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人気急上昇中グラウンのカンタータ

にわかに人気が出てきたみたい----うそ。これで3例目くらい。
でもこのグラウンはあのグラウンです。受難カンタータ「イエスの死」(1755)を作曲したカール・ハインリヒ----とは綴ったものの、「イエスの死」も10種はないと思います。

CHグラウンの「作曲家自身が歌うため」の作品集。
一聴した感想としては、アコ・ビスチェヴィチの実力がよくわかりません。フランスのオートコントルとはずいぶん違う印象です。サンスーシギャラントなアリアなので、華麗な技巧が聴けるのでは----いややはりオペラアリアとは違うものなのでしょう。ラフマニノフが弾くラフマニノフみたいな----かしら。
とにもかくにもグラウンは、わたしが特に相性があうだけだと思いますが、すんなりと最後まで聴きとおせます。カストラートがテーマのCDは冗長に感じる曲がいくつもあります。ヘンデルのオペラアリア集も同様。よく選集に選ばれる曲はやはり、今聴いても飽きがこない印象です。しかし、グラウンの曲はおよそどれを聴いても飽きがこないのです。ラモーのオペラ序曲のようにイントロを覚えられるか、といわれると微妙なのですが。

自らが歌うために作られたグラウンのカンタータ集

カール・ハインリヒ・グラウンはフリードリヒ大王のもとで宮廷楽長を務めた作曲家として知られていますが、歌手としても名声を得ていたことはあまり知られていません。しかしグラウンが亡くなったとき、王が彼への追悼文の中で「あんな歌声は二度と聴けないだろう」と記すほどの声の持ち主でありました。グラウンの声は軽やかなハイ・テノールであり、またテンポの緩やかな曲になると非常に優しく、感動的に歌ったと伝えられています。
このCDに収められた3曲のカンタータはいずれも作曲家自身が歌うために書かれたもの。スロヴェニア生まれのビスチェヴィチがグラウンの声の芸術を現代に蘇らせんと歌いあげます。

「あんな歌声は二度と聴けないだろう」
新さんと野々下さんのクープランのルソン。東京の夏のラモーのゼフィールのプルナール。レーヌのビバルディ。プレガルディエンのアンコールの「夜と夢」。美化された記憶は、好いのだけれど厄介なものです。すぐに思い出して、新しい出会いを邪魔してきます。
ビスチェヴィチは、声域分野としては先輩がいますが、オートコントルというとフランス寄りのひとが多いかしら。中部から東北よりのひとではどうなのでしょう。オヴィティやメーヘレンのような活躍を望みます。
ハイニヒェンとかゼレンカの哀歌などレパートリにならないのかしら。


【曲目】
カール・ハインリヒ・グラウン(1704-1759):
カンタータ『ある日、傲慢にも薔薇は』Superba un di la rosa
カンタータ『わが魂を奮いたたせ』A gitata alma mia
カンタータ『あのやすらぎの谷で』In quel amena valle
【演奏】
アコ・ビスチェヴィチ(オートコントル)
ミヒャエル・ホフシュテッター(指揮)
ゴータ=アイゼハナ・チューリンゲン・フィルハーモニー管弦楽団
【録音】
2023年3月14-17日
ドイツ、クルトゥーアハウス・ゴータ


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