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人事として押さえるべき「日本の離職率の現状と分析」
はじめに
日本の離職率: 令和4年度の離職率は15.0%で、前年より1.1ポイント上昇しました。
入職率との比較: 同年度の入職率は15.2%で、0.2%の入職超過となっています。
性別の違い: 男性の離職率は13.3%、女性は16.9%で、女性の方が高い傾向にあります。
就業形態別: 一般労働者の離職率は11.9%、パートタイム労働者は23.1%で、パートタイムの方が高いです。
産業別の特徴: 宿泊業、飲食サービス業の離職率が26.8%と最も高く、次いでサービス業(他に分類されないもの)が19.4%です。
離職率の計算方法
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離職率の定義: 一定期間における離職者の割合。
計算式: 離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100。
入職超過率: 入職率から離職率を引いたもの。
入職率: 常用労働者数に対する入職者数の割合。
転職入職率: 常用労働者数に対する転職入職者数の割合。
産業別離職率
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産業別離職率の実態:宿泊・飲食業が最も高い理由とは?
企業経営において、人材の定着は大きな課題の一つだ。特に離職率の高い業界では、採用コストや教育コストが増大し、組織の安定性にも影響を及ぼす。本記事では、最新の産業別離職率のデータをもとに、各業界の離職傾向を分析する。
宿泊業・飲食サービス業が最も高い26.8%
離職率が最も高いのは、宿泊業・飲食サービス業(26.8%) である。これは、長時間労働や不規則なシフト、低賃金といった要因が影響している。また、繁忙期と閑散期の差が激しく、雇用の流動性が高い点も特徴的だ。加えて、顧客対応のストレスが大きいことも、早期離職の要因となっている。
サービス業(他に分類されないもの):19.4%
次に離職率が高いのが、サービス業(他に分類されないもの)(19.4%) である。このカテゴリには、エンターテインメント業や一部の専門サービス業が含まれ、契約社員やアルバイトなど非正規雇用の割合が高いことが特徴だ。給与水準やキャリアパスの不透明さが、離職を促進する要因となっている。
卸売業・小売業:13.6%
卸売業・小売業(13.6%) も比較的高い離職率を示している。小売業は、接客業務が中心であり、労働時間の長さや土日出勤の多さが影響している。また、EC(電子商取引)の拡大により、従来の小売業の業務形態が変化し、従業員の負担が増していることも離職の一因と考えられる。
医療・福祉:14.4%
医療・福祉業界(14.4%) では、肉体的・精神的な負担が大きく、特に介護分野では過酷な労働環境が問題視されている。夜勤や長時間労働に加え、感情労働(患者や家族との関係性を維持する負担)も離職を引き起こす要因となる。近年では、待遇改善の動きがあるものの、根本的な労働環境の改革が求められている。
教育・学習支援業:15.2%
教育・学習支援業(15.2%) も高い離職率を示している。教員や講師は、授業以外にも教材準備や生徒対応、保護者との関係構築といった業務負担が大きい。特に若手の教員の離職率が高く、職場環境の見直しが求められている。
企業規模別離職率
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企業規模別の離職率:中規模企業で高まるリスクとは?
企業の離職率は、組織の規模によって異なる傾向を示している。1,000人以上の大企業では14.0%、300~999人の中堅企業では**13.3%と比較的安定している。一方、100~299人の企業では17.4%**と最も高く、小規模企業(30~99人:14.7%、5~29人:13.6%)と比べても離職リスクが高いことがわかる。
この結果から、特に100~299人規模の企業は人材流出のリスクが高いといえる。大企業は給与や福利厚生、キャリアの選択肢が豊富なため、従業員の定着率が高い。逆に、100~299人の企業は、成長過程にありながらも大企業ほどの安定した制度を整えにくいフェーズにあるため、従業員がより良い条件を求めて転職しやすいと考えられる。
また、30~99人、5~29人の小規模企業は、トップマネジメントとの距離が近く、組織の結束力が強いためか、100~299人規模の企業ほどの離職率の高さは見られない。この規模では、企業文化の影響が大きく、従業員のエンゲージメントが高まりやすい可能性がある。
人材流出を防ぐためには?
100~299人の企業では、組織が拡大する過程で、管理体制の不備やキャリアの不透明感が原因で離職が増える可能性がある。そのため、明確な昇進ルートの提示や、従業員のスキルアップを支援する施策が重要となる。また、企業文化の醸成やマネジメントの質向上を図ることで、従業員の定着率を改善できるだろう。
企業の成長フェーズに応じた適切な人事戦略を取ることで、人材の流出を防ぎ、組織の安定的な発展を実現することが求められる。
職種別離職率の最新動向—離職リスクをどう捉えるべきか?
企業の人事戦略において、職種別の離職率を把握することは重要な指標となる。従業員の定着率向上や採用戦略の見直しに向け、最新データをもとに現状を分析する。
一般労働者の離職率は11.9%
一般労働者の離職率は11.9%であり、安定した職に就いているものの、一定数の退職者が発生している。労働環境やキャリアパスの見直しが、離職抑制に向けた鍵となる。
パートタイム労働者の離職率は23.1%
パートタイム労働者の離職率は23.1%と高く、流動性が非常に高い。短期契約やライフスタイルの変化が影響していると考えられる。企業は柔軟な勤務形態や福利厚生の充実を検討すべきだ。
新規学卒者の離職率は3年以内に特に高い
新規学卒者の離職率は特に3年以内に高い傾向がある。職場のミスマッチやキャリア不安が原因となることが多いため、オンボーディングプログラムの強化やメンター制度の導入が必要だ。
転職入職者の離職率は9.7%
転職によって新たな環境に入った労働者の離職率は9.7%と比較的低めだ。転職者は前職と比較し、自身のキャリア選択に慎重な傾向がある。しかし、期待とのギャップを最小限に抑えるため、入社後のサポート体制を整えることが重要だ。
未就業入職者の離職率は5.5%
未就業から新たな職に就いた労働者の離職率は5.5%と最も低い。職を得たことによる安定志向が背景にあると考えられるが、職場適応の支援を怠ると定着率が悪化する可能性がある。
まとめ
日本の離職率は職種や雇用形態によって大きく異なる。一般労働者の離職率は約11.9%であり、一定の安定性が見られる一方、パートタイム労働者は23.1%と高い水準にある。また、新規学卒者の3年以内の離職率が特に高く、キャリアのミスマッチが課題となっている。転職入職者の離職率は9.7%と比較的低く、慎重なキャリア選択が影響していると考えられる。一方で未就業者からの入職者は5.5%と最も低く、就業の安定志向が反映されている。これらのデータから、日本の労働市場における流動性は高まりつつあるが、職場定着のための支援が企業に求められている。