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【文字起こし】対談「仕事を引き継がナイト」@山形県庁16階ミーティングスペース「そららぼ」(2024年1月12日開催)

開催案内

【AI要約】この記事は、公務員の業務引継ぎに関する対談番組の様子を収録したものです。山形県職員へのアンケートの結果から、引継書の重要性と課題が明らかになり、「引継書テンプレート」が作成されました。テンプレートには、新年度のタスクリスト、用語集、業務手順、年間スケジュール、関係者一覧などが含まれています。また、ゲストの山本晃平氏を交えて、引継ぎの現状と課題について議論が行われました。対談を通して、円滑な業務引継ぎの重要性と、テンプレートの活用方法が説明されています。

NottaによるAI要約

【導入】

山本泰弘:時刻は午後6時を回りました。お集まりのみなさま、一週間お仕事おつかれさまでした。MCを務めます山本泰弘です。どうぞよろしく。
 今回のそららぼワクワクセミナーは、ラジオ番組のイメージで視聴者・参加者のみなさんからのコメントを拾いながらの進行にトライしていきます。ゲスト山本晃平さんに聞きたいことでも、今回のテーマ「業務引継ぎ」に関するエピソードでも、人助けのつもりで気楽に書き込んでください。みなさんのコメントが頼りです。

配信スタジオ・山形県庁16階ミーティングスペース「そららぼ」

 さて、私たちが配信スタジオとしてますのは、山形県庁最上階のおしゃれ空間「そららぼ」です。ここは2021(令和3)年度に職員有志がアイデアを出したり、作業したりしてできた空間です。もともと平凡な事務室的な空間だったんですけれども、他の県庁や役所でもおしゃれなスペースを作ろうという流れがありましたので、その流れに乗るように、山形県庁でも建物自体は古いんですけど「ここのスペースはリフォームしよう」ということで、若手を中心とした有志が集まってデザインを考えたり一部壁紙を貼ったりとかしてできたスペースです。

 日中は仕事の話し合いやWeb会議の場として活用されていて、昼休みは、県庁の中でお昼を食べる場所がなかなかないので、みなさんがくつろいで昼食を食べるスペースになっています。ただ仕事終わりの時間は人がほぼいなくてもったいない状態なので、ここを活用しようというプロジェクトを、「オフィつく」という名前で、これもまた有志でやってます。
 他の県庁とZoomでつないで話す「日本列島オフィスの旅」という会をしたり、今回のようなゲストセミナーや、ボードゲームの会、ドローンを飛ばしてみる会をしたこともありました。今後も活用アイディアや仲間を募集してやっていきます。


【語句の説明】

山本:今回本題にたどり着くまでにたくさんの固有名詞が出てきますので、初めに解説していきますね。
 まず、ここの空間「そららぼ」というのが出ました。そしてここを活用しようとする職員有志のコミュニティ「オフィつく」というのがありました。
 続いて、本題の引継書テンプレートに関わる「ジョブチャレンジ制度」という単語が出てきます。これは引続書テンプレート作成の母体になった公式の制度なんですけれども、これを仲間である三浦拓さんから解説してもらいましょう。お願いします。

三浦拓さん(山形県職員・2022(令和4)年度ジョブチャレンジ制度メンバー)

三浦:山形県の三浦です。よろしくお願いいたします。
 「ジョブチャレンジ制度」は、山形県の若手職員が行政課題の解決のための施策提案をするために、勤務時間を使って自由に議論や活動するという枠組みです。昨年度我々は「働きやすい職場づくり」というテーマのもと、私三浦と山本君含め4人の班で取り組みました。本日のテーマの引継書テンプレートを作るですとか、「電子決裁できないとリモートワークできないよね」とか、「もっと電子ツール活用できるんじゃないか」ってことで、約1年間活動したものになります。
 今日山本君から話題提供がある引継書テンプレートは、「異動につきものの業務引継ぎをちゃんとできないか」っていう課題に対して、山本君中心にみんなで作ったんですけど、その結果今や県職員みんながそれを使えるようになってます。
 今ジョブチャレンジは2年目に突入して、新しいテーマとメンバーで活動が進んでいます。

〔引継書テンプレートダウンロードページ〕

山本:ありがとうございます。これは、いろんな役所で近年行われてるもので、有志の職員を集めて、本業とは別に「業務時間の一部を使って自由な発想で活動・提案してくれよ」という仕組みの山形県バージョンです。後からもこの「ジョブチャレ」という言葉が出てきますので覚えておいてください。
 そしてもう一つ、「つくば院生ネットワーク(TGN)」というグループ。これが僕とゲスト山本晃平さんとの接点なんですけど、昨年秋にこのグループの同窓会がありまして、そこで何年かぶりに山本晃平さんに再会した。その縁から今回ゲストに来ていただきました。


【ゲスト紹介】

山本:ではここで登場していただきましょう。山本晃平さん、よろしくお願いします。

山本晃平さん(左:多摩大学 ルール形成戦略研究所 客員研究員)
(右は姫路市イメージキャラクター「しろまるひめ」さん)

山本晃平:はい。よろしくお願いします。山本君とは親戚ではないんですが偶然同じ山本ということで(笑)。僕は「山本君」って呼んでます。

山本:僕からは「晃平さん」ということで。
 まず、今回晃平さんには多摩大学の研究者の人ということでPRさせてもらいましたけれども、これはいわゆる「二枚目の名刺」というやつですか。

