協奏曲の校訂譜とカデンツァ

グラウンのガンバ協奏曲はいくつか校訂楽譜がでていますが、作曲家本人、当時の演奏家の誰か、現代の校訂者や協力演奏家などのカデンツァはついているのかしら。
バロックでは通奏低音のリアライズが、されているのが現代の校訂譜という印象でした。例えばテレマンやビバルディならソリストは書かれたソロパートを装飾を加えながら弾くだけ、でよいはず。バロック音楽ではオペラアリアの復活に伴って、長いカデンツァが作曲されるようになったと思います。(ジェラール・レーヌはインタビューで確か装飾を書き込んでいると言っていました)
グラウンの協奏曲は、図書館所蔵の楽譜があるとしても、ごく一般には通奏低音の楽譜が書かれているか数字を奏者が実音化できるか、そしてソリストのカデンツァが書かれているか奏者が作曲できるか即興できるか、という条件をクリアしないと演奏会にはかけられません。

ちなみにオランダの楽譜販売のサイトを見ると、ビットリオ・ギエルミのエディションの協奏曲がリストアップされています。
(1)バイオリン、ガンバのための協奏曲ハ短調 GraunWV.A:XIII:3(任意に2ホルン付き弦楽と通奏低音)
(2)ガンバ・ソロのための協奏曲ニ長調 GraunWV.A:XIII:4
(3)ガンバ・ソロのための協奏曲へ長調 GraunWV.A:XIII:8
(4)ガンバ・ソロのための協奏曲イ長調 GraunWV.A:XIII:11
(5)ガンバ・ソロのための協奏曲(第2番)イ短調 GraunWV.A:XIII:14→写真の赤い表紙の楽譜
(6)ガンバ・ソロのための協奏曲イ長調 GraunWV deest

古典派以降では、誰が作曲したカデンツァを使用するか。
モーツァルトのニ短調ピアノ協奏曲ならベートーベンのが有名です。ブラームスのも。こうした連綿と残るカデンツァは後輩たちの好みの表れで、普遍的な名曲の証拠といえます。反対に作曲されたカデンツァが少ない場合、反対の証拠とみられても仕方ありません。
ベートーベンやブラームスのバイオリン協奏曲は今でも誰のカデンツァを使うか話題になります。新しいカデンツァが作曲されることも未だあります。ベートーベンはピアノ用編曲の際カデンツァも作曲したため、それをバイオリン用にアレンジしたものが使われる場合もあります。様式感を無視した勝手な作曲ではなく、作曲家の意図に忠実といいたいのかしら。
モーツァルトの全曲録音でミツコはカデンツァを自作していたと記憶していますが、インタビューでほとんどは当時使われたピアノの音域を保持したといっていました。

ちなみに、カデンツァ。
ウィキ検索によると。
古典派の独奏協奏曲にあっては、通例、第1楽章のソナタ形式の終わり、コーダの部分で、一旦オーケストラによる合奏を中断する。その後、独奏楽器に自由な演奏をさせたあと、再び合奏となり楽章を終結する。
元来、独奏者が自由に即興的に演奏していたが、やがてカデンツァを楽譜に書き残し、またその楽譜に従って演奏するということが行われるようになってきた。こうして、ひとつの協奏曲に異なる複数の作曲家がカデンツァを書くようになり、現在では演奏家はその中から選んで演奏するのが一般的である。
カデンツァは派手な技巧を凝らしすぎると協奏曲全体との均衡を崩すことになり、逆にあまり簡素だと芸術としての主張意欲がないと謗られる。

作曲されたカデンツァというと、ロカテルリの作品に「カプリッチョ」というのがあります。
ちょうどCDがでたらしく宣伝が読めます。----「18世紀のパガニーニ」、ピエトロ・アントニオ・ロカテッリによる難物『24のカプリース』(カプリース=カプリッチョの仏語)24曲、全曲一切カットなしの世界初録音盤の登場です!ロカテッリはバロック後期の作曲家ですが、なによりもヴァイオリンのヴィルトゥオーゾでありました。その腕前はコレッリらを凌いだと言われており、「18世紀のパガニーニ」とも呼ばれます。人々がロカテッリをそう呼ぶきっかけとなった作品のひとつが「ヴァイオリン技法」と題された協奏曲集。これは正確には「ヴァイオリン協奏曲12曲、およびその独奏カデンツァとしての無伴奏のヴァイオリンのためのカプリッチョ24曲」と題された曲集。12の協奏曲に対して24曲のカデンツァ(カプリッチョ)が存在するのは、それぞれの協奏曲が3楽章(急-緩-急)から成り、その第1、3楽章に対してカデンツァ(カプリッチョ)が書かれたから。このカプリッチョ24曲は、「謎のカプリッチョ(カプリース)」とも呼ばれてきた難物。現代でも演奏不可能に近い超絶技巧が含まれている上、当時の楽器の指板の長さでは不可能と思われる音域が含まれているなど、いくつかの疑問点があるのも事実。1733年当時に出版された楽譜を、アルバート・ダニングが監修した校訂版がショット社より2002年に出版されています。この録音は、忠実に楽譜を再現、これまで行われてきたカットなどを一切せずに全曲録音した、という意味で世界初録音といえます。曲集をしめくくる最後のカデンツァも、ロカテッリの指示どおり、演奏者自身の創造によるもの。----

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ペトルッチという楽譜サイトで、グラウンの項を開くと、3ガンバ協奏曲が掲載されていました。
パンクの録音したニ長調。
ギエルミがハーゼルベックと録音したイ長調。ガルデリーノとの別なイ長調。
さらに2つのガンバのためのトリオソナタト長調も。これは、ギエルミとコワンの録音があります。

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