ナルキッソス

 牢獄のように冷えた視線はマイノリティ。笑顔は角を四つ曲がった先の向こうでワルツを踊っているあの子がぜんぶ持っていったので、今あるのは売れ残りのさみしさだけ。だれでも持ってるけど人のはいらない。水面に映った心は本物よりも美しくみえて、だったら本物なんていらないと投げ捨てたら、水面の心も消えてしまう。その消えた心はこちらで販売しています。本物ですか? 偽物だって偽物しかいないのなら、本物をするしかなくなるものですよ。鏡はすべてのあなたをみているし、みちがえるほど違いのある美しさなんて、あなたを誤解しているだけですから、なんの驚きもない日常の素顔こそ、愛すべきなんとかであれでまあそんな感じでもういいですか。

 途中で飽きた鏡はまわりくどい賛美をやめて、いつも通りの私を映し出す。それでこそ私の鏡。

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