晃平:はいはい、そうです。

山本:一枚目はというと、実は大手外資系コンサルティング会社であると。そういったプロフェッショナルの顔を持ちながら、今回参加していただきます。

晃平:はい、よろしくお願いします。
 実は山本君とは同じ大学だったっていうこともあって、知り合いなんですが、大学出た後は基本的にシンクタンクと外資コンサルにいて、基本は政策立案ですとか、組織改革みたいなこともしてます。

山本:この大学っていうキーワードが「つくば院生ネットワーク」ともつながってくるんですけれど、晃平さんからこれについて語ってもらえますか。

晃平:筑波大の大学院生が集まっておもしろいことできないかなと始まった会です。院生って、研究室に引きこもってしまってだんだん楽しくなくなってくるので……。いちばん記憶に残ってるのは、学園祭で院生が自分の研究を一般の来場者に発表して、その一般の方から点数をつけてもらって優勝者が決まるっていう「院生プレゼンバトル」。発表する院生は自分の研究に自信満々な人たちなのに、プレゼンで理解してもらえるかどうかで勝敗が決まるっていうなんかエグいイベントなんですけど、私は楽しいなと思って参加してました。

山本:これって、専門的な研究をやっている人たちが「研究の中身をわかりやすくプレゼンで伝えよう」、それを学園祭とか、あと駅前で路上ライブみたいな形で披露しよう、という、サイエンスコミュニケーションという取り組みなんですね。そんな院生のグループが筑波大にあって、何年ぶりかの同窓会があった、という流れなんです。
 これらあまり関係ないと思われるかもしれませんが、「専門的なことを初心者とか専門外の人にわかりやすく伝える」というのは、実は業務引継ぎに関わってくるところですので。

晃平:なるほど。

山本:あとはそれだけじゃなくて、今回「固有名詞をはじめに説明しましょう」と言ったのも、実は学術論文のテイストを取り入れたんですね。
 どうしても、いろんな場所で、聞き慣れない言葉が飛び交っちゃう。こういうセミナーの場でもそうですし、「異動して新しい職場に行ったら、知らない単語が飛び交っててわからない」という声も――後で紹介するアンケートで出てきますが――、公務員におけるありがちな体験なんです。やっぱり論文も、「まずこういう言葉をこういう使い方で使っていきます」と定義していくので、その点「院生ネットワークの経験が生きてるのかもな」と思っているところです。

晃平:……ああ、そうだと思いますよ(笑)。

山本:ありがとうございます(笑)。


【業務引継ぎについての山形県職員アンケート結果】

山本:すでに入りかけてますが、ここから前半の話題、職員アンケート結果に進んでいこうと思います。
 さっき三浦さんからご紹介ありましたジョブチャレンジ制度というのは、「働きやすい職場作り」というテーマが与えられて、その中で自由に提案とか調査とか取り組んでみなさいというお題が与えられていた。そこで「引継ぎという点にメスを入れる」というのは僕の中で固まっていたんですけれど、その途中で「職員全体としてはどう思ってるのかな」と。予想・仮説としては、けっこう不満がたまっている――僕自身も異動先で大変だったことがあるので――。そういった声をあぶり出すためのアンケートをしたのでした。
 簡単にまとめた資料がこちらです。上半分が現状、下半分が対策になっています。

概略資料

 左上の円グラフ、「引継書に不便を感じましたか?」という問いに対して、8割超の職員が「不便を感じた」と。よほど慣れてる人はともかくとして、人事異動のたびにみんな不便を感じてる。
 不便を感じた内容として大まかにまとめると、多い順に「情報不足」、「ほしい情報がどこにあるかわからない」、「何をすればよいかよくわからない」。このほか、中には「すごいミスをするところだった」とか、「ほとんど何も引き継いでくれなかった」とか、「紙1枚と説明だけだった」とか……そういった声がたくさん来たんですね。
 続いて右側の棒グラフですね。「引継書の作成にいつ着手しましたか?」という問いへの回答が色分けで示してあります。ここで紫〔9月以前〕とか青〔10-12月〕の人はだいぶ早くから作ってるんですけれども、緑が年明け1、2月から、黄色が3月に入ってから、赤が3月の下旬、異動が発表されてから――という回答。ご覧のとおり、2月以前から用意している人が3分の1、3月上中旬の人が3分の1、3月下旬の人が3分の1、ときれいに分かれました。多くのみなさんがギリギリに作っているということがアンケートで可視化されました。

晃平:これおもしろいですね。
 普段民間の仕事だけじゃなくて官公庁の仕事もすることあるんですけど、担当者の方と一緒にプロジェクトを進めている最中に異動されてしまうと、新しい担当者の方に全然引き継がれていなくって……。いちばんひどいときは「なんでこんなことやってんの?」って聞かれて、「そう言われましてもね……」っていうことがありましたね。「なんで引き継がれないんだろうな」って思ってたら、こういうことがあるわけですね。なるほど。

山本:まさにそういうことを民間の視点からビシッと言ってほしかったんですよ。

晃平:ちょっとそうですね。でも、立派な方のときは本当に何の問題もなくスムーズに引き継がれる時もあって。問題があるケースもあんまり多くはないんですけど……。逆に聞かれることもありますね。「あの、これってどうしてたんですか?」って。

