17.「わたし」、どういうおばさんになるんだろう。

込み合った車内
隣に立って参考書を広げている人。
そこから赤シートとアンケートの葉書が
パラパラと
一瞬わたしの鞄に引っ掛かり
そのまま下までいってしまった。

わたし以外
誰も気づいていないであろう
その落とし物。

拾おうか、でも…。

そのまま踏まれていくのに
気づきながらも助けられない自分が
ひどく薄情な気がした。

ふと目に入った前の座席の人。

きれいにセットされた茶色の髪。
頬に刻まれたほうれいせん。
白いセーター。
一生懸命にスマートフォンをいじる指。

…あぁ、わたしはどんなおばさんになるんだろう。

結局、降りるのに乗じて
拾って渡した赤シートと葉書。
あるべきところに戻れて良かったね。

地上に出て
病気の子どもたちへの寄付を訴える人を横目に
歩きスマホでこのことを書きながら
また無表情を決め込んでわたしは進む。

わたしはいったい誰なんだろう。

…どういうおばさんに、なるんだろう。

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