19.「わたし」の知らない"死"について。
家の最寄りの隣駅で人身事故か…
「直通運転を中止してまいます」
ちぇ、立ちっぱなしの電車で
帰らなきゃいけないな。
そんなことを考えて
乗り換えて、乗り換えて…
真っ暗の夜を横目に
時折家々の窓を走る電車の姿を
ぼんやり見つめていたら
しまった。乗り過ごした。
そして、"その"駅に来てしまった。
ぞっとした。
死に引かれてしまったような気がした。
分からない。
人身事故というのは、
必ずそこに「死」が存在してるの?
こんなにも頻繁に起きるのに?
他人事のような「死」の影の上で
平気な顔をして生きているわたしは…
わたしは……
「死」のにおいがあるだろうかと思ったけれど
何も分からなかった。
…そうだよな。そうだよね。
そうやって
何にもなかったように
その人の存在が、悲しみが、苦しみが
跡形もなく、まるで最初からなかったように
いやにきれいに、
この世界から、消えていく……。
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