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笑うバロック展(528) 今は昔ハープ弾きながら

エステル・ラマンディエ。1985年ころだったかしら。彗星のごとく、という感じ。タンゴか何かのCDまでだしていたかと。

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エステル・ラマンディエ Esther Lamandier はフランスのソプラノ兼ハープ奏者であり、初期の聖歌と単旋律音楽の探求で知られています。彼女は頻繁にハープ、ヴィエル、ポジティブオルガンを伴って弾き語りします。
ラマンディエは1946年、フランスのプロヴァンス=アルプ=コートダジュールのサンラファエルで生まれました。彼女の父親の家族はルーマニアのピアトラ・ネアモ出身のユダヤ人です。彼女は、アッシリアとセファルディのユダヤ人の歌、およびスザンヌ・ハイク-ヴァントゥーラのヘブライ語聖書の聖歌の再現のスペシャリストです。

以下は、森川久美のラマンディエ紹介。たしかに森川作品に登場しそうな雰囲気を醸しています。

もうずいぶん前になりますが、エステル・ラマンディエの「ロマンセ」というレコードを買いました。エステル・ラマンディエはフランスのアーチストで、中世のハープやひざの上にのせて使うオルガンや古いヴァイオリンやリュートを演奏しながら、中世の歌を歌います。この「ロマンセ」はセファルディといわれるユダヤ系の吟遊詩人の歌を集めたものです。
ほかには「聖母マリアのカンティガ」(13世紀頃のスペインの聖母頌歌集)や「デカメロン」(中世イタリアの世俗的歌曲)を持っていますが、今は「旧約聖書」を歌で唄っていると聞きます。この人もなかなかCDが手に入りにくい人です。「セファルディ」は「スペイン系ユダヤ人」と訳すようです。カスティリアとアラゴンが合併してイスパニアができたのちの1492年、イベリア半島のキリスト教による浄化をめざすイスパニアは、キリスト教に改宗しないユダヤ人は国外追放にするという命令を出しました。
多くのユダヤ人たちが住み慣れた土地を追われ、財産を捨てて、北アフリカや東欧、「新教」の英国やオランダに新しい安住の地を求めて散っていきました。彼らは住みついたその土地でスペインでの習慣や伝統を守り続けて、ラマンディエもその系譜につらなる一人のようです。中世歌謡の中でも「セファルディ」という分類があるように、中世ヨーロッパの音楽にはユダヤ人音楽家が大きな役割を果たしたようです。
中近東の音楽の影響を受けたどこか東洋的な旋律、マイナーでもの悲しく抒情的でありながら、豊かな音楽性に溢れた「セファルディのうた」を聴いたとき、こういう「音楽」もあるんだなあと静かなショックを受けた覚えがあります。

2000年代のハナ。いまは偉大なバロックソプラノの代表。この人はエレキギターをかき鳴らしてシャウトしてましたな。

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そして、この数年。才人ニコラ・アクテン氏。

Nicolas Achten(ブリュッセル1985年生)は、ベルギーのバロック歌手、リュート奏者、チェンバリスト、ハープ奏者です。ブリュッセル王立音楽院とハーグ音楽院を卒業しました。彼はとりわけバロックの様々なマスタークラスを受講。今日、彼は歴史的慣習にならって、さまざまな楽器で伴奏する数少ない歌手です。彼は2004年からたくさんのグループと共演。ラルペジャータ、ラ・フェニーチェ、ラ・プティット・バンド、アンサンブルオーソニア、レザグレマン、レ・タラン・リリク、イルフォンダメント、ミュージシャンドルーブル、イルセミナリオミュージカル、ルポエムアルモニーク。17世紀の声楽に特別な関心を持っていたため、彼はスケルツィ・ムジカーリScherziMusicaliを設立しました。このアンサンブルは、あまり知られていない作曲家の作品を掘り下げます。バリトン歌手としては2006年のシメイ・バロック声楽コンクールで優勝。

ディスコグラフィーも。
カッチーニ「エウリディーチェ」。サンチェス、イタリア語による世俗声楽曲。フィオッコ プチ・モテ。
マツォッキ「アドーネの鎖」
ベルタリ オラトリオ「ラ・マッダレーナ(マグダラのマリア)1663」
スカルラッティ、室内カンタータ。コロンナ、2声、3声のためのモテット。

モンテベルディの「オルフェオ」の「力強い霊、恐るべき神よ」の演奏。巧みにうがいしながら、ハープのソロも----竪琴ではないけれど、本物のオルフェオじゃ。この後、ご本人の風貌も貫禄がついていきますが、ハープがタイの金箔の仏像のように。

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アクテン氏には、フィオッコやスカルラッティの哀歌をレパートリにすることがありそうで、楽しみ。

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