私、嫁やめようと思います⑥
結婚式には、夢があった。
自分が結婚するときは、長持唄をうたってもらって白無垢に綿帽子で嫁入りして、色打掛に替えて。皆んなからの祝福に包まれて。
披露宴では、お色直しに赤かピンク色のドレスを着る。両親への手紙は心を込めて自分で読む。泣いちゃうだろうけどなぁ。
姉たちの結婚式をみてきたから、自分の時は、もっとこんな風にと、夢みてた。
なーんて。ぜーんぶ夢だったなぁ。
「秋には、妹が結婚するから、それまでに長男には嫁をとらせてないといけないから。」
「1つ下の職場の仲良しの後輩が結婚式を挙げるより先にやりたいから。」
そんな義両親や夫の意見が優先されて、結婚式の日は、結納から2ヶ月後の私の親友の結婚式の翌日になった。それからの毎週末は準備に追われた。
急すぎて結婚式場は、どこも満杯で空いてる朝一番の時間に予約するしかなかったから、時間の制約がきつくて、やりたいことの半分もさせてもらえず。着たいと思ったドレスも先約があり、やむを得ず、その日に空いているドレスを選ぶしかなかった。
ただただ、準備に疲れきって、私には結婚も結婚式も喜ぶ余裕もなかった。
長持唄の嫁入りは、できなかった。
私がお色直しで着たドレスは、グリーン。どのドレスも予約でいっぱいで、それしか空いてなかったから。
披露宴もその後の予定があって、時間を延ばせないという理由で、両親への手紙は司会者が私たちが花束を持って歩いている間にBGMのように代読した。
私の結婚式の夢は、すべて叶わなかった。
親友の結婚式も、私が行くことも来てもらうことも叶わなかった。
私の結婚式は、ただただ形式上の、夫と夫の家族だけが満足した結婚式だった。