山本:僕も思い当たる節がありますね~。業者さんの方が詳しいから。

晃平:おもしろくなったんで発言しちゃいました。

山本:そんな感じで絡んでもらえればと思ってます。

晃平:わかりました。

山本:なかなかこういうのを可視化することもないわけですよね。「異動が発表された。じゃあ急いで引継書を作らなきゃ」といった雰囲気の職場だと「そんなものかな」と思うし……。早めに備えるっていう人はなかなかいないですからね~。「俺は備えてるよ」と言いふらしている人もいないでしょうし。
 これがごく簡潔にまとめたアンケートの結果なんです。
 さらに踏み込むと――、このアンケートでは、選択肢を選んでもらうのとともに、自由記述回答の項目も設けたんです。「引継ぎに関してどんな不便を感じたか、どうなっているとよいか?」という問いですね。僕の想定では、「書いてくれるのは1割とか数パーセントくらいかな」と思っていたんですが、それを大幅に上回る数と量の自由記述回答が寄せられた。約1200件の回答中、500件を超える、半数近い人が自由記述を書いてくれたという驚きの結果だったんです。それほど憤りや、言いたいことがたまっている。そんな数多くの声を集約した回答群がこちら。

職員アンケート自由記述集約

 「引継書には初心者視点が必要」とか、「年度初めにするべき作業の一覧が必要」とか、「年間スケジュールが必要」とか、「課題や懸案事項の伝達が必要」、「データや簿冊、道具等の保存場所の一覧が必要」――。こういったことに回答が集中しました。単純と言えば単純ですけれど。
 ここで晃平さんのコメントをもらおうかな。

晃平:そうですね。アンケート、私も仕事で取るんですけど、全然自由記述がつかないこともあれば、ものすごくつくこともあって。ものすごくついたやつは、ファクトとか建設的な意見というよりも、感情の発露が見られますね。ちょっと丁寧な言い方しましたけど、つまりは恨みとか怒りが文面に表れているものが多いですね。

山本:まさにこれも、ここには書き表せないほどの熱いというか、黒いというか、魂の叫びがありまして……。いろいろ角を取った結果がこれなんですよ。

晃平:やっぱり(笑)。

山本:本当に「不祥事になるところだった」とかありましたし。

晃平:あと、たまに「誰々さんは問題です」とか、具体的な名前が書いてあることもありますね。

山本:なるほど。そこまではなかったかな~。

晃平:なかったですか?「この部署が悪い」とか(笑)。
 すいません。話を戻すと――、至極真っ当な内容が書かれているなと思いつつ、当たり前のことを当たり前にするのってけっこう大変ですよね。

山本:そこなんですよね……。
 「自分が2年とか3年とか同じ部署にいて慣れちゃうと、はじめどんなことがわからなかったか忘れちゃう」という声が印象的だったんですよね。3年経つと自分ではもう慣れて当たり前になっちゃって、じゃあそこから引継書を作るとなると、すでに身についちゃってることを掘り起こして書かなきゃいけない。それが1週間とか短い間で作らなきゃならないと、どうしても漏れてしまう、限界がある。そういった課題ですね。

晃平:そうですね。交通費精算とかもそうかもしれないですね。週に1回その時間を持つようにしている人と、「忘れてた」とか言って3か月分出す人と。貯めると忘れてますもんね。「3か月前に乗ったタクシーって何だったっけ?」みたいな。で、貯める原因は、一回し始めるのが大変だからだと思うんですよね。

山本:なので僕らとしては「異動して新しい職場に着任した当初から引継書を作りましょう」と言いたい。「毎年8月を『引継書作成月間』にする」ことも提唱してます。


【Zoomコメント】

山本:早速コメントをいただいてますので、読み上げていきます。

三浦コメント:他県や晃平さんの外資コンサル企業での引継ぎがどのような状況かもお聞きしてみたいです。ちゃんと引継ぎされるのが当たり前なのか、全然ないものか………。私入庁1年目、前任者から引継ぎ全くなかったです。

山本:……そういったことは残念ながら「公務員あるある」の話ではあるんですけど。

晃平:なんか回答した方がいいですか?

山本:言えることはありますかね?シークレットですかね?

晃平:そんなことないですよ(笑)。
 官公庁って、言ってしまうと「ベストエフォート型」が多いと思うんですよ。「できる限りの最善を尽くしましょう」。
 いちばん強烈な例は、自衛官。「24時間勤務で給料出てるんだ」とか、「上司は部下を24時間使いたい放題の契約をしている」みたいな文化の中だと、「できる範囲でがんばる」っていうふわっとした条件に対して「できる限りやりまーす」って形なんですけど。
 一方、民間の契約って、多いのは請負契約で、「仕様書に書いてある内容を達成すればそれは1秒でやろうが100万時間かかってやろうが2千万円払います」みたいな契約になってるわけで。なので引継ぎがしっかりされないと、そもそも契約が終了できない。――ってことになると、引継ぎがなされる時間(工数)まで計算に含めた金額で請求するので、基本的に引き継がれないってことはないです。
 ですが、誰もケアしてないことはけっこう引き継がれないですね。「この人1人でやってて、ずっとそれで回ってて、上司もそれを気づいてなかった」みたいな、盲点なところ。

