笑うバロック展(180) 古楽演奏史上最大のミステリー「リフキン事件」
考えようによっては、ドレフュス事件とか、ゾルゲ事件、下山事件みたいな大きさ重さがあります。いまだに「闇」を抱えていますし。音楽やバッハに関心がない一般の人たちの「裁判員裁判」なら、明解な事件だと思いますが。夜「贖罪の奏鳴曲」のドラマ化を鑑賞しながら、なぜか頭の中でこの事件が思い出されました。
ジョシュア・リフキンという名前もすでにちょっと怪しげです。ユダヤ系に多い目の名前。録音された演奏に対する概ねの評価は「リフキンのロ短調ミサ曲は、OVPPによる世界初録音の意義に集約される」というものが圧倒的。ついでに「なお検討が必要」みたいな注意書きも。カール・リヒターという名前とはやはり対極でしょう。1981年の学会発表と録音から38年。2021年に何か記念行事が行われるだろうか。個人的にはドリアンで録音したカンタータなどは、かなりレベルが上がって聴こえ、再録音の可能性はないのかしら、とも。いまだにバッハの研究や実践は続けている様子なので。
たしかに8人で事足ります。100分ほどを8人で歌い継ぐというのは、まあ不可能ではないでしょう。日本盤解説によると「最終曲は、第1部<ミサ>の第6曲<グラティアス> を、ほとんどそのまま用いたのである。ここで初めてリフキンの指揮する8人の声楽陣は1声部2人づつの4部<合唱>として登場し、壮麗な美しさの中に、感動に満ちてミサ曲をしめくくっている」。どうもここまでやった例はないか、ほとんどない様子。
ポジティブオルガンと独唱者だけで一部の楽曲を聴いたことがありますが、説得力がありました。バッハ自身が管弦と鍵盤を適当に移し替えたりしていますから、任せられる8人の好い歌手がいれば、後のすべての管弦楽を、バッハ自身なら自ら鍵盤に移し替えて演奏できた、でしょう。