20.「わたし」、その気持ちは秘密。
人から本を借りるのは
久しぶりだった。
あぁ…、文庫本を借りたのは初めてかもしれない。
自分では選ばないだろう
その本の雰囲気は新鮮な感じがした。
ゆるりとした、恋愛小説。
同じ部屋でお昼を食べながら
後輩の女の子が街コンに行ってきた話をはじめる。
年上の人!すっごくおもしろくて
今度一緒にご飯行くことになったの!
前の彼と別れた時、もう立ち直れないかと思ったけど、全然大丈夫だった!
可愛く同期に報告する彼女に
良かったねー!と笑って返す友人たち。
わたしは、その賑わいの中で
時折笑うくらいしかできなかった。
恋なんて、ふんわりとした
片想いしか知らない。
好きかな、までに時間がかかるうえ
その気持ちを相手に気づかれるのが怖くて
見ないように見ないように
"ふつう"を装ってしまう。
もう会えなくなってから
やっぱりあれは「好きの気持ち」だったのかもしれないと、ようやく諦めて認めるのだ。
"あなたはいつまでも純粋でいてよ"
…なんて、なんて無責任な言葉。
きっとわたしなら
そんな簡単に好きな人のことを教えない。
友達に教えてしまったら、口にしたら、
その気持ちが口から
逃げだしどこかへ行ってしまう気がして。
わたしだけの、誰にも言えない秘密。
誰にもあげない、秘密。
そうして、結局誰の目にも触れなかった
その想いたちが心の中で
寂しい宝石みたいに転がって 散らばって…
ちくりと痛い、過去になる。
今年も町はわたしを置いて
イルミネーションで 華やいでいます。
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