この現象は、だれが起こしたものなのか? ~マジックが起因する場所~
風邪を引くときは、喉からが多い
レストランマジック研究所 小林です。
マジシャンになって、早何年でしょう?
その中で
「これがウケるんですよ~」
って、耳にしたことも数知れず。
僕自身は、あまりウケているという事に注力が行かないせいか
そういった言葉を吐いた事は少ないかと思います。
それよりも、きちんとできたか、という自分事の方に
意識が向きます。
もちろん、観客のウケも意識を向けないと、なのですが
優先順位は自分のコントロールで、それが毎度上手くいくとも
限らないので、そっちに対しての意識の方が多いわけです。
さてさて、観客のウケ(リアクション?)を大きくする
ベタな方法はあるわけで、それを積層化させて利用すれば
比較的機械的にリアクションを大きくすることなどは可能です。
分かりやすい所では、お客さんを巻き込む
スポンジボールのように、自分の手で何かが起こったら
そりゃあ驚きます。
あと、場にもよるのですが
声を出していい、と覚えこませたり、声を出す練習をさせる
ってこと。
これをしておくと、音が出るという現象が起こりやすいので
ウケていると判断されやすくなります。
(これはこれで、クライアントさんがいるなら大事な作業!)
拍手の練習とか、あれはあれでいい方法なんですよ。
でね、お客さんに手伝ってもらう事って、マジックではよくありますが
ちょっとした注意点としては
「で、結局誰が奇跡を起こしたの?」
ってことです。
これ、北原氏の書籍「ヒューミント」とかでも触れていた
ような気がするのですが、あまり意識してない人も多いような
気がするわけです。
もちろん、観客が運よくカードを当てた
なんてことが起こってもいいのですが
その際のマジシャンがいる理由って何になるんですかね?
この辺の事を考えておかないと、セリフや振る舞いに
ノイズが走っていくことになるわけです。
僕自身、カードの手順では相手が不思議な事を起こします。
それも繰り返していくので、だんだんとお客さんも乗ってくる
なんてこともあります。
正常な大人なら、マジシャンが何かやっているとなりますし
マジックやっているわけですから、そうでしょう。
ただ、マジシャンがコントロールしている感が強すぎると
こちらに味方してくれなくなる可能性もあるわけです。
だって、所詮マジックなんてマジシャンの独り勝ちをするように
出来ているわけで、それをガンガン押していく場合には
かなり紳士な振る舞いをしないと、イヤらしいというか鼻につく
感じになるかと。
そこまで行かないで、なんとなく手伝ってもらい
適度に花を持たせてくれる振る舞いなら、こちらに少しは
寄り添ってくれるはずです。
その適度さ、が難しいのですが。
例えば何か現象が起こった際に、本当にマジシャンが手を貸してないなら
マジシャン自身しっかりと驚かないといけないはず。
でも、そうではないわけで、その段階でマジシャンが何かしている事が
前提になってくるわけです。
これ、理性で分からなくても、感覚的に大人なら気づくでしょう。
対子供の場合には、この際に言葉だけでも褒めてあげると
いう事を聞いてくれやすくなってくれますし、楽しんでくれます。
(この辺を分かっているので、小林は子供相手でもやり方は変えても、やることは変わらない、という部分につながります。)
大人の場合には、もう少し高度な感情が動くはずですので
その辺を動かしたいと、僕は思います。
マジックやマジシャンに対する興味関心、見えなかったテクニックなど見えるのではないか?とか、もしかしてホントに運が良いのかもという自分に対する自信を満たすとか。
もし、相手のパワーで何かが起こったとしても
じゃあ、いつもはなんでそんなことが起こらないの??
っていう、きわめて論理的な所に行きつく可能性もあるわけで。
思うに、マジシャンが全く介在しないでマジックが起こる
というのは、あまり得策ではないような気がします。
これはどんな時においても。
まあ、対子供なら、そこまで考えないでしょうから振り切っておいていいでしょうけど。
マジシャンが何らかの手助けになっている、相手のパワーを引き出す
何かを持っている、とかのイメージは持ってもらったらいいかと。
「そんな難しいこと、考えてないよ!」
もちろん、そういった人もいると思うのですが
もし観客が「自分には実は不思議な力が・・」と思っても
実際には現実とはグラデーションでつながっているエンタメの場なわけで
イマーシブなエンタメがウケているとはいえ
何をやってもいいわけではないので、それなりに大人でいていただきたい。
(没入型の体験施設の方って、絶対色々と被っていると思います。お化け屋敷で人間が驚かすタイプの所って、お化けに危害を加える人もいるようですからね。僕自身は、没入型の所は苦手な感じがあるので、もし銃とか突き付けられたら、体が反応して相手の後ろにまわるような動作をしそうで(笑)。子供のころ、実際に肝試しをて人に驚かされ、思いっきりグーとか蹴りで攻撃をした思い出はあります。)
ある程度の線引きを感じさせるか、ここはリアルな場なんだという
認識をさせるタイミングがいくらかあっても
いいんじゃないかと。
小林は、セリフとして
「ここまでで、よく考えたら何もやってないように見えますよね」
とか言う事も。
これ、裏を返せば「色々と仕事しているんですよ」
という意味が浮かんでくるわけです。
(僕個人は、これが反射的に浮かぶ位の大人の方を相手にしてマジックをするのが妥当だと思っておりますので)
その後で、テクニックではなくギミックを使ったりすると
余計に不思議だったりするわけです。
(意図的に暗に自分がテクニックを使っている、と振った後なのでそれを探そうとすると、そうではないエフェクトが起こるので、余計に頭はビジーに(笑)。奇門遁甲の杜門か狂門に入れるような感覚を持っております)
少々話がそれましたが、要はそのあたりの整合性を
取ったセリフや振る舞いをした方が
観客は抵抗なく楽しめるはず、という事です。
もちろん「観客のパワーがある」の方に、全振りしてもいいんですよ
その場合には、表情や呼吸、テンション、身体操作なども
そっちにしないと、ちぐはぐになってしまい、その差がノイズとなり
観客が楽しめないきっかけを生み出すかもしれないってことです。
僕自身は、そういった演技が下手なので
変に感情を動かした風にしようとは思いません。
お手伝いしてもらって、カードが当たっても、こちらは結果を
知っている体での、身体、呼吸、テンション、表情です。
グラデーションで、リアルとマジック世界があるとしても
リアル濃いめの世界に、観客はいていただく方が良いと思っています。
自分がやったのか、マジシャンのおかげなのか
どっちなんだろう・・・?
位のテンションが狙いですね。
それはそれで不安定になるのですが、その方が
そこから色々と行うのが楽になるから
という部分もあります。
相手と何かをする、相手に何かをさせる
そして上手くいく
この状況においては、そりゃあウケるしリアクションもあります。
でも、実際にはどうなのか?
その点を、少なくとも演者は考えておくと
全体として齟齬の無い感情の動きやセリフ、相手への対応が
できるようになるはずです。
逆にそういった所に、齟齬がいっぱい見受けられると
現象に頼っていて、リアクションしか見てないマジシャンと
判断されてしまいがちです。
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