<不動産仲介ヒヤリハット!>(19)見落としていた「遺体ホテル」
10/4発売『ヒヤリハット! 不動産仲介トラブル事例集』から、トラブル事例を紹介します。noteの記事タイトルの事例番号は書籍にあわせています。
トラブルの要点
既存戸建を購入後、引渡し前に、近隣に遺体安置所があることが判明
トラブル発生の概要
買主Yは、仲介会社Aの媒介で都内の既存戸建(PDFファイル内 資料①参照)を契約しました。引渡し前のある休日、買主Yは、周辺環境の再確認をするため、散歩がてら近所を貝て回ることにしました。すると、購入した戸建住宅から約60mほど離れた、生活圏内と言える所に遺体安置所の建物があるのを発見しました。気分の悪くなった買主Yは、仲介会社Aに対して、「こんな施設が近くにあるのならどうして言ってくれないんだ。このまま住むことは考えられないので違約解約したい。」と申し入れました。
トラブルの原因
買主Yは、既存戸建を検討するに当たり、条件として周辺環境を優先しており、仲介会社Aがその意向に沿って紹介した結果、売買契約となったこの既存戸建は、静かな住宅街にあることが決め手となったものでした。
ところが、仲介会社Aは、通常営業しているエリアから離れた地域に立地していたこともあり、クレームとなった施設の存在を認識していませんでした。
問題となった近隣施設は、「遺体ホテル」と呼ばれる遺体安置所で、人が亡くなった際に 葬儀や火葬が行われるまでの間、遺体を安置しておくための施設です。遺族にとってはありがたい施設ですが、不動産取引においては、そのような施設が近くにあることは、心理的瑕疵、または環境瑕疵に該当する可能性が高いといえます。
都心部では、周辺住民の反対などもあり火葬場や葬儀場の不足が発生していることから、遺体の保冷設備のあるこのような施設が増えてきています。葬儀場とは異なり、一見するとビジネスホテルに見えるような外観であったため、仲介会社Aは周辺施設の調査の際に見落としていました。
そのため、重要事項説明書(PDFファイル内 資料②参照)において、この施設についての記載はなく、また、売主Xが作成する「物件状況報告書」(PDFファイル内 資料③参照)においても、告知内容として説明がなかったことが、このトラブルの原因となりました。
トラブル対応および再発防止対策
環境的瑕疵とは、環境要因によって発生する欠陥で、その多くは心理的瑕疵に該当します。心理的瑕疵は、存在が眼に見える物理的瑕疵と異なり、取引当事者の主観的事情に左右されるものであるため、仲介業者にとって判断が難しいものといえますが、「そのことを知っていれば、購入の判断をしなかった」可能性があるものについては、宅地建物取引業法に定める「調壺義務」と「告知説明義務」があります。
そのため、仲介会社としては、周辺施設については十分な調壺が必要であり、当事者個人の主観に影響されることから、環境的瑕疵となる可能性が疑われる施設については、網羅的に説明しておく必要があるといえます。
このトラブルの解決に当たっては、買主Yの解約の意向が強く、仲介会社Aとして、施設の存在を見落としていた点と、売主Xが「物件状況報告書」への記載漏れがあったことを理解してくれたこともあり、売買契約を白紙解約することで決着することとなりました。
広い意味での心理的瑕疵には、前の事例18にあるような過去に発生した他殺、自殺、事故死など「事件・事故」のような瑕疵のほかに、この事例のような環境的瑕疵と呼ばれるものがあります。
代表的な例として、「心珊的に忌避させる施設(葬儀場、火葬場、墓地など)」の他に、「売却前に使用していた用途(風俗営業目的、反社会的団体の事務所など)」、「姫悪施設(騒音、振動、臭気を発生するもの、嫌悪感を与える景観など)」、「教育上、安全上配慮が必要な施設(ラプホテル、風俗店、パチンコ店、暴力団事務所など)」などがあります。
また、近隣や隣家に、例えば、「日常生活に対して洞喝的な言動を発する」「常軌を逸した行動を繰り返す」など著しい迷惑行為をする人がいる場合などは、「本来あるべき快適な住み心地」に欠けるという観点から、重要事項として告知すべき対象と考えられます。十分に注意して調査することが必要となります。
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