ある夜、お店のおじさんは、お店の奥で、本棚にある古い本を整理していました。
そこには、古い絵本や小説や詩集や画集や哲学書など、いろんな本が並んでいましたが、おじさんは、一冊一冊丁寧に、埃を払って、綺麗に並べていたのです。
その時ふいに、おじさんは、一冊の本の背表紙に目が止まりました。
その本は、分厚い本に挟まれながら、まるで何かを訴えるように、まばゆく光っていたのです。
その光に導かれるように、おじさんは、その本を手に取り、表紙を開き、ページをめくり、文字を追いつつ、そしていつしか、時が経つのも忘れたように、我を忘れて耽読しました。
やがて、おじさんの潤んだ瞳から、大粒の涙がこぼれ、その涙が乾く間もなく、満面の笑みがこぼれました。
それもそのはず、その本は、おじさんが若い頃からずっと書きたかった、夢物語だったのです。
ずっと書きたくても、なかなか書けなかったその物語は、長い歳月をかけながら、おじさんの夢が形になって、こうして結実したのです。
ここまで読んだ、夢を忘れた大人の読者の人たちは、そんなのは夢物語だ。こんな馬鹿な話があるものか!
と、思われるかも知れませんが、いくつになっても子供のようなおじさんは、そんなことは思いません。
思わないどころか、今日もまた、夢物語の続編を、ひたすら夢見ているのです。
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