8.「わたし」、空想バレリーナ。

むかし、クラシックバレエをかじったことがある。
当時好きだったアニメの女の子に憧れて。
ヒラヒラスカートと羽のように舞うバレリーナがとっても素敵で。

習い始めてみたけれど
あまりに体が固くて
友達より物覚えが悪くてやめた。
それでも3年くらいは続けた。
下手なりに一生懸命だった。

狭い台所で お母さんにみてもらいながら
繰り返したステップ…


人の少ない 地下鉄のホーム。
奥に進めば進むほど 人がいなくて
まっすぐに伸びた薄暗いその空間で
突如 あの時のステップを踏みたくなった。

タントン タン  タントン タン
ツーステップ   ツーステップ
膝曲げて ターン  膝曲げて ターン
のびてー  ポーズ

人に気づかれないように
ものすごく控えめに 足を動かす。
イメージの中だけ 私はバレリーナ。

これだけ月日が流れても
体が覚えてる 基本ステップ。

無駄なことなど 何ひとつない。
過去のすべてが 今のわたしになる。

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