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金子書房note

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金子書房さんのnoteに書かせいただいた記事をまとめました。
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記事一覧

【第12回】まとめに代えて:トトロの物語から考える子どものサポート(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 この連載では、子どものSOSの聴き方受け止め方について詳しく解説してきました。今回、連載は12回目となり、1年間が過ぎようとしています。連載の最後に、今までのまとめに代えて、映画「となりのトトロ」をもとに、主人公のサツキに焦点を当てて子どものサポートについて考えてみたいと思います。  となりのトトロは、1988年に公開された映画です。その後、何度もテレビで放送されてきましたが、視聴率は毎回高い値となっています。いつまでたっても人気が衰えない素晴らしい物語です。そのため、映

【第11回】子どもへの関わり方を磨く(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 子どものSOSを聴き、受け止めるときには、「何を言うか」という言葉の内容だけではなく、「どのように言うか」という言い方や雰囲気も非常に大切です。ところで、人と人のコミュニケーションは、言葉として文字にすることができる言語的な要素と言葉にならない言葉以前の要素に分けて捉えることができます。言葉にならない言葉以前の要素とは、声の抑揚やトーン、質感、リズム、間、など文字として表現しづらい要素で、これはプレバーバルな要素と呼ばれます。このプレバーバルな要素が、心をサポートする基本で

【第10回】心のサポートと心の成長(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 今までの連載では、子どもたちのSOSの聴き方や受け止め方について書いてきました。子どもたちのSOSの背景には、現実場面で直面する様々な困難があります。子どもは様々な不快な感情を抱きますが、それを大人に受け止めてもらうことによって、現実に向き合っていくことができます。それが子どもの成長につながっていくのです。今回の連載では、このことについて詳しく説明したいと思います。 現実と気持ちを分けて捉える 一般的に子育てでは、「子どもの気持ちに寄り添う」ことが大切と言われています。ま

【第9回】子どもたちのSOSを受け止め、サポートする関わり方 その2(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 今回も、子どもたちのSOSを受け止め、サポートする関わり方について書いていきたいと思います。今回は、やや難しい状況でどんなふうに話を聞き、どんなふうに関わっていくのかについて解説します。 子どもが今直面している困難を理解する 子どものSOSを受け止めるには、子どもが感じている辛さや苦しさを理解することが大切です。つまり、子どもが今直面している困難を理解することが重要なのです。  子どもが直面している困難は、色々な表現で語られます。例えば、「死にたい」と訴える子どもの話し

【第8回】子どもたちのSOSを受け止め、サポートする関わり方(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 これまで子どもの話を傾聴する時には、子どもが自分自身について語ることを促し、ともに眺める関係を保ちつつ話を聞くことが大切であることを解説しました。  今回は、子どものSOSを受け止め、子どもをサポートする関わり方について解説します。 温かく穏やかに関わる  子どもたちのSOSを受け止め、子どもたちをサポートするために、一番大切なことは温かく穏やかに関わることです。一般的に、人は相手の顔の表情や身振り手振り、声の抑揚から、安心・安全かどうかを感じ取ります(Porges、2

【第7回】認知行動療法の枠組みを活用して子どもの話を傾聴することを考える(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 前回、前々回を読んでいただいた方は、話を聞くときには、映画を一緒に見るような関係を保つことが大切だとわかっていただけたと思います。それは、傾聴する時の姿勢や態度だと考えられます。しかし、子どもの話を聞くときに、具体的にどのようにしたら良いのかはまだ明確ではありません。そこで今回は、具体的な子どもの話をもとに、認知行動療法のモデルを活用しながら考えていこうと思います。 クラスで無視されていると訴える中1女子の訴えから  Aは、中学1年生の女子です。2学期の中頃から頭痛や腹痛

【第6回】ともに眺める関係(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 前回、傾聴することは、人と一緒に映画を見るようなものだということをお伝えしました。傾聴とは、「聴き手が話したくても話さないで、話し手の話をよく聴かなければならない」という性質のものではなく、語られるストーリーを話し手と一緒に眺めながら、話し手の話についていくことなのです。そして、人と一緒に映画を見るような姿勢で傾聴することは、傾聴にとって重要だといわれている、受容(無条件の積極的関心)、共感的理解、一致という3つの姿勢と共通すると考えられます。  今回は、傾聴とは人と一緒

