人気急上昇中グラウンのカンタータ
にわかに人気が出てきたみたい----うそ。これで3例目くらい。
でもこのグラウンはあのグラウンです。受難カンタータ「イエスの死」(1755)を作曲したカール・ハインリヒ----とは綴ったものの、「イエスの死」も10種はないと思います。
CHグラウンの「作曲家自身が歌うため」の作品集。
一聴した感想としては、アコ・ビスチェヴィチの実力がよくわかりません。フランスのオートコントルとはずいぶん違う印象です。サンスーシギャラントなアリアなので、華麗な技巧が聴けるのでは----いややはりオペラアリアとは違うものなのでしょう。ラフマニノフが弾くラフマニノフみたいな----かしら。
とにもかくにもグラウンは、わたしが特に相性があうだけだと思いますが、すんなりと最後まで聴きとおせます。カストラートがテーマのCDは冗長に感じる曲がいくつもあります。ヘンデルのオペラアリア集も同様。よく選集に選ばれる曲はやはり、今聴いても飽きがこない印象です。しかし、グラウンの曲はおよそどれを聴いても飽きがこないのです。ラモーのオペラ序曲のようにイントロを覚えられるか、といわれると微妙なのですが。
「あんな歌声は二度と聴けないだろう」
新さんと野々下さんのクープランのルソン。東京の夏のラモーのゼフィールのプルナール。レーヌのビバルディ。プレガルディエンのアンコールの「夜と夢」。美化された記憶は、好いのだけれど厄介なものです。すぐに思い出して、新しい出会いを邪魔してきます。
ビスチェヴィチは、声域分野としては先輩がいますが、オートコントルというとフランス寄りのひとが多いかしら。中部から東北よりのひとではどうなのでしょう。オヴィティやメーヘレンのような活躍を望みます。
ハイニヒェンとかゼレンカの哀歌などレパートリにならないのかしら。