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喘息増悪ヒートマップデータベース研究

呼吸器クリニック開業を決意したひとつのきっかけとなった研究です。

喘息(ぜんそく)患者は日本に約800万人いるとされていますので、ご自身が罹患されていたり、周りに喘息患者さんがいる方も多いでしょう。

喘息増悪(発作と同じ意味)により体調を崩して会社や学校を休む、あるいは入院を余儀なくされることで社会的にも損失があり、さらに重症の方では命を落とすこともある怖い病気です。

今回の研究で、喘息の増悪に大きな地域差があることが分かりました。

福井県は喘息増悪が全国で最も高頻度に起こっており、最も良い長崎県の6.7倍でした。

入院、静注ステロイド、経口ステロイドの追加投与を必要とした喘息増悪の発生率(/100人・年)

福井県での喘息増悪がどうして多いのか、論文中では考察されていません。北陸地方全体で悪いわけでもありませんので、気候による影響ではなさそうです。

福井県では吸入ステロイドの使用量が少ないようなので、喘息の状態に吸入療法の強さが見合っていないのかもしれません。また、点滴で投与されるステロイドが多いことも関連しているかも知れません。いずれにせよ、喘息治療が適切に為されていないケースが多いようです。

下記ウェブサイトで詳細なデータが公表されていますので、ご参照ください。

https://med.astrazeneca.co.jp/medical/product/fsn_regional_data.html




Yokoyama A, et al. Regional differences in the incidence of asthma exacerbations in Japan: A heat map analysis of healthcare insurance claims data. Allergol Int. 2022 Jan;71(1):47-54.


Background

日本では、喘息死亡率の地域差は報告されているが、喘息増悪の地域差については広く研究されていない。そこで、健康保険請求データベースを用いて、日本における喘息増悪の発生率の地域差を調査した。

Method

本研究では、全国規模の健康保険請求データベースであるMedi-Scope(株式会社日本医療情報研究所)のデータを用いた。指標日(2018年10月1日以前に喘息と診断された喘息関連処方の最新日)に喘息を有する患者を解析対象とした。指標前期間を指標日の1年前、追跡期間を指標日の1年後と定義した。喘息増悪イベントの発生率を地域ごとに分析した。

Results

一次解析集団は、指標前の期間にICSまたはICS/LABAを4回以上継続して処方された患者24,883人であった。入院を伴う喘息増悪の発生率は、中国地方が最も高く(2.95/100人年[95%CI、1.97-4.43])、関東地方が最も低かった(1.52/100人年[95%CI、1.26-1.83])。複合アウトカム(入院、静注ステロイド、OCS(経口ステロイド:20mg以上/日の処方またはOCS10mg以上/日の増量)のすべて)に対する喘息増悪の発生率は、福井で最も高く(105.00/100人年[95%CI、64.53-170.85])、長崎で最も低かった(15.69/100人年[95%CI、10.84-22.72])。

Conclusions

日本では、喘息増悪の発生率およびその治療法に地域差が認められた。


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