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[中級] 独立と依存、直接と間接

今回は、自分の中での違和感というか疑問を述べているだけで、特に結論もない話になります。


日本語で対義語を並べる場合、一般的に「善悪」「生死」「高低」「遠近」「大小」といった風に、ポジティブなもの、より大きなものなどを先に置くことが多いかと思います。

で、「独立(自立)」と「依存」という対義語を見ると、僕の感覚だとなんとなく「独立」が先で、「依存」が後という感じがします。
しかしドイツ語では、 "abhängig" 「依存した」が先にあって、ここから否定の接頭辞 "un-" を付けた "unabhängig" 「独立した」が派生しています。
英語でも "dependent" 「従属している」がまずあって、そこから "independent" 「独立した」が派生しています。

また、「直接」と「間接」の場合も、感覚的には先に「直接」があるように思えるのですが、ドイツ語ではやはり "mittelbar" 「間接的な」が先にあって、これに "un-" を付けた "unmittelbar" 「直接的な」が派生しています。
一方、同じ意味でラテン語由来の形容詞の場合は、 "direkt" 「直接の」が先にあって、そこから "indirekt" 「間接の」が派生していて、逆になっています。英語でもやはり同様で、"direct" 「直接の」→ "indirect" 「間接の」となっています。こちらの方が自分の感覚には合っています。


このようなことの理由はまったく分かりませんし、そもそも理由があるのかどうかも定かではないのですが、 "un-abhängig", "un-mittelbar" という否定の接頭辞の付いた派生語が、日本語だと先に来そうな「独立」「直接」を意味するという点で、自分の感覚との齟齬があり、頭の中で定着させるのに少し苦労した記憶があるのです。

こういう場合はあまり考えすぎずに、どちらか片方の単語と意味を頭に入れてしまって、そうじゃない方がもう一つの意味になると覚えた方がいいんでしょうね。
たとえば『インデペンデンス・デイ』という映画がありましたが、"Independece Day" =「独立記念日」だから、 "independence" = 「独立」、ゆえにそうじゃない方の "dependence" は「依存」という感じに。ドイツ語なら "Unabhängigkeitskrieg" =「独立戦争」だから "Unabhängigkeit" =「独立」、ゆえにそうじゃない方の "Abhängigkeit" =「依存」という感じでしょうか。


きちんと語の成り立ちを理解した上で意味を覚えたい方向けに一応説明しておくと、"abhängig" は動詞 "abhängen" 「吊り下がる、垂れ下がる」から来ています。何かにぶら下がっているということから「依存」の意味が出てきます。

"mittelbar" 「間接的な」に関しては、この形容詞は "Mittel"という語を含んでいます。語源的には英語の "middle" と同じなのですが、ドイツ語では何かと何かの「中間」にある、媒介するものということで、「手段、方法」などを意味します。つまり何らかの手段を用いるということから「間接的」という意味が出てきたのだと思います。


仕組みや成り立ちを理解した上で意味を覚えたい人と、そのまま丸覚えしてしまいたい人と、このあたりはその人の性格によるかと思います。
それと、単語によって、成り立ちを知った方が理解しやすいものがある一方、そんなことを考えると逆によく分からなくなるものというのもある気がします、
たとえば英語の "understand" という単語を、【何かの下に立つ → 何かについての知識がある → 理解する】というようなプロセスを経て覚えている人はほとんどいないと思います。"understand" =「理解する」と直結した方が覚えやすいですよね。
"forget" も、 【"for" に「無視」の意味がある → "get"「手に入れる」ことを無視する → 忘れる】という風に考える人はまずいないと思います。

今回の "unabhängig" や "unmittelbar" も人によるとは思いますが、僕個人は、どちらかというと成り立ちを理解したいタイプなので、 "unabhängig" は「ぶらさがっていないから独立」、"unmittelbar" は「手段を介さないので直接」という風に覚えています。

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