
京都精華大学萌芽的研究助成(2020-2023)2021年度 活動報告
(旧ブログに2023年2月12日に掲載した記事をアーカイブのために転載しています)
研究期間 2020年 6月 1日~2023年 3月 31日 ( 36カ月)
2021年度
新型コロナウイルスの影響をうけ、海外におけるフィールド調査の実施はできなかったが、文献調査と国内における調査を中心に行い、2021年8月に京都精華大学が主催する「第12回アジア研究国際大会(ICAS12)がオンライン実施され、本研究プログラムでパネル発表を行った。
ICAS12
Religion and Modernity(宗教と近代性)、Public/Private Spaces and Religiosity (パブリック/プライベートスペースと宗教性)という二つのテーマでセッションを行い、一部の研究分担者に加え、ネパールやイラン、ベナンなど異なるアジアやアフリカ地域を研究する研究者が参加した。
公開勉強会
2022年2月26日には、公開勉強会・進捗報告会を開催し、樫尾が沖縄の宗教性について進捗報告を行った他、協力者のArnaud ZOHOUが日本・ベナンの宗教と文化に関する博士課程の研究計画、阿毛が日本のヤングムスリムに関する調査進捗について、それぞれ進捗報告を行った。2021年度の科研費の公募において、樫尾を代表者として研究チームのメンバーを増やし基盤研究Aに応募したが、残念ながら不採択だった。海外では研究分担者のファビアン・サンソンが代表者を務め、フランスの競争的研究資金ANRに女性とイスラームに着目した研究計画(RIMA)を合同応募し、採択された。個人レベルでの研究は国内のムスリムや礼拝所に着目し調査を進めたほか、研究のアウトプットとして記録映像の作成を進めた。それぞれの研究分担者は個人研究を進めており、海外でのフィールド調査は実施できなかったが、報告やオンラインでのインタビューなどを進め、今後の出版を視野にいれて活動を進めている。
2021年度の研究計画
新型コロナ感染拡大などを経て、2020年度の後期に提出された研究計画(改正後)は以下のとおりである。
勉強会 …年2回の勉強会の開催(2020年度の海外研究者の会議などへの参加は基本的にビデオ会議にて行う。国内の研究担当者については随時検討の上決定する)
本学での勉強会を開催すると同時に、国内フィールド調査(今後の研究展開へ向けた試験的な調査)を行う。その際に可能ならば空間や宗教、宗教建造物などに興味を持つ本学の学生も少人数参加できるようにする。
研究のアウトプット … 2020年度の研究成果の発表方法として、研究会などは主に遠隔で行うほか、海外の研究担当者から送られた映像資料や音声資料、本研究に纏わる記録影像やインタビュー影像、実際の国内フィールド調査の様子の記録影像などを編集し、オンラインにて研究成果を共有する。
本助成申請は、上記のフィールド調査や勉強会の開催費、アウトプットとしての影像資料の編集等に当てられる。
外部資金への応募 …科研費(基盤研究ないし、国際共同研究加速基金)への応募を予定(本年2020年11月)しているほか、フランス、アフリカの研究機関(IMAF、サンルイ大学、アビジャン大学)との共同研究として、フランスの国立研究機構(ANR)の海外共同研究助成(4年間プログラムで一年更新可)の取得を目指す。
研究分担者のファビアン・サンソンが代表者を務め、イスラームと女性、シティズンシップ等に着目した研究計画をフランス政府の競争的研究資金ANR(Agence National de Recherche)に応募し採択された。研究テーマはInequalities, Radicalities and Women’s Citizenries: Plural Islamic Religiosities in the Maghreb/Muslim West Africa Space (RIMA)、フランス、カナダ、西アフリカ地域と日本の11人の研究分担者を含む4年間プログラムで全体の研究資金はおよそ3500万円(272000€)。
2021年度の研究活動
上記の計画に対し、年二度の勉強会については、8月のICAS国際会議でのオンラインセッションおよび2月の勉強会・進捗報告会を行った。
■ 第12回アジア研究国際大会(ICAS 12)
以下にそれぞれのセッションの参加者と発表タイトルを挙げる。・パネルタイトル
Religiosity in Modern Spaces. Perspectives from Africa and Asia
発表タイトルおよび発表者
Arnaud Zouhou Contemporary reinterpretation of vodun in Benin
Kenichi Tani The Irony of Religious Excess in the Contemporary Iran
Takao Shimizu Transformation of the meaning of the space of worship of Islam Mosques in Mossi Society, BurkinaFaso
第二セッション「PUBLIC/PRIVATE SPACES AND RELIGIOSITY」
Naoki Kashio Spirituality as an Indicator of the Differences between Public and Private Aspects in Modern Spaces
Frederique Louveau Plants souls in Asia and Africa : between spirituality and nature management
Mitsuru Niwa Considering the Dynamics of the Religiosities and their Relationships with the Public/Private Sphere in Nepal
Kae Amo Islam in Senegal between public and private : from streets to cyber spaces.
第一セッションでは、ベナンのVoudou教、イランの伝統儀礼、インドネシアのハラールコスメ、ブルキナファソの礼拝空間など近代・現代の社会における宗教のあり方について、個別事例についての発表を受けて議論し、第二セッションでは、空間との関わりから、日本、セネガル、ネパールなどその他の事例も交えて異なる地域や文化圏の比較を行った。それぞれのセッションには、発表者と研究会メンバーに加え、国際シンポジウムに参加した異なる文化圏からの研究者たちがそれぞれ10人ほど参加し活発な議論が行われた。
発表資料・発表動画 公開URL
■2月26日 第二回勉強会・進捗報告会
研究進捗報告 樫尾直樹 「沖縄の霊性風土ー宗教学方法論の再検討のために」では、方法論的なアプローチとして、宗教実践と社会科学や宗教学の枠組みのなかで、個人的な経験や体験を通した実証的な「知」のありかたやその学術的な利用について議論が行われた。また、Arnaud ZOHOU (セネガル国立ガストンベルジェ大学)が日本とベナンの文化・宗教的な共通点に着目した博士課程の研究計を発表したほか、阿毛が「日本のヤングムスリムの生活空間・都内のモスクに関する調査進捗」について報告を行った。
勉強会詳細・アーカイブ
ウェブサイト(研究会ブログ)の設置と映像資料の公開
昨年度作成した研究会のウェブサイト(ブログ)は引きつづき更新し(https://resm2021.com/)、研究成果や記録映像、研究分担者のそれぞれの研究成果(出版・研究発表など)について公開をしている。現在、日本語・仏語に加え、英語・日本語のバイリンガル表記を整備中。