山本:なるほどね。職人芸というか……、言葉とか形式に表れない「暗黙知」でしたっけ。

晃平:基本的には社員が退職するときがいちばん引き継がれないと思いますね。
 で、「新しい人を採用してなんとかしろ、金払うから」みたいなドライなところがあるのかな。

山本:「後は野となれ山となれ」みたいな。いやー、実際それに近い声もやっぱりありますね。
 確かに顔の見える関係というか、ずっとこの組織に自分がいると考えると、知らない人が後任に入っても無下なことはできないし、悪い評判が自分に残っちゃう……。そういった抑止力はあるんでしょうけど、「もう辞めちゃうんだ」とか、「もう遠くの職場に行っちゃうんだ」という場合だと、抑止力がなくなっちゃう。あとは「そもそも備える余裕がない」っていう声もあるんですよね。

晃平:そうですね。意外と重要だなって思うのは、僕がいる会社は「社員を大切にする」とか「社会のために働く」みたいなのが社是になっていて、それが好きで集まった社員が多いので、意外とこういう「人の迷惑にならないようにやめよう」っていう人がすごく多いです。なのでモチベーションの観点だと「社長がどう考えてるか」とか「社風がどうなってるか」っていうのは実はすごく重要な気がしますね。

山本:そうやって社是がみんな共有されている会社というのはいいですね。

晃平:山形県がどういう雰囲気かは僕はまだわからないんですが、どうですかね?山形県もスローガンとかないんですか?

山本:確か……「現場主義」、「対話重視」、「県民視点」。

晃平:あんまり引き継がれなそうですね(笑)。

山本:まあ……だいぶ大きな視点のことですからね……(笑)。

晃平:それから、「引き継がなくていいことを引き継がなくていいんじゃない?」、「お金にならなきゃもういいんじゃない?」みたいな判定が下る、っていうのが民間の引き継ぎのイメージですね。

山本:「お金にならなきゃもういい」というのはどういうことですか?

晃平:余計な慣習とか……、引き継がなくてその業務ができなくなったとしても、その業務が儲からないなら、「じゃあ廃止しちゃおう」、みたいなのがある。

山本:経済合理性が働く、と。

晃平:そうです。

山本:そうやって削ぎ落としながらやっていく――、というのが民間だと特に働く。
 けれども役所だと、「一応これをやっておかなきゃいけないんじゃないか」――それがなぜやってるのかわかればいいんですけど、「なぜかわかんないけどやってる」っていう場合も、中にはあるんですよね。
 そういうのも、ベテランの人から「実はこういった問題とか発端があって、それでやらないといけないんだよ」と引き継がれていれば、「そういうことなのか」と伝わっていくはずですよね。

晃平:そうですね。「やらなくてもいいんじゃない?でもやめるっていう責任が取れない」みたいな場面ってけっこうありそうだなって思ってます。

山本:ああ、それは確かに。
 あとちょうど原田さんからさっきの話題に関わるコメントが。

原田コメント:公務員としては、住民サービス向上のためにも後任者が困らないような引継ぎをするのが当たり前と思っていますが、そうでない人もいるのが現状ですよね。😅

山本:もちろん後任者のために引き継いでくれる人が大部分だとは思いますけどね……。

原田コメント:諫早市の村川美詠さんの著書にも書かれていますが、1年目というか、異動初日から引継書を書き始めるように心がけております!

山本:村川美詠さんは、昨年の引き継がナイトに参加してくれた、著書を出している公務員の方です。
 理想的なお心がけですね。

晃平:こんな人がいっぱいいるといいですね。

高橋コメント:誰がどの所属に何年いて、どんな業務が得意で……というのがシステムで管理されているといいですよね。「3年目」とクリックすると、職員名がリストアップされて、いきなりの引継ぎではなく、その方がいるうちにジョブローテで引き継いでいきたいですね。そんなシステムを全自治体に導入して欲しいです。

山本:役所だと、「年度末でこの人はこの仕事は終わり。4月1日からこの人が来ます」ってことで、直接やり取りや説明をするのが3月最終週の1回か2回、1時間とか半日とか、そういったレベルで。引き継ぐ仕事を一緒にやっていくことになりづらいんですよ。

晃平:1人の業務だったらそうかもしれないですけど、その業務を3人でやるとローテーションを1年ずつずらせば解決しそうな気がするんですけどね。

山本:実際そういう体制の部署もあれば、一人親方で「隣の人がやってることはわからない」、「この人が休むと進まないんだ」という場合も往々にしてあるんですよね。まさに僕のいる班なんですが、昔は中堅やベテランと若手が2人1組でやっていた仕事が、何十年かの間に1人ずつになっている、と……。
 ――コメントありがとうございました。こうやって時々拾っていきますので、後半もよろしくお願いします。


【アンケート自由記述回答】

山本:前半最後に、印象的なアンケートの自由記述回答をご紹介していきます。まずは……

アンケート回答:引き継ぎのやり方がそもそも曖昧でよくわかりません。新卒でいまの部署に異動し、今年3年目で異動の可能性が高いため、来年度に向け、引継ぎの準備を進める必要がある状況です。初めて引継ぎする方向けの説明会などあると大変ありがたいです。

