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笑うバロック(161)  新久美(あらた・くみ)さんを知っていますか

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わたしは、ラモーの「ゼフィール」に接したとき、素晴らしいと感じつつも、なんて遠い世界だろう、と感じました。これを「適切に聞く」ためにはずいぶん深い教養が必要だと思いました。それと日本人のわたしが「聞く」ための日本人としての「柱」ともいうべき、音楽を聴く上でのアイデンティティが必要だとも感じました。
その東京の夏・音楽祭の「ゼフィール」の公演にディアーヌ役で参加された新久美(あらた・くみ)さんというソプラノ歌手がいます。津和野出身の方で、芸大で博士号をとられました。時期的に周囲の同僚(小池久美子さんとか野々下由香里さんとかでしょうか)より遅くベルサイユのバロックセンターに留学されましたが----結局体調を崩して帰国し帰郷、活動も休止されたと聞きます。よく実演に接したので、近しく感じており、いまどうしているのでしょうか、心配です。ささやかでも郷里で活動を再開しているとよいのですが----。

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わたしが新さんを知ったのは、きっとリュリの「アルミード」の演奏会形式抜粋を聞いたときだったはず。石橋メモリアルホールでコンセールCの公演でした。1986年か87年くらいでしょうか。プログラムを探さないとはっきりしません。ネット検索でヒットするのは、次のようなことです。

1987年、昭和62年4月、山梨古楽コンクール第1回:バロック時代の旋律楽器および声楽で、 第1位を獲得しました。
1988年の「東京の夏音楽祭」のラモー「ゼフィール」のディアーヌ役。
1992年、平成4年、芸大で博士号取得。(論文)フランス18世紀の歌唱装飾の研究:解釈と実践+(演奏)G. カッチーニ「麗しき真紅のばらよ」。

この時期、ミサワホームがクラシックCD製作をしていて、「エレミアの哀歌」を発表。このシリーズはミサワからエオリアンレーベルに引き継がれて4集まで続きました。シリーズ以外にもフランスバロックのソロモテット集も1枚ありました。もしかしたら半分くらいは世界初録音ではないかしら。そもそも当時バロックの「ルソン」のオムニバスシリーズなど世界的に見ても珍しいものでした。そして、並行して上野学園古楽研究室の「17、18世紀の歌唱芸術」シリーズ演奏会に頻繁に登場していました。モンテベルディからラモーにいたる様々な曲を紹介、堪能させていただきました。
ベルサイユに留学してからは----ミンコフスキの合唱団にクレジットされていたりは見かけましたが、ソロ活動は聞かなくなりました。やはりヨーロッパに行くと「上には上」の世界なのかしら、それともやはり語学の壁があるのかしら、と。もっともいまでもレザールフロリサンの声楽に日本人がクレジットされることは、知る限り見たことがありませんが。

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