※最終回 不動産流通実務検定“スコア”に挑戦<今週の一問>2021.11.11「売買契約の特約条項」
企画推進課の奥田です。不動産流通実務検定“スコア”に挑戦!
不動産業界で働く方向けのFacebookページからの転載です。
さて、今年最後の出題です。これまでお付き合いいただきありがとうございました。
Q. 売買契約の特約条項として作成した以下の記載例のうち、不適切なものを一つ選びなさい。
【選択肢】
1.地中埋設物の存在が明らかな場合、当該埋設物を売主の責任と負担で撤去することが、売主と買主間で合意された。
『売主は、本契約第○○条の引渡し日までに、自己の責任と負担において、本物件土地に埋設されている●●の撤去を完了するものとする。』
2.売買物件に隣接して小学校があり、買主が居住するうえで生活に影響があると予想されることを、買主に確認したうえで売買合意がされた。
『本件土地に隣接して小学校があり、音楽や体育の授業や運動会等のイベントの際には楽器の音や子供たちの声が響くことがあること、また、風向きによっては運動場の砂埃が舞い上がることを買主は容認のうえ、本物件を買い受けるものとし、本件について売主に一切の異議・苦情等を申し出ないものとする。』
3.土地の売主(宅地建物取引業者兼建築業者)と買主が、建築条件付土地の売買契約に合意をした。
『本契約は、売主が別に定める「建築請負工事」を買主と締結することを停止条件とする契約であるため、本契約締結後、3か月以内に同建築請負契約が締結できない場合は、本契約は、自動的に解除となり、売主は受領済みの金員を無利息にて速やかに買主に返還するものとする。
ただし、設計料実費については、売主は、買主に返還を要しない。』
4.海外の支店で2年勤務する者が、日本国内の不動産(価格2億円)を売却することを買主との間で合意した。
『売主は非居住者であるため、買主は売買代金の支払いの際、支払金額の10.21%相当額を源泉徴収し、売主の税金相当分として、翌月10日までに所轄税務署に納付しなければならない。
万一、納付しなかった場合には、買主に対し、本来の税金に加えて、無申告加算税や延滞税が課される可能性があることを、買主は承知するものとする。』
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「正解」の番号と解説
不動産流通実務検定“スコア”<今週の一問>、正解と解説です。
【答え】3
【出題のねらい】
標準型売買契約書に記載のない売主・買主間で合意した特約条項・容認事項の作成能力は、不動産実務において不可欠である。特に令和2(2020)年4月1日施行の改正民法では、「契約の趣旨」が重視され、今後「契約文言重視」の傾向が強まり、特約条項・容認事項を詳細に契約書に盛り込むことが増加する。基本的な特約条項・容認事項の作成能力を身につけたい。
【解説】
1.適切
約定の期日までに撤去作業を完了させることを明確にするため、「撤去する」ではなく「撤去を完了する」とします。「撤去をする」とした場合、「約定の期日までに撤去に着手していればよい」の意味ととることもできてしまいます。
2.適切
買主が居住目的である場合には、小学校等も対象物件との距離によって、音や運動場の砂埃等の影響が、買主の生活に支障が生じたり、健康に影響することがあり得るので、特約として処理します。その存在が周囲の人から嫌われる施設のことを「嫌悪施設」といいますが、特約条項には、嫌悪施設という用語は使用せず、事実をありのままに記載しておくことが適切です。
3.不適切
不動産の表示に関する公正競争規約*では、請負契約が期限内に成立しない場合は、土地売買契約は、解除され、かつ、売主は、買主から受領した金銭について、名目のいかんにかかわらず、すべて遅滞なく返還する旨を定めなければならないこととなっています。建築条件付土地売買契約が制限的に許される趣旨からしても、売主の不動産業者が設計料を請求することは、不動産の表示に関する公正競争規約の趣旨に反するので、仮に設計契約をしていたとしても実務上設計料を支払わなくても良いです。
*第6条
(1)ウ 建築条件が成就しない場合においては、土地売買契約は、解除され、かつ、土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、すべて遅滞なく返還する旨
4.適切
非居住者(居住者以外の個人のことをいう。居住者は、国内に住所を有し、又は現在まで引続いて1年以上居所を有する個人を言い、居住者以外の個人を所得税法上の非居住者という。非居住者は、日本国内の財産の譲渡や所得に対して、日本の所得税を支払う義務がある)から日本国内にある土地等を購入してその譲渡対価を国内で支払う者は、非居住者等に対して対価を支払う際10.21%の税率により計算した額の所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、納付しなければなりません。所得税の徴収は、手付金、内金、残代金の支払いごとにしなければなりません。
源泉徴収の対象となる「土地等」とは、土地又は土地の上に存する権利、建物およびその付属設備若しくは構築物です。
源泉徴収義務者には「土地等の譲渡対価の支払をする者」のすべてが含まれていることから、法人はもちろん個人(事業者かどうかは問わない。)であっても、非居住者等に対して土地等の譲渡対価を支払う場合には原則として源泉徴収をする必要があります。
ただし、個人が自己又はその親族の居住の用に供するために土地等を購入した場合であって、その土地等の譲渡対価が1億円以下である場合には、その個人は源泉徴収をする必要はありません。
<詳細説明>
★売買契約書の特約条項
・ 民法の任意規定を修正し、不動産取引の慣行を標準的な契約条項としているもの(所有権の移転時期を売買代金全額支払い時とする条項、実測費用は売主の負担とする条項、所有権移転登記費用は買主の負担とする条項等)
・ 契約不適合責任に関し、民法の任意規定を変更する条項(契約不適合責任を免責とする特約条項、代金減額請求のみを排除する条項等)
・ 取引における個別・具体的な合意事項の条項(建物取壊しによる更地渡し条項、地中障害物の撤去完了による引渡し条項、ローン特約条項、買換え特約条項等)
・ 本来は承認できない事項を、あえて買主が容認する事項(越境物の容認と将来撤去条項、雨漏り・シロアリ被害等の容認条項、設備の不具合の容認条項等)
(参考:「不動産流通実務必読テキスト第三版」P209)
©The Real Estate Transaction Promotion Center
💁♀️第9回検定は11/18(木)~ 25(木)実施 (申込みは11/11 17時まで)
▼不動産流通実務検定“スコア”
これまでお付き合いいただきありがとうございました。これまでのまとめは、マガジンでご覧いただけます。
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