笑うバロック展(560) 困ったバッハ遺産

----1740年頃にライプツィヒでヨハン・セバスチャン・バッハ氏が設計し、ツァハリアス・ヒルデブランド氏が製作した「ラウテンヴェルク」を見て聞いたことを覚えています。通常のチェンバロよりもサイズは小さかったが、他の点で同様であった。2段のガット弦と、金属の小オクターブがありました。通常の設定では、リュートというよりはテオルボのように聞こえたのは事実です。しかし、コルネットストップ[4フィートの真ちゅう製ストップ]と一緒にリュートストップを引くと、プロのリュート奏者をだますことができます。   彼の死の時、バッハの所持品の目録は、彼がそのような楽器(ラウテンヴェルク)を2つ、そして3つのチェンバロ、リュートとスピネットを各1所有していたことを明らかにしています。

最初のジャケットのデザインに従って製作された楽器が存在し、音も聴けます。ただリュートの箱を模したチェンバロというのは根拠が弱そう。その後録音に使われる楽器は外見はチェンバロと変わらない場合が多いみたい。現存しないのだから、放っておいてあげればよいものを、ほとほとバッハ関連は、つつく重箱の隅が豊富です。

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ヘインデル盤のレコ芸輸入盤短評がみつかったので。

ラウテンヴェルクによるバッハ作品集(リュート組曲ホ長調BWV1006a/同ホ短調BWV996/パルティータハ短調BWV997/フーガト短調BWV1000.他)キム・ヘインデル(ラウテンヴェルク)
J • S・バッハの遺産目録は多くの楽器を含み,その中に2台の「ラウテンヴェルク」がある。この楽器はバッハ所有のものも含めて1台も現存せず,絵画や図像も残されていないため,幻の楽器の状態がつづいてきた。ところが最近の研究から,「ラウテンヴェルク」(英語では「リュート・ハープシコード」)の姿は,かなり明確になってきた。それはガット弦(時に真ちゅう弦で補強された)をもったハープシコードの一種で,リュートの響きを模倣するために考案され,15世紀の終わり頃からイタリアやドイツの音楽文献に登場する。しかし数多く製作されるようになったのは, 18世紀にドイツの製作者が手がけてからで,バッハは有名なオルガン製作者ツァハリアス・ヒルデブラント(バッハが親しかったオルガン製作者ゴットフリート・ジルバーマンの弟子)から購入したことがわかっている。
近年,古楽器のレプリカが製作されるようになってからも,「ラウテンヴェルク」には,わずかな試みしかなされなかった。最も新しいと思われるのがこの録音に使われた楽器で,アメリカの著名なハープシコード奏者ウィラード・マーティンが,演奏者キム・ヘインデルの協力を得て製作した。この楽器は2段鍵盤で,ユニゾンのピッチの2組のガット弦と,オクターヴのピッチの1組の真ちゅう弦を用いたハープシコード・タイプだが,響板やケースは通常のハープシコードより軽く作られている。筆者の聴いた感じでは,ガット弦のためか音の立ち上がりは通常のハープシコードよりやや遅いが,響きも柔らかく,豊かで暖かい感触がある。ディスクにはシュミーダーの『バッハ作品目録』でリュート曲に分類されている曲のほとんど(BWV1006a,1000,997,998,996) が収められているが,著名なリュート奏者ナイジェル・ノースがライナー・ノーツで述べているように,これらの作品が元来リュートのためでなく,「ラウテンヴェルク」のために書かれたことがよくわかる。(高橋昭・音楽評論)

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