「ついに完結」だと思うグラウン、ガンバ協奏曲全曲
1987年ジークフリート・パンクのニ長調協奏曲録音に始まったヨハン・ゴットリープ・グラウンのビオラ・ダ・ガンバ独奏のための協奏曲、おそらくは全7曲。最後に残されていたハ長調協奏曲が2015年6月に若手のロバート・スミスによって録音され、ガンバ演奏史上、同時にグラウン演奏史上、28年越しの偉業達成といってよいかと。あとはどなたか単独で全曲演奏(あるかもしれませんが)、録音の偉業を成し遂げていただきたいものです。
できればグラウンのガンバ曲全曲も聴きたいものですが。
ビバルディやボッケリーニのチェロ協奏曲はまとめて聴くことが可能です。バッハのチェンバロ協奏曲なら何種もでているのに。今やW.F.バッハ、C.P.E.バッハのチェンバロ協奏曲も、タルティーニのバイオリン協奏曲も聴けるのに。
構成は思ったよりシンプルなスコアです。Vn1+Vn2+Va+Vdg-Concertante+BCの5段。
タルティーニ所縁のビルトーゾな技巧と、バロックのオペラアリアと古典派協奏曲の間に位置するカデンツァ。イタリアを超えてやってきた協奏曲が、ベルサイユで成熟したビオールと出会い、ベルリンでスパークしました。ハ長調協奏曲を収録したCDは、グラウンのほか、ルクレールのバイオリン協奏曲、WFバッハのチェンバロ協奏曲を併録しています。以前ルクレールの協奏曲全曲をだしたスタンデジはやや技巧が物足りない印象でした。WFバッハは最初にロンドンバロックの録音で聴きましたが協奏曲というより室内楽でした。
バロック音楽の埋もれた楽譜を復興する運動がひと段落して、個人的印象としてはモーツァルトのバセットクラリネットの楽器が概ね特定されたあたり、忘れられた楽譜、楽器がというだけでは話題性が不十分になっていった、その過程でオペラを中心にバロックの声楽が注目度を増し、バロックオペラの声楽(カストラートのレパートリなど)の様式が再構成されるにつれて、声楽に学べといわれた器楽が実はどんなものだったのか----その交差点に、わたしはグラウンのガンバ協奏曲を順に聴く幸運に恵まれました。
ベルサイユのビオール音楽とは好対照をなす、現代の演奏家にとって両立の、あえて言えば難しいレパートリとしてベルリンのガンバ音楽が台頭してきた、そんな印象です。現代に活躍するプロであれば、ルネサンスコンソートから、バロックの通奏低音、室内楽、様々な様式のソロ作品、その中で弦楽だけとはいえオケと協奏するソロ曲の充実は、楽器にとって本当に成熟を迎えたことを意味するように思います。
楽譜の校訂出版も進んでいる様子。まずはうれしい状況です。
併せて情熱のあるプロの奏者も育ち、あとは----聴き手?かしら。拙いですがここに一人、見守ってた聴き手おります。(クラウドファンディングで全曲演奏会の出資者を募集でもしますか----ちょっと冗談が過ぎますか)