笑うバロック(32) 「21世紀・バロック音楽名曲選100」 [1]-[31]
いよいよ
いよいよ「笑うバロック展」版の「21世紀・バロック音楽名曲選100」です。
きっかけは、先だってのJ.C.バッハ「ああ、私の頭が水で満ちていたなら」です。
まずはリストアップです。
まずは礒山版「バロック音楽名曲鑑賞事典」には登場しない曲を探してみましょう。徐々にお飾りで採用された作曲家の作品を探り、その後は有名作曲家の録音が増えた作品を探します。そうすれば、100曲くらいあるんじゃないかしら。
正規録音は数点あり、それでいてネットでお試し鑑賞できそうなもの。1作曲家1曲だけなら、ネットで対応可能でしょう。
思いつくまま。31件。あと69件、意欲がわきますね。(候補の数が100には足りない、まあ仕方ありません)
1から31
[1]作者不詳 □ 「宗教的倫理的カンツォネッタ集」1677年「人生のパッサカリア(その者、影のごとく去り)」。CD時代の重要なグループ、トラジコメディアの業績を讃えたい。プルハル盤はスリーブにカッコ書きで「anonyme」とあるがランディのアルバムのため誤解を招きやすい。ランディの作品として紹介する動画が増えました。はてさて?
[2]グレゴリオ・アレグリ(1582-1652)作曲 □ 「ミゼレーレ」。ウィキによるとこの作品は「ルネサンス音楽末期の代表例としてしばしば録音されるにもかかわらず、年代的に見ると実際にはバロック時代に作曲されている。この点においてこの楽曲は、様式的に保守的なローマ楽派の代表的作品ということになる」。そして映画「炎のランナー」で有名になったらしい。確かにこの曲は「陰影」というよりは「艶」とか「情感」が目立つような感じがします。
[3]デ・セルマ・イ・サラベルデ(1595頃-1638頃)作曲 □ カンツォーナ、ファンタジア、コッレンテ集1638年。
[4]マルコ・ウッチェリーニ(1603/1610-1680)作曲 □ バイオリン独奏作品。
[5]ヴェックマン(1616-1674)作曲 □ 宗教的カンタータ「何ゆえに都は荒れ果て」1663年ハンブルク。選者趣味でコレクションしている「哀歌」系が多くなりました。しかしオペラと違い、近似テキスト(しかも聖歌に原形の旋律抑揚がある)に付曲され、ある意味器楽的だと。
[6]ストロツィ(1619-1677)作曲 □ 独唱のためのカンタータ「ラメント・わが涙」1658年頃出版か。初めて本格的なプロの古楽歌手をライブで聴きました。大ホールでも十分な音量音程技術、しかしメソッドが違うほかの歌手とは明確に区別できる歌声がイザベル・プルナールでした。
[7]プレイフォード(1623-1686)編集 □ 舞曲集「イングリッシュ・ダンシングマスター」1651年ロンドン。ギースベルトのリコーダー教本のための素晴らしい練習曲を提供してくれたプレイフォード。最初は何者なのか全く無知でした。
[8]ジャック・ガロ (1625?-1690?)作曲 □ リュート組曲集。「スペインのフォリア」など。リンドベルイのLPで。バロックは「変奏」の時代と言えそうです。
[9]サント・コロンブ(1630〜40年頃‐1690〜1700年頃) □ 2台のヴィオールのためのコンセール「哀悼の墓」。1980年から2010年を「古楽CD時代」と考えたとき、それらの演奏家たちが活躍した数本の映画作品は忘れることはできません。数年間連続して製作公開されました。それは新しい人や曲の発見が付随してきました。「めぐり逢う朝」は「モリエール」(1978)とは一線を画していたと思います。
[10]ヨハン・クリストフ・バッハ(1642-1703) □ アルト独唱、バイオリン、3つのビオラと通奏低音のためのラメント「ああ、私の頭が水で満ちていたなら」。
[11]ドメニコ・ガブリエリ(1651-1690)作曲 □ 「チェロ・ソナタイ長調」「同ト長調」1689年出版。チェロは誕生した最初の時から完成していました。
[12]ステファーニ(1653-1728)作曲 □ スターバトマーテル。カトリック聖職者であり外交官としての手腕を認められ南ドイツ中心に活動。20年ほど前から録音増え、か。
[13]ウォルシュ編 □ 「ディビジョン・フルート」1706年、1708年。有名な旋律を装飾変奏を加えた「ディビジョン」形式の曲集。
