笑うバロック展(157) ダニーデンコンソートのドルメッチワークショップ復元

シリーズ「古楽の起源」、「アーノルド・ドルメッチと古楽器(ロンドン、1896年)」----アーノルド・ドルメッチは、1891年から1900年にかけて開催されたロンドンのコンサートのシリーズで、16世紀から18世紀にかけて使われなくなった楽器の修復と演奏を始め、イギリス人のレパートリーを取り戻しました。 ダニーデンコンソートは、1896年2月18日にドルメッチワークショップで行われたコンサートを復元しました。これには、H・ロウズ、J・ジェンキンス、B・マルチェロ、J・Ph・ラモー、およびH・パーセルの作品が含まれます。2019年1月9日フアンマーチ財団、マドリードでの演奏会。

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ドルメッチとその家族の資料、わたしには、ラファエロ前派やモリスたちとの関わりから、ちょっと異様に見えます。ギリギリの境界線上のバランス感覚の異様。
やや無理がありますが、例えていうなら、「めぐり逢う朝」のサントコロンブ家の前にベルサイユの楽団がいる風にみえないか、見えないですねえ。それでもどこか倒錯的に映ります。
それでふとテキサスのレザーフェイス家の写真を並べてみました。フリークスのサーカス団の方がよかったかしら。
ビスコンティも想像したので、倒錯した婚礼の写真。「家族の肖像」の集合写真がなかったか探したのですが見つからず。
そのうち辿り着いたのが向田邦子でした。それぞれの本音を押し殺した、それでいて分かち難い「阿修羅のごとく」の「家族の肖像」。全員が中心から反対の違う方向を見ているのも、全員が同じ中心を見ているのも、似た写真に見えるものです。

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ドルメッチの一族とその活動について検索すると、古楽器のアマチュア向け復興という意義は大きい、しかし現代の発展し先鋭化したり洗練された古楽とは当然ながら一線を画する。19世紀末のイギリスで独自の音楽文化の存在を再発見した功績は認められる、という感触ですか。楽器製作もオリジナル楽器というには違和があり、しかしそこから育った後代の優良な楽器製作家の揺籃にもなった、と。
あと物珍しさが優先される見世物的要素、の評価の問題。木下サーカスとシルクドソレイユの違いというか----。そしてバロック音楽の、または古楽の復興というのは、19世紀的な芸術家伝説の信仰に対する対峙から出て、17、18世紀の極まった技術者たちの芸能が親のひとりだと認知しようと、という文化の血脈をとらえなおすものでした、きっと。

参考まで。映画の中のサントコロンブ家のコンサート。

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ドルメッチ・ファミリーは、テリー・ギリアムあたりに映画化させたら、どうかしら。ティム・バートンの方がよいかしら。トラップ・ファミリー物語の19世紀末イギリス版、おどろおどろしいものになるかも。
「屋根の上のバイオリン弾き」も思い出すひとつです。

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