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今年もパニック障害を楽しむ
去年の5月頃、長期留学から帰ってきてから久々の友達との再会で私を襲ったのは紛れもないパニック発作だった。
原因は留学による慢性的なストレスだと思う。
留学の終わり頃にかけて、4時頃まで眠れないとか、毎日なぜか涙が止まらないといった身体の症状が現れ始めた。
もちろん留学初期はホームシックで、大好きだった邦ロックを聴くだけで泣いていた。
だが、最後の方は理由もわからなかった。とにかく涙が止まらなかったのだ。休日は何もする気力が起きず、シャワーも入らずごはんも作らずベッドで横になることしかできなかった。
今考えたら鬱一歩手前のような状態だったな、と思う。
幸い、留学先で取ったすべての授業を日本の大学の単位変換上限まで認定することができたので、早期帰国を決意し、予定より2か月以上も早く日本に帰ることが決まった。
誰かといると緊張する。
私は昔から一人の時間が何よりも心の健康に必要であり、特に夜はひっそりと思考に耽るのが日課だった。
しかし、私の留学先の住居はシェアハウスであったため、一人時間の確保はそううまくいかなかった。
夜にようやく自分の時間ができたと思ってもルームメイトから「寂しいから話そうよ」、と私の部屋をノックされ、夜12時過ぎまで将来の展望や過去の出来事を語らう。
私のルームメイトはかなり社交的で、友達を連泊で私たちの家に泊めたり、Tinderで知り合った男を連れてきて部屋で寝たり一緒にシャワーに入ったりしていた。
日本では考えられないのだが、海外ではシェアハウスをしているのにルームメイトに許可なく異性を家に連れ込んだ矢先夜の営みをすることがよくある。
私の日本人の友達も他の国に留学していたのだが、彼女のルームメイトが毎晩違う男を連れ込み彼女の隣の部屋で営みをするので、彼女は慢性的な睡眠不足やうつ状態になり、留学を途中で諦め、帰国した。
私も同じだった。異国の地の家という、唯一の休む場所にいても心身の緊張が解けることはなかった。
そして、現地の友達、ルームメイト、クラスメイト、、、誰かといるときにとにかく、息苦しい、一人になりたい、と感じることが増えていった。
しかし、
彼らといるときは最大限自分は彼らに''興味があるフリ''をし続けた。
彼らのソウルフード、彼らの母国の政治の状況、彼らの母国語や文化背景を理解しないと面白さがわからないジョークに対して満面の笑みを作りながら頷き、話を膨らませる質問を投げかけ、留学中ずっと社交的な人間を演じ続けた。
苦しいのは、辛いのは、泣きたいのは、留学という、異なる背景や価値観を持つ人とオールイングリッシュの環境下に自分を置いていたからだと、留学中の私は信じて疑わなかった。
しかし、日本に帰ってきて、留学中は気を張っていた身体が本心を出したのか、社交の場で初めてパニックに襲われた。
久しぶりに日本の友達と公共の場にいるとき、突然の吐き気や「ここから逃げられない」という強迫観念が私の頭を埋め尽くした。
親しい友人でも一緒にいるときは吐き気や動悸が伴うため、会食の場ではほとんど食べ物を口にすることができず、帰るときはもちろん吐き気や動悸、過呼吸などに苦しみながら帰る、といったことが4,5回あった。
地下鉄の閉そく感や都会の人混みなどもパニック発作の一助となった。
睡眠に関しても、ようやく自分が落ち着ける家のベッドで眠れるというのに、朝方まで得体の知れない不安や緊張で眠れない日々が続いた。
そこで初めて親にその症状を打ち明け、6月に精神科を受診したところ、パニック障害と社交不安障害と診断された。
そこから抑うつの薬を毎日服用することで、アルバイトもでき、高校時代からの特に親しい友達とはまた遊ぶこともできた。
しかし今も、どんなに親しい友達と遊んでも急に呼吸が浅くなったり吐き気が襲うことは何度もある。
そしてまだまだ完治はしていないんだと、社交の場を通して実感する。
留学から帰ってきてから、社交がずっと怖い。誰かと一緒にいると、エネルギーを抜き取られる感じがする。
バイト先の忘年会で大勢の人を接客したりした日の夜なんかは大勢の人の声が脳裏で反芻してパニックになり、全く眠れず、またも薬に頼って眠りにつく。身体は疲れていて眠りたいのに眠れないのが一番つらい。
今年は精神科を変えようかな、と思っている。
こっちのけんとさんも紅白が終わり、鬱の治療に楽しんで向き合うと専念した。
らっこも昨日、友達と人が少ない小さな神社に初詣に行ってきて、そこでのおみくじで大吉を引き当てた。
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今年もよろしく、自分。
今年もよろしく、パニック障害。
私もパニック障害を乗り越える、じゃなくて乗りこなす、くらいに楽しんで向き合えたら良いな、と思う。
最近まで知らなかったのだが、大学にもパニック障害や社交不安障害持ちの学生に対しての授業サポートもあるようだ。決してパニック障害が完治しないと復学できないわけではない。
例えば、プレゼン課題をビデオで教授にメールで送るとか、対面授業をオンラインで受けれるとか。履修を組む時にも支援を受けれるそうだ。
留学前までは高いGPAを取ることに躍起になっていたが、今年は自分のできる範囲で勉強をやっていけたらな、と思います。
らっこ