲン」。

これを「そーらしど」「そーみン」「そーふぁみれ」「みーどン」「みーそらし」「どしらしー」「らしどれらし」「そーウン」と歌うようにしていきます。1小節の合計が「2/4」になるように「1/4+(1/12+1/12+1/12)」「1/4+1/8+1/8」----。
「そーらしど」はドレミの音階を順番に上昇して、4階上がっているのですが、その中の「らしど」の「らし」の音の高さの差と「しど」の差が同じでなく、「らし」は「そーら」と同じだけ差があります。2階へ上がるまでに中2階があります。

こうしたソルフェージュで習得する基礎によって、楽譜を読み、読解し、再現し、表現していきます。
コーヒーの場合、原料生豆の様々な情報から、原料の特性を読解し、商品として設計するために、必要な基礎に例えてもよいでしょう。
一度習得して慣れてしまうと、普段はさりげなくこなして、理解できない人がいるなどと思いもよらなくなります。

下図のソルフェージュ効果について。わたしにはできないことばかりで、さりげなくできる人に会うと格差を痛感します。

「楽典とソルフェージュの違いは何ですか?」との検索には、次のよう。

楽典は楽譜を書くための基礎知識です。 ト音記号の位置から始まって、簡単な音楽理論や簡単な和声を学んでいきます。 一方のソルフェージュはクラシックの基礎能力とも言われ、主に楽譜を見て歌うことでクラシック特有の感覚を身につけていきます。

旦部先生の「コーヒーの科学」「珈琲の世界史」を「楽典」とすると、コーヒーを様々な形態に変化させながら、各過程で表現する特有の能力があります。
様々な形態段階のコーヒーを読解し、それを構築するスキルを習得します。
コーヒーは広い意味の茶の仲間の飲料ですから、味風味として表現されますが、旋律が前述のように視覚化された情報として表現され、それを読解し、歌って聴覚で感受できるものにするのと同様に、味覚嗅覚で感受できるものにするための基礎を習得します。

ワインを例にするなら、有名な文庫本があります。
「ジャンシス・ロビンソンの世界一ブリリアントなワイン講座(上・下) 」

上巻は(1)ワインを飲むひとのスキル、(2)ワインを製造する方法、(3)原料のぶどうそのものについて。余計なことが書いてありません。

下巻はワイン生産地の地誌。
注意しなければならないコーヒーとの違いは、ワインは生産国と消費国が同じケースが多く、生産地で抜栓すれば飲める状態の完成品まで作りあげます。コーヒーは生産国と消費国が乖離していることが多く、生産国では焙煎前の生豆を製品として輸出します。
「世界一ブリリアントなコーヒー講座」には第3巻として、「焙煎、抽出」が必要になってきます。

コーヒーを学ぶ上で、同様の参考書を探すとどうなるでしょう。
学ぼうとするひとが、目的にあったコーヒーのソルフェージュ、コーヒーのコールユーブンゲンにあたるものを探す必要があります。
ソルフェージュ、コールユーブンゲンは、楽譜を読み声に出して表現できるようにするためですが、コーヒーの場合、焙煎抽出を考慮すると、楽器の初級メソッドなど並行するかもしれません。
ハノン、アルテ、ヴェルナー、カルカッシ‥‥。

ソルフェージュに通うと、豊かな音楽鑑賞を楽しめるようになりそうです。
これに歌唱や楽器演奏が加われば、立派なアマチュアです。
こうした基礎の共有を進めたことで、アマチュアが育成されました。
同様の基礎習得とその共有を経た先に、プロがいます。

コーヒーの分野も同様です。
まず自分自身が基礎を習得し、その基礎を共有することでお客様を育て増やしていきます。西洋音楽の方法が有効と思うのは、市場を拡大してきたからです。狭い地域の伝統文化を世界中に広めました。

コーヒーもカフェも日本にはなかった輸入文化です。伝統がないものを理解するためには、語学習得のような没入姿勢が大切です。仮に身についたとしても、忘れないよう衰えないようメンテが必要になります。

大人になってからドイツ語圏に住んだ経験のある日本人が、慣れ親しんだドイツ語を維持するために定期的に集まって読書会を開くという例に接したことがあります。会がスタートしたら、公用語はドイツ語です。中心メンバーには日本に長く住むドイツ人がいます。忘れてしまった言葉、言い回しもすべてドイツ語で質問し、お互い助け合いながら雑談しているうちに、しまい込んだ抽斗の場所がわかるようになります。

コーヒーとカフェのソルフェージュを講座として検討すると、基礎講座と同時に、すでに基礎を習得したひとたちのための、前述のドイツ語の読書会のような集まりを思い起こします。

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