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第99回箱根駅伝 復路

駒澤大学の優勝で今回の箱根駅伝は幕を閉じた。といっても、中央も思ったより離されなかったのでレース全体として非常に面白くなった(史上最速の準優勝のようだ)。大八木監督は、今大会を以て勇退するとのことで、一つの時代が終わったことを感じさせる。

【6区】経験者を上回った1年生の激走

5区もそうだが、山の区間は経験がモノを言う。特に6区はスペシャリストがいる大学は相当な強みになる。そういう意味で、追う中央大学は若林選手(4年)がいるので、6区で駒澤に追いつくかと思われた。

ところが駒澤の1年生伊藤選手が最初の5kmから後ろを引き離す。その後の定点間も常に区間5位以内で推移し「飛ばし過ぎでは?」と思ったが、ラスト3kmも大八木監督の激もあってか、ペースが落ちることはないまま7区に襷を繋いだ。1年生で58'22"の区間賞は誰も予想していなかっただろう。

ちなみに区間2~5位は経験者が占めた。大東文化の佐竹選手(3年)が6位に入り山の大東は健在だった。青山学院はここで区間最下位に沈んでしまい、優勝争いは駒澤と中央に絞られた。

【7区】区間賞と区間最下位の差は4分以内

7区は往路を走れなかったエースクラスが投入されることがある。4区が難しいから7区も難しそうだが、どちらかというと下り基調になるからそうでもないのかもしれない。気温も復路の中では走るのに一番適している。

創価大はここに葛西選手(4年)を持ってきた。全日本の2区で区間賞を獲得するなど実力者だ。ここに配置したということは故障で当日交代かもしれないと思ったが、そのまま出走した。榎木監督が本気で優勝を狙っていた布陣だったのだ。

葛西選手は前評判通りにきっちり区間賞を獲得したが、明治の杉選手(3年)も最後に捲り同タイムで区間賞を獲得。杉選手が速かったのもあるが、葛西選手がラストで垂れてしまったのが大きい。大磯~平塚の2.9kmで9分以上掛かってしまったのだ。そういう意味では最後までペースを維持できた杉選手が立派だった。

この区間では、区間賞が1:02'43"で区間最下位でも1:06'36"、つまり4分と開いていない。これは1区に次いで2番目にタイム差の少ない区間だった。

【8区】歴代トップ10に3名が入るハイレベルな戦い

遊行寺坂が有名な8区。繋ぎの区間がもはや存在しない箱根駅伝でチーム10番手の選手が走る印象もあるが、キロ3分ペースをどこまで維持できるかがカギとなる。

多くの選手が茅ヶ崎のポイントを20分前後で通過する。19分台だと「おっ」と思うが、あまり速く行き過ぎると後半が伸びない。実際、今回区間3位以内で走った選手は、それぞれ区間5位、10位、4位で茅ヶ崎のポイントを通過している。

宗像選手(法政3年)と木本選手(東洋4年)が同タイム(1:04'16")で区間賞。7区に続いて区間賞を分け合う形となった(2区間連続は今まで見たことがない気がする)。1秒差で平選手(順天堂4年)が区間3位。途中までは区間トップだっただけに本人は悔しいだろう。ちなみにこの3人のタイムは8区歴代で6~8位に相当する。97回大会に続き、ハイレベルな8区となった。東洋のシード獲得はこの区間の奮闘がかなり効いたはずだ。

【9区】岸本選手、意地の激走

復路のエース区間、9区。小説「風が強く吹いている」では主人公の走が登場した区間だ。チームのキャプテンや次期キャプテンが走ることが多く、ここに強い選手を置ける大学とそうでない大学との差が付きやすい。

青山学院はここまでピリッとしない展開が続いていたが、ここで岸本選手(3年)が気を吐く。8位で受けた襷を3位まで押し上げて鶴見中継所へ。途中までは区間記録を上回るペースを見せ、記録更新の期待が掛かった。しかし、ラスト3kmでペースを上げられず(中村選手はラスト3kmがとてつもなく速かった)、前年に同学年の中村選手が出した記録には少し及ばなかった。それでもチームの窮地を救う、十分な走りを見せた。

昔は70分切りでも区間上位に来たが、最近は69分を切ってこないと区間上位に来られない。今回も区間6位の湯浅選手(中央3年)までが69分切り。優勝した駒澤の山野選手(4年)も含め、区間6位以内は皆、シード権を獲得した大学。やはりそれ相応の選手層がないとシード権は厳しい。

【10区】大きな波乱はなく、箱根駅伝は幕を閉じた

この区間で順位が決まるため、優勝争いはもとよりシード権争いからも目が離せない。昼の東京は気温も上がるため、脱水症状と隣り合わせである。実際、東海の丸山選手はラスト2.9kmで11分2秒(3'48"/km)掛かっており、何らかのアクシデントが生じたと思われる。

優勝した駒澤は経験者の青柿選手(3年)を配置、リードも十分あったので、波乱が起こる要素は少なかった。こちらもラスト2.9kmでペースを落としたが、もうビクトリーランという感じだったのかもしれない。

区間賞は西澤選手(順天堂4年)が獲得。追う展開から69分切りで、23kmの間、ほぼキロ3分ペースを維持した見事な走りだった。シード争いでは城西と東洋がずっと競っていて、後ろから東京国際が追ってきていたが、さすが地力のあるランナーが走っているだけあって、最後は寄せ付けなかった。

予選会校からは早稲田と城西がシード獲得し、逆に東京国際と帝京はシード権を落とすことになった。次回大会は100回記念大会なので、各大学是非とも出場したいところだろう。予選会参加校が全国になり、より一層の盛り上がりが期待できる。

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