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和歌の映画、和歌と映画

大河ドラマ「光る君へ」で、いよいよ「源氏物語」がエンタメとして物語られ、そして冊子が製作され、しました。
「薔薇の名前」の写本製作所とは、対照的です。

紫式部日記は鎌倉初期のイラスト付き絵巻物として現存するようです。
「草燃ゆる」でしたか、藤原定家(1162-1241)が苦しみながら和歌をひねり出すシーンがあったかと。定家も200年前の平安貴族の文化は想像するしかなく、その重要な源泉のひとつが「源氏物語」であったらしい。教養深い平安貴族なら自然に口をついて出てくる和歌も、定家の時代は調べて、想像して苦しみながら「創作」し書くものに。

紫式部日記絵巻の「五十日の儀」

親王誕生で催された「五十日(いか)の儀」の一場面。
「いかにいかが数えやるべき八千歳の あまり久しき君が御代をば」(藤式部)「あしたづのよはひしあらば君が代の 千歳の数も数え取りてむ」(道長)。
今回の大河ドラマでは、源氏物語は写本を前にして、役者は現代語訳で読み下しています。たびたび登場する和歌は、節を付けて歌うのでなく、さらりと読みあげます。そしてほとんど訳を提示することがありません。まあ小道具のひとつという体です。

1957年4月29日に公開されたカラー映画「明治天皇と日露大戦争」は、明治天皇の和歌が、エピソードごとにミュージカル映画の歌唱のように差し挟まれます。

 「国をおもふ道に二つはなかりけり いくさのにはにたつもたたぬも」大意:銃を取り剣を手にして、国の為め、戦場に向ふもあらう、また家に留まって、 国の富其他公務に勉めて居るものもあらう、花々しく戦に出て、国に尽すのは実に立派 で、其れに比べて国で平常の様に仕事をして居るのは不忠の様に見えるが決して左様で はない、戦場に立つも家に居るのも国を思ふ道に二つはないぞ。

さて、この「明治天皇と日露大戦争」を意識したのでは、という映画が1963年モノクロ映画「にっぽん昆虫記」です。
劇中左幸子が演じたトメの和歌は、なかなか検索ではでてきません。ひとつだけ。

愛してるぅ 全ての人にぃ 裏切られ つらき浮世を 一人ゆくわれぇ~

主人公トメが刑務所から出所してくると、旦那の情婦の座には娘がおり、恋人との農業移住の資金を稼いでいました。たしかラスト近く、お腹の大きな吉村実子演じる娘が恋人と溌剌と農業を励む姿が。
河津清三郎がどこかの社長で、母娘に手を出すのですが、母にあった自分に対する依存が娘にはなく、もはや涼しく逞しく資金が貯まったら去っていきます。

「にっぽん昆虫記」は公開当時「成人映画」指定されたそうです。
NHK大河今作は、コンプラ喧しい中で男女の関係をおおらかに描いています。
NHKは大河前の「ダーウィンが来た」で、ありとあらゆる生物の生殖行動をこれでもかこれでもかと見せます。先日は周期ゼミの大発生。NHKはサブリミナル効果でもねらっているのかもしれません。





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