コロブトリ(短編小説/424字)
コロブトリはこの街の浜辺によく飛んでくる鳥で、ころころと太っているからコロブトリと呼ばれている。
と、ぼくは学校の先生に教わったのだけど、父さんは「いや、コロブトリは歩くと必ず転ぶからコロブトリなのだ」と言う。
事の真偽を確かめるために、ぼくは夏休みの自由課題を、コロブトリの研究に決めた。
観察を始めて一日目。どうやらコロブトリの中にも、太っていない鳥がいる。
観察を始めて五日目。どうやらコロブトリの中にも、転ばない鳥がいる。
観察を始めて一週間。どうやらコロブトリの中にも、飛べない鳥がいる。
観察を始めて二週間。どうやらコロブトリの中にも、太っていなくて転ばなくて飛べない鳥がいる。
観察を始めて三週間。どうやらコロブトリの中にも、コロブトリっぽくないコロブトリがいる。
結局ぼくが見つけた鳥はコロブトリではなく、新種の鳥だった、と先生が教えてくれた。
でもあの鳥はコロブトリの中にいたのだから、きっとコロブトリなのだとぼくは信じている。
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