山本:こういう声があったことも、この番組をお届けするきっかけになったんですよね。
 次は、引き継ぎの仕方について。

アンケート回答:引継ぎ当日に引継書を読み上げるのは双方時間の無駄に感じる。また、専門用語が多く、すぐには理解できないので、事前に資料や引継書をメール等で共有し、当日は書類の場所や実務的なアドバイスを中心にするとより効率的になると思います。

山本:続いては、さっきの原田さんのコメントに関わるところです。

アンケート回答:経験豊富な異動前の知識で作成すると、転入1年目の何もわからなかった頃に感じた疑問を解決できない内容になっている。自分が1年目にわからず苦労した点は重点的に詳しく記載するようにする。

山本:そうやって後の人のために自ら取り組んでいる方の声です。
 ――ここまで、大まかではあるんですが、アンケート結果の紹介でした。


【引継書テンプレート&記載例解説】

山本:ではここからお待ちかねの引継書テンプレート本体を見てまいります。
 みなさんご覧になってるとは思いますけれども、僕が力を入れた点や組み込んだネタを裏話的に語っていこうかなと。
 晃平さんも見てくれましたか?

晃平:すいません。今初見で「おおっ」てなってます。

山本:じゃあ晃平さんをターゲットとして説明していきます。

晃平:はい。お願いします。

〔引継書テンプレートダウンロードページ〕


〔タブ1:表紙・目次・取扱説明書〕
山本:まずこれが、Excelのファイルを開くと出てくる1画面目です。この「目次」の各項目の青いラインはリンクが貼ってあって、クリックして各タブに行けるということですね。

 で、まず目に入ってくるのが「新年度やることリスト」。着任して「じゃあ一つ一つ学びながら調べながらやっていこうか」とすると間に合わない、期限が4月初めだとか4月中、というものがどうしてもある。そういったことが真っ先に目に入るようにしてます。着手時期とか、期限とかも加えて挙げておく、といった仕掛けです。
 次に「全庁的事務ルール」。これは「メールを送る際にBCC欄を使いましょう」とか、「決裁は余計なルート回さなくていいよ」とか。こういったこともパッと目に入るようにしてあります。
 あとはこのテンプレートの説明書、「トリセツ」ということで記載しました。
 いろんなところで使えるようにと思って作ったテンプレートですので、カスタマイズして――行を増やすというのはもちろん、書き方を変えたり、いらないところは削ったりして――くださいとか、「早めに着手し、少しずつ書き加えていきましょう」とか。そんなことを書いてあります。


〔タブ2:全体像・関係者〕
 次のページはこれですね。

 「全体像」としましたが、人物相関図のような図解があるといいんだろうなと思って、Excelの中で作ったのがこれです。
 なかなか凝ってると思いませんか?(笑)僕の今の業務を念頭にして、国では「動物愛護庁」があって、その東北の役所で「東北猫政局」があって、「マイニャンバー制度」があって、それで飼主と飼猫と地域猫がいて……。ステークホルダーを表した図。こういうのを作ってみると、言葉でいろいろ書いたり話したりするよりはわかりやすいよね、と。実際にアンケートの声の中でも「図があるとよい」っていうのは多かったんですよね。
 例としてはこのように作ったので、これをアレンジしてみてください、といったコーナーです。

晃平:山本君、これってみなさんからどんな反応なんですかね?
 けっこうここ作るの大変なのかな?って思ったんですけど、そんなことない?

山本:確かにね~。「文章で書く方がやりやすい」っていう人も多いとは思いますが。

晃平:絶対あった方がいいんだけど、「全員がこれを描く訓練をしているかな」っていう心配があったんで聞いてみました。「これが描けないから引継書テンプレートいいや」ってならないのかな……。

山本:確かに……。図形とかテキストボックスの組み合わせではあるんですけど。

晃平:文章で「こうです」って書くよりも、頭の中を整理しないと描けないものだと思うので、これ描いてるうちにスッキリするかもしれないですね。「あー、僕がやってたのってこれなのか」みたいな。

山本:「年度末の1週間で作る」とかじゃなく、「この職場にいる2、3年のうちに少しずつアップデートする」というイメージです。

晃平:そうですね。いいと思います。定着するかどうか、社会実験的にもすごいおもしろいなって思いました。

山本:ご参加のみなさんの反応もちょっと気になりますので、よかったら書いてみてください。

晃平:これご参加の方々は作れるかもしれないですけど、「自分の職場にいる一番できない人が作れるかな?」って思ったときに、みなさんどう思うのか気になりますね。

山本:なるほど、そういう視点大事ですよね。
 僕の想定では、Excelはみなさんある程度の習熟度があるだろうと思ったんです。年配の方含めて。

晃平:図形を置く作業はできると思うんですけど、この絵を生み出す、表現する、っていうのが大変じゃないかなって思ったんですよね。
 もしみなさん反応があればぜひ教えてください。

高橋コメント:本町にも定例的な事務を引き継ぐ様式があります。図式してあるほうがわかりやすいのですが、なかなか図付きの引継書に出会えない現実もあります。。。私も文章のみでタイムアップとなってしまっています。

