[中級] 接頭辞 "ur-"
今回は名詞や形容詞の頭につける接頭辞 "ur-" をまとめます。太字は比較的よく出てくる単語です。
1. 始原
見出しの通りです。始まり、元祖、元来のような意味を付与します。
Mensch「人間」→ Urmensch「原人」
Einwohner「住民」→ Ureinwohner「原住民」
Wald「森林」→ Urwald「原生林」
Zeit「時代」→ Urzeit「太古、原始時代」
*形容詞 urzeitlich「太古の、原始時代の」
Welt「世界」→ Urwelt「原始世界」
Gesellschaft「社会」→ Urgesellschaft「原始社会」
Tier「動物」→ Urtier「原生動物」
Vogel「鳥」→ Urvogel「始祖鳥」
Germanisch「ゲルマン語」→ Urgermanisch「ゲルマン祖語」
Christentum「キリスト教」→ Urchristentum「原始キリスト教」
Text「テキスト、本文」→ Urtext「元のテキスト、原本、原文、原典」
Aufführung「上演」→ Uraufführung「初演、封切り」
Spring「湧き水、泉」→ Ursprung「水源、源泉、起源、根元」
*形容詞・副詞 ursprünglich「元来の、太古以来の」
Sache「事柄、要件」→ Ursache「原因、動機」
*動詞 verursachen「…の原因となる、…を引き起こす」
2. 一代前の、先の
血縁関係を表す単語に付けて使います。
Großvater「祖父」→ Urgroßvater「曾祖父」
Großmutter「祖母」→ Urgroßmutter「曾祖母」
Großeltern「祖父母」→ Urgroßeltern「曾祖父母」
Enkel / Enkelin「孫」→ Urenkel / Urenkelin「曾孫(ひまご)」
*これらには、"ur-" をさらに重ねて、
Ururgroßvater「高祖父」
Ururgroßmutter「高祖母」
Ururgroßeltern「高祖父母」
Ururenkel / Ururenkelin「玄孫(やしゃご)」
といった語もあります。
3. 形容詞の強調
alt「古い、年老いた」→ uralt「非常に古い、非常に高齢の」
plötzlich「突然の」→ urplötzlich「まったく突然の」
deutsch「ドイツの」→ urdeutsch「生粋のドイツの、きわめてドイツ的な」
gemütlich「居心地の良い」→ urgemütlich「きわめて快適な」
4. "er-" が "ur-"に変化したもの
1-3の "ur-"とは別物です。
Urlaub「休暇」< erlauben「許可する」から
Urteil「判断」< erteilen「与える」から
Urheber「創始者、発起人」< erheben「(声を) 上げる」から
Urkunde「文書、証書、史料」< erkennen「認識する、承認する」から
5. まとめ
以上、接頭辞 "ur-" の紹介でした。
ドイツの詩人ゲーテに『ファウスト』(Faust) という有名な作品がありますが、1806年に発表された第一部より20年以上前に書かれていた初稿を "Urfaust" といいます。日本では「原ファウスト」「ウルファウスト」「ウアファウスト」などと呼ばれています。
また、漫画『進撃の巨人』に「始祖の巨人」というのが出てきますが、ドイツ語版では "der Urtitan" (Ur-titan) となっています。