生活レベルを落とせるのは天性か。
月日が経つ度に質素倹約が加速する。
一度生活レベルを上げたら、収入が下がるような事態に直面しない限り落とすことはできないと言うのが世間一般の認識である。それくらい、一度継続的な快適さを味わってしまうと、それが剥奪されることへの心理的抵抗が大きいのだろう。
だからこそ、生活レベルを一切引き上げないことが、経営でも家計でも重要な、毎月確実に出ていく固定費を安く抑え、健全な資金繰りとなる秘訣とされていて、FP界隈で固定費の見直しが重要視されているわけである。
実際にビル・ゲイツさんは飛行機に乗る際、料金を多く支払ったところで早く着くわけではないことを理由にエコノミークラスに乗っているし、マクドナルドでは1ドルのクーポン券を利用する。
ウォーレン・バフェットさんも1958年に3.15万ドルで買ったオハマの家に住んでいるし、若い頃は理髪代に10ドル支払うのも嫌がっていた逸話がある。極端な例であることは重々承知しているが、ふたりともフォーブズの長者番付にランクインする大富豪であるものの、生活レベルは日本の会社員の方が高いかも知れない。
新社会人の頃が一番お金を使っていた。
私が高卒で最初に就いた駅員の仕事は、月に170時間以上働いても、残業しなければ手取り13万円と生活保護受給者と大差ないレベルの薄給ブラックだった。10代で資金繰りについて相当考えていたため、金銭感覚はまともな会社にしか勤めた経験のない人よりも数段シビアだと自負している。
毎月13万円のうち3万円は実家に入れ、5万円を先に貯蓄。可処分所得は正味5万円だったが、駅での賄い飯代を含めた食費に2万円。個人年金保険(解約済)や大して使わなかった自動車の保険(車を処分して解約済)に2万円。携帯代に1万円弱と実質的に先取り貯蓄を差し引いた8万円の枠をフルで使っていた。
この頃に手を付けたのは携帯代で、キャリアの3Gプランと格安SIMやWiMAX2+の併用で使っている携帯はそのままで、使い勝手を大きく変えずに支払いを月額数千円安くしただけであった。
その後転機となったのは転職で、年収が100万円近い上昇が見込めるようになったことや、勤務地や勤務形態の関係が重なり、実家を出て都区内に在住することになったが、その頃には不人気(バランス釜)物件を選択して家賃を抑える、保険の解約、電気ガスの乗り換えなどに尽力したことで月の生活コストが家賃込み7.5万円と、都区内で生活しながら実家暮らしと同等の出費に抑えた結果となった。
その後も風呂なし物件+銭湯生活に切り替えるなど試行錯誤した結果、家賃込みで月6万円と、中央区にある下手な月極駐車場よりも低いコストで生活できるようになって今に至る。
根底にあるのは、無駄に支払っている費用を浮かして、投資に充てれば更に大きな利益が得られると言う、バフェットさんが理髪代の支払いを嫌がるのと同じような理屈である。
そして遂に理容代削減。
社会不適合者の毛色が強い私は、勝手に伸びてくる頭髪を整えるために、最低でも四半期ごとに理髪店にわざわざ出向いて、お金を支払って散髪しに行くのが苦痛であった。
無地のクルーネックやUネックシャツを着用する際、前後が逆で着ていても、自分では気付かない程度に他人からどう見られているか気にしない性格から、髪型にも特にこだわりがない。(間違えないように前後が分かりやすいVネックや、ボタンで留めるシャツしか所有しないと言うハード面での対策は一応している。)
そんな性分だからカットする際も特段希望がなく、基本的に担当者に一任していた。そのため極端な話、丸刈りにされても抵抗がなかったことから、疫病によってセルフカットの選択肢が入るようになっていた。
しかし、10分カット3回分の金額であるバリカンを買ってまで自分で頭髪を整えるのも面倒で、ここ2年間はバフェットさん同様に10ドル程度の理髪代を嫌々支払い続けていた形となるが、髪を乾かすのが面倒だと思った矢先に、ビックカメラの株主優待券が到着したことにより、優待券を使えば10分カット1回分の出費で元が取れると考え、重い腰を上げるに至った。
バリカンの選び方。
バリカンの選び方がよく分からなかったが、バッテリー内蔵でない交流式電源のタイプがコードが邪魔なものの安価でパワフルなことや、日本メーカー品よりも欧州メーカー品の方が想定されている利用者が毛深いため切れ味が良いこと。
アタッチメントが何個もあっても結局のところ全部は使わないため、アタッチメントひとつで長さが調整できる機構の製品の方が都合が良かったことや、メンテナンスフリーを鑑みてフィリップスの3000シリーズをチョイスした。
結果は大成功で、コンプライアンスのコの字もない、ローカル理髪店ではお金を払っているにも関わらず、カットし辛いから頻繁に切ってくれと愚痴をこぼされる程度に剛毛な髪質でも、アタッチメントに髪が詰まる程度にちゃんと刈り上げることができた。
耳周りと合わせ鏡での襟剃りが難所ではあったものの、持ち前の器用貧乏さが活かされ、出先で赤の他人に声を掛けられる程度の見てくれには仕上がっているらしい。おまけに自分の好きなタイミングで散髪できる。
バリカン本体やアタッチメントの耐久性が不明だが、2年保証が付いていることから、隔月ごとに1,200円支払っていた理髪代2年分の1.4万円強が丸々浮くと考えるなら、3千円強の製品を2年毎に買い換えても年間で5千円の費用削減である。
その5千円を外国株式のインデックスファンドにでも投じれば、年率6%程度はリターンが見込めることから、40年間運用した場合に元本20万円に対して2割の税金を納めても複利で58万円まで膨らむのだから馬鹿にできない。
そうやって同世代とは桁違いの金融資産を保有しながら、誰よりも質素倹約に努め、世間体を取り繕うよりもお金の心配をしないことに重きを置き、愚直に投資元本を積み上げる様は、となりの億万長者のようである。