[14]ルベル(1666-1747)作曲 □ 舞踊のための管弦楽組曲「四大元素」1737年。ベルサイユでは「劇場」「礼拝堂」「厩舎」「食卓」に音楽が。
[15]シャルル・デュパール (1667-1740)作曲 □ リコーダー独奏と通奏低音のための組曲集。
[16]二コラ・マッタイス(マティス)(1670-1713)作曲 □ バイオリンのためのエア集。昔から「スコッチ・ユーモア」という曲が有名でした。イタリア生まれイギリスで没しました。
[17]カロラン(1670-1738)作曲 □ 民族色豊かなハープのための作品群。「古楽CD時代」は「辺境」の時代ともいえそう。
[18]フォルクレ(1671-1745)作曲 □ クラブサン独奏またはガンバと通奏低音のための組曲第5番「ラモー」「ジュピター」1747年出版。
[19]デュランテ(1684-1755) □ 8つの4声部弦楽のための協奏曲集。
[20]ポルポラ(1686-1768)作曲 □ 独唱と弦楽のためのモテット「サルヴェレジナ」。
[21]フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ(1690-1768)作曲 □ バイオリン・ソナタ集作品1。
[22]レオナルド・レオ(1694- 1744)作曲 □ チェロ協奏曲。
[23]ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ(1697- 1773)作曲 □ フルート協奏曲が300曲。ト長調QV5:174(No.161)あたりが。これほど有名でありながら、蔑ろともいえる扱いです。(フルート屋さんは不遇多しですね。ドゥビエンヌ、フュルステナウ、トゥルーとか。)
[24]リカルド・ブロスキ(1698-1756)作曲 □ 「揺れる船のように(Son qual nave ch'agitata )」1734年ロンドン。ハッセの「アルタセルセ」の中でファリネリ歌うアルバーチェのアリア。もちろん映画「カストラート」(1994)で有名になった曲。劇中のヘンデルのアリアよりも覚えめでたい明確な説得力があると思います。
[25]トゥーマ(1704-1774)作曲 □ 「スターバト・マーテル」。
[26]ロワイエ(1705-1755)作曲 □ クラブサン独奏曲「めまい」「スキタイの行進」1746年パリ。
[27]コレット(1707-1795)作曲 □ ミュゼット、ハーディガーディなどが独奏する「コミック協奏曲」。音楽史上の評価がとても低いのに驚きます。「彼の音楽のほとんどは安っぽく取るに足らず、彼の作品の多くは通俗的なメロディが使われている」「彼の音楽はオリジナリティばかりでなく、インスピレーションさえも欠如しがちである。元にしようと借りてきた素材を超えることはほとんどない」。その割には録音は増えています。
[28]オズワルド(1710-1769)作曲 □ 1つもしくは2つの高音楽器と通奏低音のための「四季の歌」1755年、1761年。
[29]クレープス(1713-1780)作曲 □ オブリガート管楽器とオルガンのためのファンタジー、コラール。バッハの目立たない弟子。20世紀のレコード録音における、オルガン伴奏の管楽器独奏の原型に思えます。
[30]キルンベルガー(1721-1783)作曲 □ チェンバロ協奏曲ハ短調。(以前はW.F.バッハ作と伝えられた)。谷戸基岩氏のこだわりを讃えて。
[31]アーベル(1723-1787)作曲 □ 無伴奏ガンバのための「アダージョ・アレグロニ短調」1780年代ロンドン成立か。
考えてみれば、誰が聴いても楽しめる名曲集は、ラジオ普及時代後、レコードなどの大量販売の時代の発想かもしれません。
この30年でネットの普及で、クラシック音楽全般ほぼ無料になりました。フランクフルト放送響みたいにどんどんライブ配信したら、まずライブに集客が増え、実際の演奏会でとりあげる曲はマイナーなものが増えゆくかしら。実演で毎回パッヘルベルのカノンか「四季」を聴かされたら、少なくとも定期会員はお怒りになるでしょう。そして、マイナーな曲でも、演奏する側が気に入っていて、聴衆に思わぬ感動を与えられる曲があったら、ここぞという機会に録音してみる----その結果、J.C.バッハの曲のように録音点数も増えるのかもしれません。