【第5回】子どもの話を傾聴すること(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 前回までに、子どもの深刻なSOSをどのように受け止めたら良いかについて書いてきました。例えば、「死にたい」という訴えがあったときに、まずは、話してくれた事に感謝を伝えることが重要であることを説明しました。こんなふうに、SOSを受け止めるためには、具体的な工夫がいろいろとあります。一方で、今まで紹介してきた関わり方の背景には、子どもの話を傾聴する姿勢があります。傾聴する姿勢があるからこそ、具体的な工夫が意味を持つのです。そこで、今回から数回をかけて、傾聴について書いていきたい

【第4回】自傷行為への関わり方(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 前回のnoteでは、リストカットなどの自傷行為をしている子どもに対して、手当てをするように約束することを通して関わりを持つことをお勧めしました。自傷行為そのものについては、話し合うことが難しい段階でも、手当てについて話すことを通して、自傷について安心して話すことができる関係づくりを目指すのです。  今回は、子どもとの関係性がある程度深まった段階で、自傷行為そのものについてどのように扱っていけば良いかについて考えて行きます。 やめさせようとすること  前回も説明しましたが

【第2回】「死にたい」「消えたい」「自傷した」という訴えがある場合(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

深刻なSOSの受け止め方  子どものSOSは色々な形で表現されます。例えば、朝学校へ行こうとするとおなかが痛くなってしまうというのは、身体症状に現れているSOSです。怒りっぽくなって、ちょっとしたことで暴言や暴力が出てしまうというのも感情面に現れているSOSです。いつまでたってもゲームが止められず、夜遅くなるまでずっとゲームばかりしていることも、行動に現れている一種のSOSだと考えて良いとと思います。つまり、子どものSOSは言葉で表現されるとは限らず、身体症状や感情、行動など

【第3回】自傷行為を知ったときの聴き方受け止め方(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

 自傷行為というのは、自分の体の一部を意図的に傷つける行為です。手首をカッターなどで傷つけるリストカットがよく知られていますが、その他にも、針などを自分の体に刺す、自分を叩く、噛む、頭を壁にぶつけるなどがあります。  自傷行為は、「耐えがたい苦痛に耐えるための孤独な対処法」(松本、2018)と言われます。自傷をする子どもたちは、人に悩みを打ち明けたり、人に頼ったりせずに、自分1人だけで苦しい気持ち・辛い気持ちをなんとか乗り切ろうとしているのです。  自傷行為の背景には、辛

【第1回】今の子どもたちへの危機感(半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表)連載:子どものSOSの聴き方・受け止め方

はじめに  この度、SOSの聴き方受け止め方というテーマで連載させていただくこととなりました。非常に深いテーマですので、私なりの問題意識や経験に基づいて、意味のある内容をお届けできるように努めたいと思います。  実は、このテーマで連載させていただく背景には、私なりの危機感があります。まずは、その危機感についてお話しさせていただこうと思います。 子どもの自殺数が増加  日本の自殺者数は、平成10年に大幅に増加して3万人を越えて以来、10年以上横ばいで高い水準が続いてきました

スクールカウンセラーとして考える子どもとのちょうど良い距離感 (半田一郎:子育てカウンセリング・リソースポート代表) #こころのディスタンス

子どもの頃、大人が何もかもわかったような顔をして対応する姿に、とても腹が立ったことはないでしょうか。しかし大人になると、何故あんなに腹を立てていたのか忘れてしまっている人がほとんどではないでしょうか。誰もが体験して来たのに、とても遠くなってしまった子どもの頃の気持ち。ずっと子どもの心とかかわり続けてきたスクールカウンセラーの半田一郎先生に、子どもの心との距離について語っていただきました。  私はスクールカウンセラー(SC)として20年以上活動してきました。多くの人は、SCは