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音楽の感想 クラシック音楽鑑賞が趣味になったとき

クラシック音楽鑑賞が趣味です、といっていますが、あまりにたくさんの曲があるので、聴いたことがない曲はまだまだたくさんあります。
この日聴いたベートーベンの有名なピアノ協奏曲も実演に接するのは生まれて初めて。愛読していた吉田秀和批評に実演に接していないので確かなことはわからない、という展開が多く見られました。その伝でいえば、わたしわからないだらけです。ベートーベンのピアノ協奏曲をひとつも聴いたことがないなんて。
お気に入りブラームスのニ短調協奏曲は、意を決して聴きに杉並まで足を運んだことがある、それくらい。

16時35分から 
ベートーベン ピアノ協奏曲第4番ト長調作品58
高木早苗(ピアノ) 高山美佳(指揮)音の泉管弦楽団

演奏者を知っていた、会場が近かった、気兼ねなくスケジュールがとれた、そして安い、「いかねば」です。
聴きながら、いろいろと思い出しました。涙が浮かんできました。
ひとつは地元上野学園古楽研究室の発表に自転車で通ったこと。当時こんなにも身近にある文化に感謝したものです。
もうひとつ。
ベートーベンのト長調ピアノ協奏曲の思い出。もう40年も前、漠然とバックハウスの弾く協奏曲全集のレコードを聴かせてもらいました。何回かステレオで再生しているうちに、突然「あれっ」と気がついたことが。何か雰囲気が違う。ピアノから始まる冒頭はすぐわかる、短く激しい第2楽章がうるさい。そうか、ベートーベンは自分もふくめて違うことがしたい、と作曲している。しかし、それらは「あれっ」ではない。「あれっ」の正体は、第3楽章が始まるとピアノソロとチェロが絡むところでした。当時、解説にも特に書いてありませんし、チェロを褒める評もありません。レコードによってソロに聴こえなかったり。

いまや楽譜付きの動画ありがたや
「あれっ」はこれこれ

わたしは、後々そこからベートーベンのチェロソナタを聴くようになったり、ブラームスの変ロ長調協奏曲のチェロに感銘したり。鳴り響いている音の塊から、何かを取り出せた「聴き取った」と感じました。
いまにして思えば、それ以降、注意深く聴き耳を立て、何かを聴き取ろうと意識し始めたのでした。解説に書いてあることを見つけるのでなく、読み取り発見したことを解説で確認する、そして回答が見当たらないとさらに調べたいと欲するようになりました。
そのとき、自分の「聴き方」が定まったので、以来現在まで機会があるごとにクラシック音楽を聴く、趣味はクラシック音楽鑑賞です、といえるようになりました。
ギャラクシティ下町音楽ホールは、バブルの最後期に計画された様子。都営住宅に隣接しています。子供用の屋内施設のおかげか半端のない使われた感があり好感。
なんとなく、チェロの音がよく聴きとれそうな席に座り、チェロ奏者を確認し。
いろいろな偶然の幸運の協奏曲、ひとことでいえば「転生したらロプコヴィッツ侯爵だった」。ウィキ検索にある「完成の翌年・1807年の3月にまずウィーンのロプコヴィッツ侯爵邸の大広間にて小規模オーケストラを使って非公開ながら初演」に臨場したような気分でした。

ピアノの高木さんについて。主役で音を出している中心にいるのに、彼女が真摯な傾聴者のようでした。音を発することで、共鳴する聴き手の中の音を聞き取ろうとする、そういう音の出し方と演奏のひとです。わたしは転生ロプコヴィッツになりましたが、聴衆がそれぞれの連想の中で、クラシック音楽を自分に引き寄せて聴いていたと感じます。熱狂させられたり、沈思させられたりする演奏家は動画にあふれていますが、音楽との出会いや対峙の瞬間を想起させてくれることは珍しいのではないかしら。

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