晃平:時間の制約はありますよね。なので例えば「描けたら描いてみよう」とテンプレートに一言書いてあると、引継書の量が増えるかもしれないなって思いました。

原田コメント:相関図は、すごく伝わりやすいので、あると嬉しいですよね。最初に作る人は大変だと思いますが、一度作ってしまえば、あとはそんなに直すことがないはずなので、後任はそれほど労力は発生しないはず……。シンプルに相関図を作れる仕組みがあれば、なおありがたいですね。

晃平:確かに最初に「全部署で誰かがんばって作ってね」って言って、誰かが頑張って作ったら後の人は楽ですね。
 これって、シンプルな相関図を作るような絵のフォーマットってできないですかね?自分のいる自治体と、「監督官庁」とか「関連法・制度」、「関連団体」っていう箱があって、そこに自分の関わってるものを代入していく。

山本:そこもテンプレート化する、と。そうですね。そこは進化の余地がありますね。

晃平:山本君が山形県庁を楽にしていく。

山本:僕だけじゃなくて、みなさんが新しいバージョンを作ってくれても歓迎なので(笑)。

高橋コメント:絵のフォーマットいいですね。一からだと「どう表そうか……」と思って頓挫してしまいます。2種類位あると、使いやすいですかね?

原田コメント:テレビ局のドラマ担当部署には、簡単に作れるシステムがあったりしそう…(笑)

山本:そんなのがあるんですか?人物相関図っていうことですよね。

 続いては、関係者一覧。
 歴代担当者として夏目漱石さんが出てきます。経験者なんだけど、途中から留学でいなくなっちゃうので気をつけてね、と。

晃平:猫だから夏目漱石(笑)。

山本:もちろんそうです(笑)。
 昨年の回で、こういうちょっとした小ネタがなかなかいい、という声がありまして、気をよくしてるんですよ。

晃平:加担してしまった(笑)。

山本:ファイルを開きやすくなるという効果がある、と。
 僕はおもしろ路線で作っていたんですが、そういう効果が期待されるのか、と。

晃平:あると思います、実際。素敵な仕組みだなって思いました。

山本:なんか言わせたような感じで(笑)。

晃平:いやいや、本当に思う。本当に(笑)。だいたい仕事始めるのがおっくうなのって最初の一手目ですもんね。

山本:ちょっとずつそういった要素が隠れてますので。
 ……というか、次の年間スケジュールも猫ばっかりなんですが(笑)。


〔タブ3:年間スケジュール/ToDoリスト〕

山本:これも、アンケート回答で「ガントチャート」を提案してくれた人がいまして。
 「簡単な形のチャートは何だろう」と思うと、こういったExcelのセルを使ったスケジュールになったんですね。
 「この時期にこの業務をやる」というのは、4月とか初めのうちだったら引継ぎで記憶に残ってますけど、年度初めの忙しさが一段落した時期とか、秋冬に「何するんだっけ……」ということになるので、こういった表があると、「いつの間にか期限が過ぎてた!」とかいうことがなくなるわけですね。

晃平:業者への発注が必ず遅れる人とかいないですか。
 「やらなきゃと思ってるんですけど、うーん」とか言って、8月の予定だったのに10月発注になるとか、課長に言われて始めるとか。

山本:ありますよね~。
 その仕事をわかってる人が他にいるから、歯止めが利くけれど……。僕の今の仕事ですけど、それがなくて自分が過去の資料とか見て気づかなかったら誰も気づかずスルーしちゃうな、というケースもありまして。

晃平:そう思うと、「このイベントがあるからここまでにこれをしなきゃいけない」みたいなマイルストーンもあると、後任者に「やんなきゃダメか~」感がもっと切実に伝わってるかもしれないなって思いました。

山本:そうですよね。このチャートではごく簡単に、「全国都道府県愛猫会議」は12月が本番〔セルが濃い青〕だから、10月から準備〔セルが薄い青〕しとかなきゃいけないよ、と。

晃平:なるほど。そういうことか。これで遅れられないことがはっきり伝わるわけですね。

山本:そうですね。「愛猫会議は12月」とだけ資料に書いてあったら、「じゃあ12月に何かすればいいのね」と思っちゃう可能性がある。
 「準備・行動開始の時期を重視して記述する」ことが注意点ですね。

晃平:助かる人多いんじゃないですかね。

高橋コメント:マイルストーンもわかりやすいですね。〔自分なら〕就学時健診とか保険証年次更新など、具体的なものですよね。


〔タブ4:用語集・Q&A〕

山本:次のページが用語集となっております。
 これは初めに説明してしまいましたけれども、どうしても飛び交う単語がわかってないと理解が始まらない。しかも、音で聞くよりも文字じゃないと。
 例えば「ほうじんけんみんぜい(法人県民税)」と言っても、音としては聞こえてきますけど、漢字変換されることで何を意味してるのかがわかる。
 しかも、ときどき「法律上の用語は『個猫番号』だけど、実は現場でやり取りされている言葉は『マイニャンバー』だ」とかいう場合もあるので、その二つが同じということもこうしてわかる。

