お客様の「速い」とは?
以前のNOTEの記事にも、武術家の方のyoutubeを
張り付けていたと思いますが
今回も、その手の方の動画から学んだ事柄です。
若いうちのマジシャンなんて、現象詰め込んで
倍速で演じているような状態になったりします。
僕自身もそうだったので、その当時マジックを見てくれた
お客様には、負担をかけたなあ、と。
自身のクロックサイクルと違うリズムのものを
適格に理解しようとしたら、そりゃあ負担がかかりますので
その上、お酒飲んでいたりしたら、もう大変でしょう。
そうだったんだろうなあ、と思うと
ホント、穴を掘って、その中でゆっくり寝ていたいくらい(笑)。
というか、若いときには、アヤシイ部分の匂いさえ
つかませたくなくって、高速で逃げる
という感じだったかもしれません。
追われてないのに逃げるから、そこを追われて
さらに高速で逃げていく、という悪循環に
巻き込まれる人も、決して少なくないわけでして。
まあ、演じる状況の問題だったりするので
その人の演技を見たら、その人の演じてきた人
お客さんが透けてみることもしばしば・・
経験を積んで、慣れてくれば
怪しさの匂いのしっぽをつかまれたとしても
気にしないという風になることもありますし
必要な時だけ、逃げればいいという事も
できるようになります。
「マトリックス」ではないですが
速く動こうとするな、動けることを知れ
って感じで。
無理に動く必要もなく、逃げないからこそ追われない
ってことを実際に経験するはず。
さてさて、小林も年を取って
逃げなくてもどうにでもなるし、逃げる際には逃げれるし
場合によってはねじ伏せる、という事も出来るように
なってきました。
そんな中で、いつもの手順をやっていたら
「いやあ、速いなあ、サラッとやっちゃうね」
みたいな言葉を頂きました。
正直いつもの手順を、肩の力を抜いてやっているので
いわゆる「現象が走る」ようなことは無いと思っています。
相手とのクロックサイクルの差が大きい可能性もありますが
年齢的にも、それほど離れてない感じなので
認知の速度なども変わらないはず・・・
では、どういった理由で「速い」のか?
恐らくは「インモーションがない」ために
「怪しさの匂い」を捕まえられず、「認知の隙間」を通って
現象が起きているから、ではと。
マジックですので、どうしても特殊な作業をすることがあります。
よくある裏の作業です。
これらを巧妙に隠していくようにするのが、演技のブラッシュアップ
の一部分だと思います。
マジシャンによっては、何かをやる瞬間に気づける
事も多いと思います。
よくあるのは、動きの速度が変わる、体の緊張度合いが変わる
急に黙る(笑)などなど。
要は、何かを起こすための準備をしている、と
相手に知らせることになるので
相手は「不思議を受け止める」準備ができるわけです。
これをインモーション(予備動作)と、僕は呼んでいます。
悪く言えば、しっぽをつかまれているという事で。
これは相手が準備できるので、物理的な速さがあっても
対応ができるので、認識度合いが上がると思います。
演技に波がないのは、あまりいいことではないのですが
とはいえ、こういったインモーションの起伏は
減らした方が良いでしょうね。
インモーションをできるだけ消す、または表の動作の中に
入れ込んでいく、という事ができれば
なんの準備もなく、不思議が起こっていくわけです。
多分、こういった状態で不思議が起こると
速いって認識されるのではないかと。
そのものが速いのではなく、速く感じる
ということかと。
で、冒頭の話に戻るのですが
パンチなどの攻撃が速いのではなく
相手からは早く見える、という状態に
なることがあるようで。
要は予想とは違う状態になる、という事のようで
戦い慣れていればいるほど、予想はするし
大抵はそれがきちんと働きます。
それがインモーションになります。
つまり、パンチを出す際に、足で地面をけったり
体をひねったりするわけですが、その動作に
一拍前に気づき、攻撃が来ることが分かるわけです。
もし、そういった動作なく気づいたら
目の前にこぶしがあったら、速いって感じるでしょう。
影武流合気体術の雨宮先生が
「一挙手で動き、等速で動く」
という事をするので、速く感じると言っている
Youtubeがありました。
影武流の動きというのが、一挙手での動きを
意識しているもののようで。
その方が、相手にしっぽをつかまれないので。
そして思うに、それをすると打撃の所に
全体重が乗っかるはずなんです。
八極拳の肘みたいな感じで。
ちなみに、空手とかでも、末端から動くと
恐らくインモーションが起こらないため
速く感じる、という事が起こるようです。
つまりは、お客さんからの「速い」に対して
単純な速度の部分だけとは限らないという事。
相手の言葉を冷静に判断し、どういった認知になればいいのか
それを自分でイメージしながら、正解に近づけましょう。
もちろん、相手があっての事なので
こちらの計算通りに、いつもうまくいくか、ってことになると
難しいのですが、それを補正していくのもまた
マジシャンの仕事ですし。
物理的な速度は、出来るだけ落として
速度変化や力みでしっぽをつかまれないように注意しながら
現象が起こる瞬間には、焦らずしっかりと見ていてもらう。
トリックを学ぶ、理論を学ぶ、それぞれも重要な事なのですが
実際にお客様の前にいる際の、身体や精神の状態の理解や
それらの影響の範囲などもまた、経験していかないと
いけない事でもありますので、日々これ学びですね。
まだまだ、成長していかないといけないようです。
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