38. わたしのねこ、飛んだ。
あなたは、覚えていますでしょうか。
わたしの中に住んでいる、「ねこ」のお話を。
彼女、嘘つきなねこでした。
自分自身に嘘をつくのが、とても上手なねこでした。
それを語るとき、まるでそれを心から望んでいるかのように
自分自身をそれは見事に欺いてみせるのです。
またそれが無自覚だというのですから、よけいにタチが悪いのです。
そうやって、わたしのねこは
自ら進んで、細い枝の方に、細い枝の方に上っていきました。
そうして、気づいた頃には降りられなくなっていたのです。
そのねこが。
先日、ようやく飛びました。
自分の心の嘘を認めて、勇気をもって、その枝を飛んだのです。
いざ飛びおりてしまうと
案外自分がいた枝は、そこまで高くはなかったことを知りました。
ねこは・・・・
いいえ、ねこのわたしは、何を、そんなに怖がっていたのでしょうね。
わたしの人生。
わたしが本当に心から自分で決めたことに対しては、
誰も何も言えないのだと知りました。
そのわたしには、揺らぎがないから。人のつけ入る隙がないから。
久々に降りた地面は広かったです。
久々に見上げた空は、どこまでも優しい青でした。
地球は丸くて、
わたし、自由にどこにだって行けるんだって
行っていいんだって
そしてまた気になる木があれば登っていいんだって
登ってみればいいんだって
思えたんです。
わたし、
ようやくわたしになれた気がします。
もう恐れない。
本当の自分を取り戻したから。
自分としての歩き方を覚えたのだから。
ようやく、本当の、本音のわたしとして
わたし、先に進みます。
いけいけ!わたし!
自由に、自由に、なりたいわたしに!
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