晃平:いいですね。なんか通称使えないと「お前素人だな」みたいな雰囲気になるときありますよね。

山本:昔は時間かけて慣れていけばよかったかもしれないですけれど。こうやって脳内変換に時間がかかると、だいぶロスだし、「これとこれって同じだったんですか/違ったんですか」というような誤解で起きているミスとかもありますよね。
 また、役所のみなさんにはピンと来たかもしれませんが、記載例の「NYADAMS(ニャダムス)」は「ADAMS(アダムス)」っていう実在のシステムをもじってます。これもね、すごい初心者に不親切なシステムなんですよ……。

 あとはQ&A欄もおもしろ要素があります。
 まず、「根拠法令:生類憐みの令」っていうのと、あとは「ネコ型ロボットは飼猫に含まれない」っていう判例が出た令和94年の日付は、ドラえもんの誕生日に合わせたんです。

晃平:なるほどね~。アハ体験できました。なるほど。9月3日生まれなんですね、ドラえもん。

山本:で、ドラえもんは飼猫ではないという結論になってます(笑)。

晃平:あっ、高橋さんから褒められてますよ。

高橋コメント:生類憐みの令が施行令になっていますね笑 小ネタ満載ですね。


〔タブ5:データ・紙資料保存場所〕

山本:次のページが、データや紙資料の保存場所。これも意外とアンケート回答が多くて、「まず着任したらデータの保存場所や資料の置き場所を探すところから始めなきゃいけない」というのが多かったんですよ。ちゃんと整理されている部署の場合はパッと見でわかるかもしれないですけれど、なかなかそうはいかなかったりしますので。あとは「こんなところに資料があると思わなかった」ということを予防しなきゃなと。
 あと、USBメモリは使用後は逐一データを消すように、とか。


〔タブ6:業務手順〕
山本:続いて次のページは、実際のそれぞれの仕事の手順を書いてもらうテンプレートです。

 レシピのように「まずは何して、次は何して……」と書ければベストですが、ある程度粗くても、過去の書類を見ながら進めるのに役立つはずです。仕事の中身はそれぞれの職場で全然バラバラなので、とりあえず簡単なテンプレートを作って、カスタマイズしてくださいという狙いです。

晃平:難易度があるのおもしろいですね。

山本:これもアンケート回答や、前回の「引き継がナイト」のときに原田さんが挙げてくれた要素を入れてます。


〔タブ7:システム操作手順〕
山本:こちらはシステム操作手順。これは一画面一画面を貼り付けていくテンプレートです。

 アドバイスとして「具体的な操作を記述します」と入れてます。極端な例ですけど、「パソコンの電源を切る」と書いちゃうと、「コンセント抜いた!ヨシ!」となっちゃうけど、「スタートメニューの『電源』内の『シャットダウン』をクリックするんだよ」ということで、仕事猫さんに登場していただきました。

晃平:助かると思います。素晴らしいです。

山本:本当に直感でわかりづらいシステムばかりなので……。だから、こういうところに入ってきた新人の若者は大変だろうなと。


〔タブ8:課題・懸案事項、タブ9:懸案カルテ〕
山本:そして、課題とか懸案事項のページ。

 これも、「課題をちゃんと書いておきましょう」、「ヒヤリハット事例を書いておくのが大事」という声を反映しています。
 裏を返せば、年度の途中に地雷のように問題が出てきて、「自分は全然知らなかった~」といった声もあったんですよね。

晃平:ありますよね~。経験が浅ければ浅いほど気づかないですよね。

山本:年度末の前後では何事もないように見えても、実はそういう問題があった、という……。
 そんなふうに、反省点やヒヤリハットが風化してしまって、また同じことが起こってしまう――。これはいろんな部署でありがちなことかなと思うんですよね。
 これも粗いテンプレートではあるんですけれども、「懸案カルテ」という名前で一つ一つの重い懸案について詳しく書いておきましょう、と。


〔タブ10:根拠法令・要綱要領・経緯〕
山本:そして、根拠法令とか要綱・要領、経緯。
 職場の机には法令集がドドンと並んでいて、前任者から「これ見ればわかるよ」と言われることもありがちですが、リストにまとまっていたほうがいいので。

高橋コメント:過去に何があって事務改善してきたのか、知りたいですよね。引継書に書ききれないので、日々の起案文書に数値の導き方や留意点を細かく書くようにしています。昨年度の紙媒体の起案を見て、ある程度問題を回避できる部分もありますよね。

山本:コメントありがとうございます。そうですね。実際はそうやって前の人が残してくれた記述を、宝探しをするようにして見つけて、「こういう記述があったから助かった」という経験もみなさんあると思います。やっぱり役所は、蓄積していくものといったら、紙なんですよね。こうやって微妙な経験値が流失してしまう。

晃平:もったいないですね。確かに。
 あと思ったのは、公務員だと「下手なことを言って後で追及されたくないからはっきり書かない」っていうことはあり得るんですか?

