夜とコウモリ
「ぜったいに光らないって、約束するよ」
そう言った夜が電灯と付きあいはじめたとき、コウモリは夜とおわかれして洞窟に住むことに決めた。
光はべつに怖くない。夜はかんちがいしているけれど、コウモリが苦手なのは、電灯が出してくる高周波の音で、これを作ったニンゲンも苦手だった。彼らは朝にも夜にもいい顔をする。
だからうさばらしに噛みついてやったのに、いつのまにかコウモリのしわざではなく、吸血鬼のしわざということにされてしまった。
噛みついたニンゲンが光をおそれて電灯を作らないように仕向けたのは確かなのだけれど、そのニンゲンが吸血鬼とされ、コウモリとは似ても似つかないのに変身できると信じられているのは、不思議だった。
やがて増えすぎた電灯と喧嘩した夜が、洞窟へ忍んでやってくるようになり、コウモリはそれ見たことかと笑う。光に照らされすぎて、夜は小さくちぢこまっていた。
洞窟はそんな夜とコウモリを、やさしく真っ黒に包み込む。
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