ハフの「協奏曲」イサーリスの「奏鳴曲」(2013年12月記)

ブラームスはおそらくすべての作品が相性が合うはず----勝手にそう思っていました。それでもピアノ協奏曲は縁が薄かったのですが、ハフの素晴らしいのが届きました。スタインウエイだと思いますが、ピサロが弾いていたブリュットナーみたいな音に聴こえます。蓋がないかのような。リベラーチェのボルドウインみたい?でも音の粒粒がよく聴こえます。オケも大袈裟に聴こえないけれど、軟弱でなく柔軟。ピアノ協奏曲と思って聴けばそう聴こえ、ピアノ付き交響曲と聴けばそう聴こえます。もっとも「協奏曲」は「協奏」するのであって「競争」するわけではないのでした。その意味ではブラームスはどんな時も「協奏」した曲作りかも。ピレシュ、ディメイ、ワンのトリオのときと同様の琴線感触でしょう。ラフマニノフのハフとは全く違った感触。 (変な感想ですがハイペリオンてすごいレーベルになりましたねえ感慨。2011年9月から2012年12月までのカタログが封入されていて、90組のリリースCDが掲載されています。そのうち4枚購入しています。イブラギモバのメンデルゾーンやラベル、レーガーのバイオリン協奏曲、ヒューイットのシューマン。ブラームスは歌曲全集が進行中かと思えばシュポアの交響曲全集も並行着々) 共通しているのは、どこか気持ちが楽に聴けること、構えなくて聴ける相性の良さでしょうか。笑いならぬ音楽のツボがあるなら、バッチリという具合。
ニ短調の物々しい雰囲気が昔は気に入っていましたがハフのは物々しくなくて、落ち着いていて変ロ長調と2曲で1つの大曲みたいです。
ラフマニノフの時はハフの思い入れがいっぱいあったのですが、今回はずいぶんあっけらかんとしています。でも、ていねいにゆっくり弾いているように聴こえるのです。気分爽快なブラームスでした。

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(更新)わかりました。ツィメルマンとバーンスタインのdvdがあったので観ました。
ニ短調の冒頭、物々しいというのでなく、弦はヒステリックで休符がカッタルイ演奏なのです。デカダンというほどでもない。ハフのはその意味ではラフマニノフ同様颯爽と潔くまっすぐな演奏です。面白みに欠けるか?思わせぶりなところがないだけで、ブラームスの作品の面白みが味わえます。

(更新2)二三度聴いていて、ふと想像。冒頭の太鼓連打はオルフの「カルミナブラーナ」を思いださせます。と同時に、もしかしたらベートーベンの第九を超克するモガキのようにも。合唱付きを乗り越えようとする合唱幻想曲の発展型だったのかも。

一緒に届いたイサーリスとレヴィンのベートーベンも素晴らしいこと。こういうのがスタンダードになったってことなのかしら、すごいかも。丁々発止、でも「奏鳴」してます。ロストロポービッチとリヒテルのレコードは「奏鳴曲」の時代でした。なかなか洒落た訳じゃないですか。共鳴にかけた訳命名だと思います。 巡り巡ってまたソナタより「奏鳴曲」の時代になったといっていいかもしれません。

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下記は、おそらく発売当時のLPの解説の表紙裏表のコピー。

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ベートーベンの「モルト・センチメント・ダフェット」。イサーリスのニ長調ソナタの第2楽章、こんな指示だったのですね。バッハのガンバのためのト短調ソナタの中間も好きでよく眠ってしまうのですが、それに対応するベートーベンの子守唄のひとつ。フーガのテーマがでてくるとベートーベンが戻ってきた感じ。レビンが、らしく激しく弾けてます。やっと頼りがいのあるプレイヤーになった感じ。


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