山本:確かにね~。そこは理由とバランスがありまして、
決裁文書などで、印刷した文面にはごくビシッとしたことしか書いてないけれども、実は付箋で手書きで「こういうことだよ」と貼るのはよくありますけど、それも人によるわけで。親切な人はそうやってちょくちょく書き込んでくれるけれども、そうでない人は単に印刷した文書が残っているだけというケースもありますからね。

晃平:そしたら、このテンプレート、文書の目的を考えると、「非公式で文責は問いません」ぐらい書いてあると筆が進むかもしれないですね。

山本:あー、確かに。実はそこもちょっとした課題で、「引継書」と言って僕がイメージするのはこういった担当者視点で初心者向けガイドのように書かれているものなんですが、別の役所だと、公文書の形で本当に最低限のことだけが書かれていて決裁を回すような、だいぶカタいものを引継書と呼んでいるところもあるんですよね。フランクに書いてもらいたいとは思うんですけど……。
 あと、法令に詳しい人からは、「こういったものも公文書なんだから取り扱いには気を付けましょう」というご指摘がありましたね。

晃平:僕としては、非公式、責任なし、って書いてあると嬉しいかなって思いました。

山本:そうだとだいぶ小ネタも入れられますからね。


【ゲスト・Zoomコメント】

山本:ここまでひととおり、現状の引継書テンプレート1.1版を見てきました。

晃平:このテンプレートの目次とか構成、内容は相当意味がありますよね。自分で引継書を作ってみることを考えると、引き継ぐときの視点が網羅されている感じがして、それだけでもすごく意味があるなって思いました。

山本:年度末が迫ってて、「残り1週間で作らなきゃ」と思うと、どうしても視点が偏っちゃう。

晃平:そうですね。主に最近あったことに偏りそう。

山本:はいはい。しかも経験者の視点ですからね。自分が異動してきたばかりの時のことを思い出してもらえればと。

晃平:そうですね。そこが一番の貢献な気がします。

山本:あとは、同年代の職員が隣の課から異動してくるんだったら、役所のルールはだいたいわかってる、ということになりますけど、そうとは限らないですからね。新卒の人が来るというのはもちろん、転職で民間から来る人、「役所のシステムさわったことがない」っていう人が来るケースも考えなければいけない。
 はじめに挙げた画像では、「引継ぎの円滑化で育休等も取りやすくなります!」というプラスの面をアピールしたわけですけれども、裏を返すと精神疾患で休んでしまう人ですとか、年度途中で離職する人――年度末に辞めるとも限らないわけですから――、も珍しくなくなっているので、引継ぎの重要性はどんどん高まっているわけです。

晃平:そうですね。転職時代になりましたからね。

山本:いや、本当に。実際は欠員補充の臨時職員の人たちががんばってもたせてるっていうケースも多いんですよね。

高橋コメント:なかなか全てをしっかり埋めることは難しい面もあるので、目次の視点を大事に引継書を作っていきたいと思いました。

山本:コメントありがとうございます。これは一人だけで年度末に全部埋めるということではなくて、はじめの人から次の人へ……と徐々に書き足していって、「秘伝のタレ」のようなものができてくる、ととらえてもらえれば。

晃平:それを聞いて思いましたけど、逆にこれが崇拝されて、「これを変えるなんてとんでもない」みたいになるんだったら見直したほうがいいんだろうな~。作り始めたときに、見直す時期を決めとくのもいいかもしれないですね。

山本:なるほど、「何年経ったら必ず見直してね」と。
 過去の記述や説明の中に、「もう時代遅れになって変えなきゃいけないのに残っちゃってる」ということも出てくるかもしれないですから。


【お開き】

山本:そんなこんなでもう予定の時間が迫ってまいりました。
 みなさんお付き合いいただきまして、コメントもたくさんいただきまして、ありがとうございます。
 さっき、離職とかネガティブなことを言ったわけですけれども、不親切な職場になってしまうと、特に若手が理不尽を感じて離職しちゃうとか、仕事のやり方がわかんなくて時間ばかりかかって過労になっちゃうとか、あとは不祥事や謝罪会見として報道される業務ミスの中には引継ぎがなされなかったことによるものもあるわけで――、そういったことを予防するために「引継書テンプレート」を役立ててもらいたいです。
 長年「働き方改革」と言われてきてますけれど、実は業務引継ぎが大事だっていうことは見過ごされて、DXとかバズワードに踊らされちゃう。役所は人が替わっても別に何事もなくやっていけてるように思われますけど、実はそれで苦労している人がいるし、がんばって引き継ごうとしてる人もいる。そういった状況に注目してもらいたいと思っています。
 晃平さんからも最後に一言いただければ。

晃平:素敵なテンプレートだなって思いました。テンプレートもそうなんですけど、こうやって若手が発想して解決策を作り出すっていう取り組みが続くことで、30年後とか時代が変わっても、「新しいことをする」っていう伝統が残ってくれると素敵だなーって思いました。

山本:ありがとうございます。

高橋コメント:ダブル山本さんで、楽しいラジオ番組でした!気付く点も多かったです。貴重な機会をありがとうございました。

原田コメント:リスナーを飽きさせない、しっかりとした構成の番組配信、ありがとうございました!

山本:そういったみなさんの応援のおかげで、なんとかここまでやってこられました。
 最初にアンケート結果の棒グラフをお見せしましたけれども、みなさんはここに参加したことで引継書作成に着手したと言っても過言ではないので、着手が早いほうの3分の1のグループに入っています。まだ年度末までには時間ありますので、このテンプレート、後輩や仲間のために、感謝される引継ぎを目指して役立てていただければ幸いです。引継ぎの時期に向けて少しずつ準備していきましょう。
 ――ということで、今回の「仕事を引き継がナイト」お開きです。ありがとうございました。改めてゲストの山本晃平さん、ありがとうございました。

晃平:ありがとうございました。

【終】


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